好評の「ad:tech tokyoアドバイザリーボードメンバー」インタビュー特集ですが、今度は舞台が変わって関西地域3拠点を舞台に繰り広げられる「ad:tech kansai」のボードメンバーの方々のインタビューを連載形式でお伝えします(特集一覧はこちら)。
メディア運営からコンサルティングまで幅広い事業を手掛ける株式会社インフォバーンの取締役 執行役員 京都支社長 登友一氏。関西と東京を行き来し参画プロジェクトも活動エリアも幅広い彼だからこそ見える関西の企業風土や現在のデジタルマーケティングの問題意識について語っていただきました。
参加することで「新たな目線」を獲得できる ad:tech
−「関西の企業ならでは」の地域性とは何でしょうか?
共通しているのはものづくり企業が多く、サービス業界以上にグローバライズのタイミングが早かったことです。そして発祥の地である関西に誇りを感じているから、東京に本社を一本化せず、この地に本拠地を構え続けている企業が多い。「東京に出るぞ!中央進出だ!」と考えるのでなく、輸出のために海外拠点を作る、海外工場を新設するといったことと同じように東京に拠点を作るスタンスです。
京都を筆頭に歴史の長い企業は数多いですが、歴史を持っている反面、反骨精神が強かったり、挑戦的であったりする企業が多いのも特徴。生き残り続けるためには同じことをしていても淘汰されてしまうということを痛いほど知っていらっしゃるから、歴史の流れと並行しながらも新しいことを恐れない勇気があるのが魅力ですね。
−それは関西ならではの企業性かもしれませんね
それだけ土地に誇りがあるので、京都、大阪、神戸の三都市は経済圏としてかなりしっかりと独立しています。それぞれを移動するのには電車で1時間もかかかりませんが、精神的・経済的にはかなり距離があるので大阪でad:tech関西をやっていても、来られなかった、または行かなかったという神戸や京都の人が多くいたかもしれません。今回は三都市開催となりますから「会社の近所で開催される日だけでも」とより多くの人に来てもらうきっかけになるのではと期待しています。
−そういった初参加の方も含め、ad:techにいらっしゃる方に対して伝えたい「参加の心構え」のアドバイスはありますか?
とにかく恥ずかしがらずに輪に加わってほしいですね。事務局やボードメンバーが開催前からad:techというコミュニティを盛り上げていきますので、ぜひそこに参加していただきたいです。このインタビューもその一つでしょうし、SNSで「ad:tech行くよ!」「登壇するよ」と発信している方もいます。会場に来る人や会社、触れ合うことができるサービスを事前にイメージしてから行くのが大切だと思います。ad:techはブース中心の一般的な見本市ではないため、「ブースを回ろう」とだけ思っていると、物足りなくなってしまいます。自分がいかに関わっていくか、が重要です。
さらに欲を言えば三都市とも参加してそれぞれの街の風景もぜひ比較してほしいですね。ad:techに参加して、マーケティングや広告について学ぼうというスイッチを入れて三都市を移動していくと、新しい目線が獲得できますよ。
透明性を求められる「時代の鍵」となるのはブランドメッセージ
−ad:techでは様々なテーマが語られる予定ですが、井登さんご自身が今一番気になっているデジタルマーケティングに関するトピックは何ですか
様々ありますが、わけても重要だと思っているのは広告の透明性の問題です。マーケティングの世界はどうしても「デジタル」と頭についただけで手法論ばかりになってしまいますが、企業とお客様がコミュケーションをとるための手段であるという根本を忘れてはいけません。
言ってしまえば「都合のいいことだけを伝えるのはもう無理」ということです。お客様である生活者が情報を持っているし、メディアも分散しています。自分たちの都合を押し付けるのではなく、お客様が今持っているニーズだけでなく、今は明確なことばで言えない「潜在的だけど本質的なニーズ」や「これからのニーズ」を理解し、解釈したうえで、先回りした戦略をメッセージに込めると透明性が生まれてきます。ブランドストーリーが重要な鍵を握っているんですね。
—企業と生活者の関係を結ぶストーリーではどんな事が重要でしょうか?
例えばユニリーバのブランド、Doveは「自分が思っている自分と他人から見た自分の違い」を解きほぐす動画( https://www.youtube.com/watch?v=E8-XKIY5gRo )を公開しました。生活者が心の奥では感じていたことをブランドが代弁したことで共感を生んだ仕掛けです。テレビ一強時代ではなくなったからこそ、こういった小さな共感のタッチポイントをいかに積み重ねていくかが分かれ目になってきます。努力さえすれば情報のタッチポイントが増える今はチャンスである一方、手間を惜しまない企業と惜しんでしまう企業に大きな差が生まれてしまう時代でもあるのです。
−それはBtoB企業にも言えることでしょうか
BtoB企業はBtoC企業以上に伝え方を考える必要があります。BtoBであっても人と人とがビジネスをしているのですから動かすべきは人です。クライアント、もしくは見込み顧客の担当者個人としてのニーズの上に、所属している企業のニーズを読み解いた上でメッセージを構築する必要があります。両方を理解しストーリーを発信していくのは難易度の高いことですが、その分の価値も高い。だからこそBtoB企業が多く参加する今回のad:tech kyotoには注目していただきたいですね。
−ありがとうございました。(了)
井登友一
株式会社インフォバーン
取締役 執行役員 京都支社長
デザインコンサルティングファームにて、マーケティングコンサルティング、チームビルディングのためのコーチングに従事後、リサーチ&エクスペリエンスデザインの専門部署立ち上げに参画。 デザインリサーチ手法を主軸アプローチとする定性的なユーザーインサイトに基づく「ユーザー中心発想」によるマーケティングコミュニケーション設計に約10年間従事し、数多くのペルソナ開発プロジェクトを担当。 (主にインタラクティブ・デジタル領域の事案をリード) その後株式会社インフォバーンに入社。 2011年6月1日に西日本における戦略的拠点として京都支社を開設し責任者を務める。 現在はクライアント企業へのUX戦略設計と実施運用に関する支援業務を中心としてプロジェクトのリードを担当。 日本プロジェクトマネジメント協会(PMAJ)認定 プロジェクトマネジメントスペシャリスト(PMS) HCD-Net(人間中心設計推進機構)評議委員 (認定)人間中心設計スペシャリスト ServiceDesignSprints® 認定 スプリント・マスター 京都女子大学非常勤講師
ad:tech kansaiの詳細はこちらから
アドテック京都
日程:2017年7月18日(火)
場所:みやこメッセ
参加者数:1,800名+アドテック大阪
日程:2017年7月19日(水)
場所:堂島リバーフォーラム
参加者数:200名+アドテック神戶
日程:2017年7月20日(木)
場所:KIITO(デザイン・クリエイティブセンター神戶)
参加者数:1,000名+