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PS Vitaのような高性能ゲーム機並のグラフィックを誇るソーシャルゲーム「Highlander Quest (ハイランダークエスト)」(以下ハイクエ) が2012年8月23日に公開され注目を浴びている。
開発したのは長年家庭用ゲーム業界で多数のタイトルを手がけた高崎俊行氏率いるスタートアップ企業「ダイノエンターテインメント」。CEO 高崎俊行氏は「いずれ来るであろうスマホゲームのリッチ化という必然に先行して挑戦した」とNHN Japanと共にリリースした。
ゲームはスマホで主流のカジュアルスタイル。難しい操作も必要なく、隙間時間を使って気軽に遊べるが、バトルシーンは上の画面のようにスマホとは思えない迫力で、冒険の中で入手したアイテムを自由に着飾ったキャラクターが縦横無尽に画面内を飛び駆う。
アプリは無料で、ゲーム内で使用できる回復系アイテムをiTunes Store経由で購入できる仕組み。リリース後は、見るみるユーザーを増し、8月28日の時点でゲーム無料総合1位、執筆時点で無料ダウンロード総合で6位を獲得している。
注目すべきはコメントが現時点1600以上あり、ほとんどが歓迎する内容になっており評価も上々。iTunes App Storeの売上トップでも上位26位にまで付けるなど利用実態の数字にも反映されている点だ。
コンスマーゲーム業界畑で長年活動してきた高崎氏は「スマホゲームとして学ぶことは多いが、やれることはやった。満足できる仕上がりになった」と興奮気味に話す。
歓迎される「リッチソーシャル」、無料ゲーム総合1位を獲得
スマホゲームといえば、2011年はウェブアプリが主流だったが、ハイクエはネイティブアプリでよりリッチな表現力を追求するためiPhone4専用アプリとした。
未だに業界は「HTML5(ウェブ)か、ネイティブか」を結論を見い出せないままの状態にいるが、高崎氏は「運営しやすさ、コントロールしやすさという点でもウェブアプリは魅力的でしたが、長くコンスーマーゲーム業界に携わってきて、ゲームには好むと好まざると関わらず、デジタルエンタメの主要素の一つが「技術」である以上必ずリッチ化が起こると考えています。だったら、先にそれやろうと思ったのがハイクエ開発のきっかけです」と語る。
その言葉の通り、進め方こそカジュアルゲームだが、いざバトルシーンが始まるとキャラクターの動きや武器の特殊エフェクトに目を見はることになる。「エフェクトはゲーム業界から付き合いのある専門家が担当しています。武器や防具などアイテムは1000以上と、プロダクトアウト型 (ウェブのように一旦出して修正していくとは反対で、出す時点で一定の完成度を持たせること) のコンスマーゲーム業界の地力を込めていると言えます」(高崎氏)。
家庭用ゲーム業界のノウハウはスマホで活かせるか?
家庭用ゲームでの経験は「ネイティブーリッチ」というスタイルを取ることで活かせるのだろうか? 筆者に問いに高崎氏は「興味深い切り口ですね」と口を開く。
「ゲーム設計面、主にプラニングや仕様面では、スポンと過去を捨て去るくらいの覚悟が必要ではないかと思います。一報で、技術面、主にプログラミングの領域については、この業界での経験は優位性があると思います。
もちろん学ばなきゃならないことはいくらでもあるんですが、家庭用メーカーというのは、定められたスペックの中で最大の出力を出す、ということについては散々やってきたわけですから、その辺の頭の使い方には一日の長があるかと思います。
今回、我々は「リッチ」というキーワードをコンセプトの一つとしてますが、それは主に映像表現に向けたもので、遊びの設計面については、やはりモバイル特性や、短いなりにもソーシャルゲームの歴史に対して学ばないといけないと思うんですよね。自腹切ってガンガン遊びましたよ。
スマホのネイティブアプリのゲームをやって、すごく思ったのは、家庭用とも、PCオンラインとも、ガラケーとも違うという点です」。
「もう後はない」渾身の作品づくり
実はダイノエンターテインメントは、昨年の4月に第一段アプリ「Treasure Square」を北米でリリースしている。4 Square連携型のソーシャルゲームだったが、なんと数十日で方針転換。ハイクエの開発にシフトしてしまったのだ。
「“ゲームノウハウを何とか日常生活に活かしたい” という最終的な狙いがあり、ジオという方策で「Treasure Square」をリリースしました。日本でサービスインしなかったのでは、マネタイズが遅過ぎると判断したからです。期待もされてましたし、やりたいのはやまやまでしたが、創業早々だった当社の体力では、安定フェーズにもっていけるだけの体力がないとの判断したんです。
だから、我々は今回、会社的に「当てる」しかなかった。将来を考え会社へのつなぎ投資は受けず、「じゃ、次のプロジェクト頑張ろう」とか、ない状態。それは至上命題だったんです。
なので、遊びの面に関しては、極力新しいことは抑えるようにしました。ネイティブ、ソーシャル、リッチ、という取り組みだけは新しいので、他は既存の当たってる仕組みを研究して使うという路線に乗ったのです。この辺のアプローチの仕方は、非ゲーム系出身の会社さんのアプローチと大きく異る点だと思います」(高崎氏)。
ライバルは家庭用ゲーム業界
高崎氏の作品はスマホゲーム業界に一石を投じ、家庭用ゲーム業界は「リッチ」で後に続くのだろうか。しかし、家庭用ゲーム業界の会社では未だ「ソーシャル派」と「いやいや既存の得意分野をテコ入れだ派」に分かれているのが現状。「ミリオンアーサー」をヒットさせたSQUARE ENIX などうまく波に乗ろうとしているところがあるものの、「ドラコレ (GREE)」を中心に大利益を出しているコナミのように、ソーシャルアプリ向けに思い切って会社の舵を取っている企業はごく一部。
「リッチソーシャルの分野では満足できる仕上がりになりました。やれることはやれたと思います。遊び方のカジュアルさは大事だと思いますやはりリビングに腰すえるゲームじゃないので。でも、それを阻害しない範囲で、頑張れることはあるぞと。
それがライバルを抑える参入障壁とまでなるかというとわかりません。やっぱり家庭用メーカーは地力あるんで、技術的には簡単に越えてくると思います。
会社や業界ががらりと変わるかどうかは不明です。既存のスマホゲーム企業が「買う」っていう手段ありますし、どうなるか全く見えないです」(高崎氏)。
【関連URL】
・Highlander Quest (ハイランダークエスト) | App Store
http://itunes.apple.com/jp/app/highlander-quest/id521645215?mt=8
・Dyno Entertainment
http://www.dyno.co.jp/
・日常エリアを冒険フィールドにする本格スマホゲーム「TREASURE SQUARE」ついに見参【増田(@maskin)真樹】
http://techwave.jp/archives/51669270.html
ゲームが進むに連れ、そのゲームバランスと演出の凄さをジワジワ実感する。この辺の完成度はさすがのクオリティ。エフェクトも多様で、カードとか釣りとかパズルとか簡単なものがスマホゲームの主流だと思ってきた僕にとって、この「リッチーソーシャル/カジュアル」の感覚は新鮮だった。ゲーム作りのプロによる、本気のスマホソーシャルPRGを堪能して頂きたいと思う。
8才でプログラマ、12才で起業。18才でライター。道具としてIT/ネットを追求し、日米のIT/ネットをあれこれ見つつ、生み伝えることを生業として今ここに。1990年代はソフト/ハード開発&マーケティング→週刊アスキーなど多数のIT関連媒体で雑誌ライターとして疾走後、シリコンバレーで証券情報サービスベンチャーの起業に参画。帰国後、ネットエイジ等で複数のスタートアップに関与。関心空間、@cosme、ニフティやソニーなどのブログ&SNS国内展開に広く関与。坂本龍一氏などが参加するプロジェクトのブログ立ち上げなどを主導。 Rick Smolanの24hours in CyberSpaceの数少ない日本人被写体として現MITメディアラボ所長 伊藤穣一氏らと出演。TechWaveの活動タグは創出・スタートアップ・音楽・表現・ミディアム・子ども・日本・世界・共感。