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「高校2年生のころ、こんなことを考えた時期があったんです。自分はどうして生きているんだろう、死んだらどうなるんだろう、と」。
25歳と一ヶ月という市場最年少で株式新規上場を果たしたリブセンス 社長 村上太一氏は、自分という存在の意義に悶々とする十代後半、「自分はどうして生きているんだろう」という自問自答をながら過ごしてきた。
「死ぬのは怖いし、生き続けるしかない」。
自分は特別な存在ではない。だから、自分には何ができて、なぜそれをやるのかを考えたい。相手を騙してでも、自分の利益につながることをすような生き方はしたくはないと本書の中で語る。
ベンチャーキャピタルからの投資を断り、システムは内製
世の中にあるあらゆる既存の仕組みに関心を持っていた村上氏は、アルバイトをしていたお店の求人問題を解決したいと思い、大学入学時には事業計画書を書いていたという。
そのような流れでリブセンスの当初の事業としてスタートしたのは「アルバイト情報」サイト。無料で広告を掲載でき、問い合わせがあった時点で手数料を徴収する仕組み。ほどなくして、さらに採用者に「祝い金」を提供するモデルを確立して、リブセンスならではの強みとして事業を展開していく。
大学生活を続けながらのサービス開始直後、村上氏は営業から経理まで手がけ、システム開発、さらにはSEOについても内製。「一度も外注したことがありません」という驚きの体制で無駄なコストは使わず、ベンチャーキャピタルからの投資も受けず、ただハードに働くことで売上を立て上場に至っている。
2006年度の売上は450万円。本事業の売上は200万円で、250万円は時前SEOの成果を活かしたコンサルティングでの売上だ。「1000万円の売上を超えることすら想像できず、「企業同士の争いに勝には、ヒト・モノ・カネ」だと言われても何も言い返えせなかった」と村上氏は本書の中で吐露している。
ところが、2007年2月から急上昇し9月には売上が約10倍。2008年3月期には7206万円で経常利益3108万円、第三期は売上高3億2120万円、経常利益1億5276万円と成長し、2011年12月7日、リブセンスは東証マザーズへ上場する。
公開価格は990円、公開株式数は75万3000株、売買が成立したのは後場で、株価は1800円、一時ストップ高の2200円まで値を付けた。公開初日の売買代金は1位。
現在の主要事業は「ジョブセンスリンク」「DOOR賃貸」「ジョブセンス派遣」「Motors-net」で、いずれも「祝い金」モデルが組み込まれている。
偶発的な急上昇のように見えるが、「上場は、会社を大きくするために当然のこと」と、村上氏は第二期から上場のための情報収集を開始してした。
だからリブセンスは、個人プロジェクトではなく、いきなり300万円という資本で会社として設立。村上氏はアルバイトなどで貯めた50万円と、親から借りた150万円。仲間達から100万円という内訳。
村上氏の「生きる意味」
注目したいのは大学生である村上氏に150万円を差し出した両親の存在だ。
勉強を強要しない。夢中になることを積極的にやらせようとする。
時には株式取引きを体験させるためにミニ株投資をまかせたり (自分の想像を超えた動きをする。世の中で誰が喜んでくれるのかまるで実感が得られなかったため、村上氏の心を促えることはなった)、母親については起業に関係する新聞記事をクリッピングして村上氏に提供するまでしていた。
「会社を作るときも、無理だからやめろとは、誰にも言われませんでした」。
両親や周囲の環境は、本能の起業家としての村上氏を萎えさせることはなかったのだ。
だからこそ、そんな両親に嘘をついた時のエピソードが興味深い。
中学校の時にケンカに巻き込まれて、両親が学校に呼び出されることがあった際、村上氏は「何も悪くない」をウソをついたのだが、村上氏の両親は「わかった、信じるよ」と言い、とても苦しくなり「もう二度と嘘はつかない」と思ったのだという。
そんな風に村上氏は 世の中に蔓延する “理不尽” に対峙する気概がある。
例えば高校生の時の部活で「先輩に挨拶しないと、また走らされる」といった体育会の不条理なルールに対し、村上氏は「ルールがすでに決まっているんですから、それに反発しても仕方がありません」と、しつつも、村上氏が部長になった際はこの理不尽な慣行を廃止するといった行動も取っている。
また、2日間で1万5000人ほどの来場者が訪れる文化祭で、100人規模のスタッフを動かした際のエピソードもおもしろい。
いうことを聞かない人との信頼関係や、「問題がある」とできないことばかり言う人の “できない” を 村上氏が自ら解決してしまうのだという。
理不尽なことが嫌いな村上氏は、「仕事だけを100%愚直にやり続けている企業は基本的にうまくいくと思うんです。そうじゃないところに目が向き始めると、会社はおかしくなってしまう」と語る。リブセンスでは年上の部下が多い中、社員は「さん」付けで呼ぶなど、余計な慣行を作らない努力もおこたらない。
「「自分は特別だと」暗示をかけ奮い立たせて無理をするのではなく、自分にできるこをとやりたいことを見据えて高い目標を立てていけばいいと思う。後から知りましたがアップル創業者 故 スティーブ・ジョブズ氏の「やりたいことを見つけなさい、そのためのヒントはあなたが歩んできた道を堀り起こせば絶対にある」という言葉に共感します」(村上氏)。
村上氏は言う「お金のために人は動かない、それはもはや大きな流れです」。周囲の関係を持つ人のため、自分のできることを朴訥(ぼくとつ)にやり続ける。それが、若い世代の起業家のモチベーションになっているのかもしれない。
【関連URL】
・リブセンス<生きる意味> 25歳の最年少上場社長 村上太一の人を幸せにする仕事 | Amazon.co.jp
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4822249190
・株式会社リブセンス – Livesense Inc.
http://www.livesense.co.jp/
村上氏が読んだ本ということで英治出版の「 いつか、すべての子供たちに―」が上げられていた。米の優秀な学生が2年間、所得が低く、環境が劣悪な地域の小学校の指導に当たり成果が出ているプログラムのことが書かれた本だ。やりがいを求める、のとは違うと思うのだが、お金稼ぎだけとは明らかに違う価値観が世界市場に横たわっているのは間違いないと思う。
この本ではしきりに「普通の」という言葉を使っている。定義があいまいでわかりにくくなっているが、リブセンスのいいところは、カリスマでもない、タレントでもない、大企業出身の権力者でもない、朴訥に仕事をし上場に至る道筋を提示できる新しい起業家像となったところだと思う。
8才でプログラマ、12才で起業。18才でライター。道具としてIT/ネットを追求し、日米のIT/ネットをあれこれ見つつ、生み伝えることを生業として今ここに。1990年代はソフト/ハード開発&マーケティング→週刊アスキーなど多数のIT関連媒体で雑誌ライターとして疾走後、シリコンバレーで証券情報サービスベンチャーの起業に参画。帰国後、ネットエイジ等で複数のスタートアップに関与。関心空間、@cosme、ニフティやソニーなどのブログ&SNS国内展開に広く関与。坂本龍一氏などが参加するプロジェクトのブログ立ち上げなどを主導。 Rick Smolanの24hours in CyberSpaceの数少ない日本人被写体として現MITメディアラボ所長 伊藤穣一氏らと出演。TechWaveの活動タグは創出・スタートアップ・音楽・表現・ミディアム・子ども・日本・世界・共感。