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「人と人のあいだに癒やしはある!」。小学生5年生から中学校2年生までの不登校。進学しても友だちづきあいが苦手なオリィこと吉藤健太朗氏は深い孤独感と付き合い続けた末、その「孤独」を解消することに、私の残りの人生すべてを使おう、と誓ったのです。
その近いから生まれたのがコミュニケーションロボット「OriHime(オリヒメ)」です。まるでアニメの主人公のように黒い白衣を身につけるオリィ氏が対話するのは厳密にいうとロボットではありません。彼の秘書であり仲間である番田雄太氏の分身であり、心強い相棒として常に行動を共にする存在なのです。
人をつなぐ折り紙
オリィ氏が「どこにも居場所のない孤独を思い知り、絶望しかけた」にも関わらず、今のように多くの人に支援を受けながらプロジェクトを成長させられるのは「人との出会いがあったから」だと彼の近著「「孤独」は消せる。」で述べています。人生は出会いによってつくられるとまで言い切る彼は、不登校となり友達づきあいもうまくこなせない苦境を「作る」ということで乗り切りました。
もともと工作などで何かを生み出すことが得意だった彼は、祖母に教わった折り紙をきっかけに、人に喜んでもらえたり、うれしいといってもらえることを知ったといいます。折り紙が人とのコミュニケーションのきっかけとなり、ゆくゆくは彼はオリガミ王子改め「オリィ」と呼ばれるようになります。
わくわくを第一に
中学校1年、引きこもり中のオリィ氏は、母親が応募した「虫型ロボット競技大会」で優勝します。独学でプログラミングを学び、ロボットの世界に入り、この世界で「わくわくした体験」を胸に抱え工業高校に進学。高校一年で、ジャイロで水平制御をする電脳車いす「Wander」を開発し「JSEC(Japan Science & Engineering Challenge)」という高校生の自由研究コンテストで優勝。それをきっかけに世界75の国と地域から参加する歴史あるコンテスト「インテルISEF」に出場。チーム研究部門の3位に入賞する快挙を成し遂げます。
この時のオリィ氏は、世界の大会で入賞した喜びに誇りを感じながら、この研究を死ぬまでやるか?という問いに「これじゃない」と疑問を感じていたといいます。「なんのために生きているのだろう」という自問自答をするうちに、世の中は完璧にできているのではなく、社会には思ったよりも不自由に生きている人がいるという気づきを得たといいます。
体の不自由だからと外に出なくなり、人との交流をしなくなる。孤独は焦燥感を生み、無力感を生み、劣等感を有無。孤独は悪循環となる。だからその「孤独」を無くすこと。そうすることで喜ぶ人が出てくること。それがオリィ氏の気力となり、創造性の源泉となる「わくわく」感となるといいます。
生きることは、人の役に立つこと
彼がつくりたいのはロボットではありません。その人がそこに存在しているという価値作りです。「OriHime」にあったことがない人は、どういうことかわからないかもしれません。しかし、筆者が初めて秘書の番田雄太 氏に初めて会った時、本人がそこにいるようにしか思えませんでした(以下、実際の写真)
番田氏は4才の頃に交通事故に遭い、首から下が動かせず呼吸器をつけており、これまで20年以上ベッドの上に寝たきりの状態です。住んでいるのは岩手県盛岡市で。関東圏などに出られる回数も限定されており、まだ一度もリアルであったことがありません
ただ、彼はあごを使い文字を入力し「OriHime」を操作することができます。定期的にFacebookなどで交流しているため、遠い存在のように感じることもありません。
そうした存在を感じるのは「OriHime」の機能や動き、デザインが持つ可能性の一面かもしれませんが、少なくとも「OriHime」がなければ会うことはできませんでしたでしょうし、こうして存在を感じ続けることもなかったように思います。
筆者の子供達にも、オリィ氏や番田氏がテレビなどに出演する度に「ほらほら、お兄ちゃん達出てるよ!」と盛り上がるまでになりました。近所に住んでいても疎遠な人もいれば、会ったこともないのにとても近い存在として感じることができる。それが彼らの生み出した価値なのでしょう。
【関連URL】
・「孤独」は消せる。 単行本(ソフトカバー) 吉藤健太朗 | Amazon.co.jp
https://www.amazon.co.jp/gp/product/476313566X
・オリィ研究所
http://orylab.com