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ITはアーリーアダプターのものにあらず インド発テクノロジーが世界を目指す

[読了時間:2分]
 インド出張3日目。これまで20人以上のIT業界関係者と話してきて、見えてきたことがある。いずれきっちりとした形で発表したいと思うが、とりあえず速報的に今、感じていることを書きたい。

 まずインドのIT業界は米国のIT業界とまったく別のところを目指している、ということだ。

 誤解を恐れずに断言すれば米国のIT業界は、技術の最先端を目指している。アーリーアダプターが好みそうな技術の開発競争を続けている。そこの領域の挑戦を続けていれば、マスはいずれアーリーアダプターに追いついてくる、という考え方だ。AppleにしろGoogleにしろ、アーリーアダプター向け最先端サービスで競っている。人口ピラミッドの一番上の部分で競っているわけだ。

 インドのIT業界は違う。人口ビラミッドの一番上以外のところを狙っている。

 どちらのほうが社会的意義が大きいか。

 ケータイにおサイフケータイ機能を搭載することで先進国のユーザーがポケットから小銭を集めて数える必要がなくなることと、銀行口座を開設できないような貧しい人が田舎の両親にモバイル送金で仕送りできるようになることの、どちらのほうが社会的意義が大きいのか、という問いだ。

 もちろん後者である。インドへ来て再認識したのは、情報技術は、先進国のアーリーアダプター向けにガジェットというおもちゃを作るためにあるのではなく、途上国の生活や経済レベルの向上にこそ使われるべきものだ、ということだ。

 社会的意義だけではない、ビジネスとしてみても大きな成功の可能性を秘めている。

 なぜなら今後の経済成長を受けて途上国の貧困層は中間層へと移行していくからだ。最初は社会的意義を重視して作ったソーシャルなコミュニケーションや、コマース、エンタテインメントのインフラは、中間層の拡大につれ莫大な市場へと成長していくのは間違いない。

 そしてそれはインドだけの話ではない。インドで開発された技術やサービスは、まずは周辺のバングラデシュ、スリランカへと横展開し、さらにはアフリカへと広がっている。

 これまで話をしたインドの起業家たちは、まずはインド国内での展開を考えているものの、ほとんど全員が同じビジネスモデルを周辺諸国やアフリカで展開することを考えている。ある起業家は「周辺諸国もアフリカも、可処分所得の額や消費者動向など市場のダイナミズムがインドとほとんど同じ。インドで成功すれば、必ず一部アジアやアフリカで成功するはず」と語ってくれた。

 既にアフリカに展開しているインド企業もある。モバイルペイメントの企業は、フィーチャーフォンを使って送金する仕組みをアフリカの事業者に販売している。このアフリカの事業者がカメルーンで事業を始めたところ、1年間で1200店舗が採用し、登録ユーザー数は13万近くになり、1日に500件の送金が行われるようになったという。

 途上国の生活の質を変えるための情報技術を、インドが作ろうとしているわけだ。

 インターネット普及前にある程度便利な仕組みを作って普及させた先進国からは、最新の技術を使って途上国のニーズにあったアプリケーションは出てこないだろう。クレジットカードが早くから普及している国からは、銀行の支店がない過疎地域のためのモバイル決済・金融の仕組みが生まれてきそうもない、ということだ。

 インド滞在はあと4日。ちょっと疲れてきた・・・。

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