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開講目前StartUp SchoolとVanguardにかける思いについての雑文 【増田(@maskin)真樹】


[読了時間:2分]

 ども、副編集チョの増田ッス。

 昨年10月、Vanguardという新プログラムを発表し、はや数か月。心待ちにして頂ける方をかなり待たせてしまいましたが、多くの方々の支援を受け、ようやく今月から「スタートアップSuperスクール」を筆頭に各種プログラムをスタートすることができました。

 いつもなら企画して1週間たらずで集客から開催までこなすのですが、今回のプログラムでは相当な時間を要しました。作業時間が必要だったというよりは、考えを整理する時間でした。つまり悩みまくっていたんです。なぜなら、メディアとして個人として参考にできると感じる前例がなかったため、本当にこのまま前進していけるのだろうか? という疑問があったからです。

 一方で、周りには多くの支援者が手を差しのべてくださいました。「Vanguardのコンセプトに共感する。いくらでも力を貸しますよ」といってくれるんです。しかも、素晴らしい経験と能力のある方ばかりで、身が震えました。

 「成功できるかどうかわからないけど、今しか僕にしかできないことをやろう」。そう思い、ここに第一歩を踏み出す決断をしました。ここでは “世界で戦えるスタートアップを育成する” と宣言してスタートしたVanguardと、スクール形式で具体的なスキルを身につけてもらう実験的企画であるスタートアップスクールにかける個人的な思いを述べさせて頂こうと思います。

なぜ、ITスタートアップなのか?




 これは2012年の年初挨拶スライドでも述べさせていただいたことなのですが、日本は国土が狭く資源も十分にありません。貿易に頼り、模倣や生産能力で戦うこともできましたが、今や自動車産業がブレインを残し(その発想すらどうかという意見も多いですね)、工場を世界に展開しているように、もはや人柱どうこうという発想は無くなりつつあると感じています。

 IT業界に生きる人達はそもそも “場所に依存しない” という世界観を理解しているはずなのに、それをしてこなかった。IT業界のバブル面ばかり模倣し、ITの本質に足を踏み込んでこなかった。考えてみて下さい、今出てきているアプリに世界で類をみないものってありますか?。資源がない以上、ソフトウェアやコンテンツ(発想や文化)で戦わなければならないわけで、しかも、それが世界で評価されている。そこをのばせる土壌そのものがITであり、ここで日本ならではの、世界で通用するものを出していかなくてドーすんだ、というのが本音です。

 現時点で発生しているITスタートアップブームは、いわずもがな世界共通のプラットフォーム(マーケットプレースを含め)の浸透です。その上で動くアプリなら、容易に世界展開が可能。そういった時代の流れを感じている人は多いらしく、最近は「日本の文化を世界に」という人が増えてきました。「マンガをネットで!」という人が多いのはそのせいです。日本にもスマートフォンブームが到来しつつあり、当然ながら資金も少しずつ流れ初めます。ITスタートアップの流れがより色濃くなるのが2012年のメインストリームです。

 「また次のチャンスがある」という人もいますが、現在の社会情勢、世界経済の状況をみると、いつそれが現実のものになるか僕には分かりません。30年近くこの業界を定点観測していますが、あらゆる意味で予兆を感じています。

スタートアップは全ての人に与えられたチャンス

 起業などに関する僕自身の経験や思考パターンは「生き残るスタートアップ、消えてしまうスタートアップについての長めの雑感」で書いた通り。いろいろと足を突っ込んでいますが、全てが独立系のスタートアップで、ソフトバンクによってYahoo!Japanが立ち上がったように、どこかの系列で大きくなっていった、ということがありません。

 そう、スタートアップとはいえ、いろいろなパターンがあります。企業の中で、新規事業をやるというのもスタートアップです。会社を作ったからエライという風潮が日本にもありますが、そんなことはないと思います(売却や上場すれば独立創業者は大きな収益を得られると思いますが)。むしろ、大企業など古くからある日本の企業文化の中で、新規事業を育てるというノウハウやリソースが育っていると言える部分があるのも事実です。広義のスタートアップとして考えると、単独で大きくなるというよりは、大きな会社との関係を深めて成長するというのが、一つのスタイルとして定着していると思います。

 もちろんゼロから立ち上げることの痛みや感動は、この現場でしか味わうことができません。両方経験できている人はベテランか、よっぽど幸運な人といえるでしょう。難しい選択かもしれませんが、ゼロから立ち上げてきた人の方が、会社が大きくなっても戦略に優れ、なんなくですが幸せそうな気がします。個人的雑感ですが、Steve Jobsしかり、どん底からとことんまで無茶をしてきた人は、人間として突き抜ける能力に優れているんだと思います。

若いうちはムチャをすべき、しかしそれは足場を固めるための手段

 だからといってムチャをすればいいのか、頭でっかちな人は悩んでいると思います。ちなみに僕自身の20代はバカそのものでした(だからそうしろという話ではないです)。向学にはげむ、といっても特定の分野だけ、一人で雑誌をつくったり、毎日海にこもったり、ソフトウェアを開発したり、海外で製品を日本にもってきたり。だから、仕事をしようと思った時に、小さい組織ながらもバカをやっているところを選びました。正直いってコンサバが嫌とかではなく、一人で多様な経験をするためにムチャなことをやりたかったんです。

 つまり、そうした理由は「経験」でした。もちろんどの選択肢を取っても経験は詰めるわけですが、経験をデザインすることはなかなかできません。当時の僕は「ITの素晴らしさをより多くの人に伝える」というミッションを持っていました。余計な遠回りはしたくなかった。だから、人生を180度転換しても、目標を達成するための経験を詰め込むルートを選択し、その土壌固めに励んだのです。(実際、それまでの人生をぶちこわし、そっちでは大変でした、、、)

世界を考え日本で行動すべき

 僕の個人的なスタンスは「考えて行動すべき」というものです。昔の就業経験で仕事のメンター的方から「どんな仕事でも0円でやってはいけない」ということを叩き込まれました。1円を稼ぐから30万を稼ぐというステップアップの壁はまた大変なことですが、まずは労働に対する対価を得るという概念レベルの壁を徹底することの大切さを実感しています。これが欠如していると、かならずどこかで労働と収益を得ることとのバランスが失われる瞬間がくるわけです。

 それと、“対価” についての自分なりのスタンスを固めておかないと、世界に出たとき困ることになります。北米シリコンバレー在住時、引越しの時に業者の手伝いをしようとしたんです「それ、手伝うよ」って(バイト経験があったので)。そしたらマッチョなお兄さん達に「俺たちの仕事を取るな」とものすごく叱責されました。当時その辺は就労率が高かったのですが、そもそも労働は彼等の資産だということを理解しました。

 それから、自分の生きるために必要なお金、会社員として会社に貢献すべきお金、自分の挙動すべてが収益にどう関係するかを全て記録したことがあります(ex.電話に出た120秒で切った、◯◯からだった、というレベルで)。すべてのビジネスプロセスを自分でやり、記録し、お金の流れを見るということを徹底していくと、いずれドライな感じは無くなります。ビジネスという世界において必要な概念はこういうことなんだろうなと体感していくことになります。

 例えば、広告を考える→広告代理店に見積してもらう→仮説を考える→自分でデザインする→印刷屋さんに依頼→配布→営業対応→効果実証といった具合の流れを、計画から制作まで全部自分でやってしまうわけです。すると「あー、あの広告キャッチコピーがこういう風に人を動かすのか」とか「この部分はかなり考えたけど、注目されないな」とか実際の集客をしながら、全体のことが見えてくるんです。

 で、これをITの世界に置き換えて考えることも当然可能なのですが、国内市場全体を見た時にプラットフォームが海外に抑えられているという弱点があるんです。このまま海外プラットフォーム上で国内展開をしても様々な障壁が発生するのでうまくいかない。一方で、ご存知の通り、独自のプラットフォームを展開しているソーシャルモバイルゲーム陣営は、世界を席巻するかの勢いで成長しているわけです。

 だから今からプラットフォームをやれ、とは言い切れないですが、ITの中心は北米なわけですから、前提として世界を考えていないと、国内だって不利な戦いを余儀なくされてしまうのです。(ちょっと考えをめぐらせれば、あー、そういえば、と気づくはず)

第一期校長先生 本荘氏と講師のみなさんについて

 もちろん世界で活躍する本荘さんのことは昔から知っていました。みなさんもイベント「BRIDGE」や最近だとザッポス本などでご存知のことでしょう。まさに世界視点で活躍されている、数少ない日本人です。個人的に羨望の眼差しでいたわけですが、数年前から、自分が新サービスのプレゼンであるとか、市場動向レポートのスピーチなどで壇上に上がる際、数回にわたりわざわざ声を掛けてきてくれていたんです。

 講演やピッチの際、挨拶にしてきてくれる方は多くていつも感謝しているのですが、本荘さんの指摘はあまりにも的を射ていてビックリするほどで強烈な印象を持っていました。日本にもこのようなスゴイ方がいるんだなと、TechWaveでもいつもいろいろなシーンで助けてもらっている状態だったので、是非、スクール第一期校長にとお願いしたわけです。本荘さんは何にでもOKする方ではないし、そもそもあの金額でやっていただけるわけもないので、本当に嬉しい気持で一杯だったりします。

 講師の方も最高の布陣でスタートするStartUp Super School。僕も自腹で受講する気ですが、こんな素晴らしいカリキュラムって他に無いと思うんですよね。

TechWave Vanguardでやりたいこと

 直近ではStartUpスクールに素晴らしい18人の生徒を集め、最高の内容で一期を終了すること。そして、日本でITスタートアップを支援する最高のメンターの方々と密な関係を構築すること。ITスタートアップとのミートアップを毎月定例で開催するなどし、今年は日本ITスタートアップ支援の分野で「貢献した」と思ってもらえるようにしたいと思っています。

 結局、僕が考えているのは、IT x 日本というかけ算に魔法をかけることなんだと思います。新しいことをITでやろうとしている人を支援し、さらにすごいものを産み出せるようにする。それは、結果として、次の世代で日本を生きる人達の引き継がれるのだと思います。多分、力を貸してくれる人も同じ思いだと思います。

 最終的にですが、世界を席巻する日本IT産業を作るとか、そういう覇権的な目標は立てていません。あくまで理想ですが、世界各国が元気一杯に有意義に交流できる世界が、ITによって実現すると僕は信じているんです。どうか、みなさん、一緒に前進していただければ、嬉しく思います。

【関連URL】
・VANGUARD「スタートアップスクール 2012年第一期」 募集開始
http://techwave.jp/archives/51719318.html
・TechWave VANGUARD – 世界で戦えるスタートアップ育成プログラム【増田(@maskin)真樹】
http://techwave.jp/archives/51707667.html

蛇足:僕はこう思ったッス
自分つっこみ。深夜1時に公開する完全に年末モードの雑文ですが、日本No1のITスタートアップ支援コミュニティにしたいというのは本当です。個人レベルでの活動なので資金もその他のリソースも不足していますが、一生一大のチャレンジとして着実に進めていきたいと思っています。

著者プロフィール:TechWave副編集長・イマジニア 増田(maskin)真樹
 8才でプログラマ、12才で起業。18才でライター。日米のIT/ネットをあれこれ見つつ、生み伝えることを生業として今ここに。codeが書けるジャーナリスト。1990年代は週刊アスキーなど多数のIT関連媒体で雑誌ライターとして疾走後、シリコンバレーでベンチャー起業に参画。帰国後、ネットエイジで複数のスタートアップに関与。フリーで関心空間、富裕層SNSのnileport、@cosme、ニフティやソニーなどのブログ&SNS国内展開に広く関与。坂本龍一氏などが参加するプロジェクトのブログ立ち上げなどを主導。“IT業界なら場所に依存せず成功すべき”という信念で全国・世界で活動中。イベントオーガナイザー・DJ・小説家。 大手携帯キャリア公式ニュースポータルサイト編集デスク。スタートアップ支援に注力、メール等お待ちしております!
メール maskin(at)metamix.com | 書籍情報・Twitter @maskin・詳しいプロフィールはこちら


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