人材ビジネスを行うウィルグループ(東証:6089)は、2014年より優れたベンチャーを表彰するビジネスコンテスト「BUSINESS CONTEST YOAKE(ビジネスコンテスト ヨアケ)」を開催している。
2014年のグランプリは、「見えない」を「見える」に変える、スポーツ用ウェアラブル端末の開発を行うUP PERFORMA (アップパフォーマ)。準グランプリは、家の軒先やパーキングを貸し出すシェアリングサービスを運営する軒先株式会社。2015年のグランプリは、海外で働く意思を持っていて求職・転職活動を行っている新興国の求職者のデータベースを提供するHRDatabankで、受賞企業のジャンルはさまざまだ。
ウィルグループは、2015年6月1日にコーポレートベンチャーキャピタル「ウィルグループファンド投資事業有限責任組合(以下:ウィルグループインキュベートファンド)」を設立している他、CVC連動型アクセラレータープログラム『HINODE(ヒノデ)』などの運営も行っている。ビジネスコンテストも有望な投資先開拓の一環であろうか。
BUSINESS CONTEST YOAKEも、グランプリを勝ち取った企業は賞金100万円を得るだけでなく、ウィルグループインキュベートファンドからの出資やJV設立、ウィルグループの販売力を生かした事業提携等の副賞が付与されることがあるようだ。
HINODEでは、スマホの音声認識機能を活用した、声に出す広告「アイコトバ」の株式会社アイコトバ、BUSINESS CONTEST YOAKE2015のグランプリでもある株式会社 HRDattabank、1杯飲むだけで理想の栄養を摂れる飲料『COMP』の株式会社コンプ、インターンシップに特化したIndeed型総合サイトの株式会社futurelabo、子供向けIT・プログラミング教育プラットフォーム「プロキッズ」の株式会社プロキッズ、ペットの健康と幸せを支援する「オンライン動物病院」サービスの株式会社ペットボードヘルスケアが採択されている。
2016年の審査委員は、株式会社ウィルグループ 代表取締役会長 兼 CEO 池田 良介氏、株式会社54 代表取締役社長 山口 豪志氏、株式会社サイバーエージェント・ベンチャーズ シニア・ヴァイス・プレジデント 竹川 祐也 氏、新日本有限責任監査法人 企業成長サポートセンター シニアパートナー 公認会計士 藤原 選氏、株式会社Vilingベンチャーパートナーズ 代表取締役社長 栗島 祐介氏、とのこと。
企業の行うビジネスコンテストでは、東急電鉄が行う「東急アクセラレートプログラム2016」などもあるだろう。沿線の生活利便性を高めるサービスの創出、沿線におけるベンチャー企業育成を目的に行っているビジネスコンテストだ。最終審査を通過した企業は東急電鉄の沿線においてテストマーケティングを行えるほか、東急電鉄との業務提携が検討される。
また特徴的なコンテストを開催している団体もある。品川区が設立したSHIP(品川産業支援交流施設)の指定管理業務も行う一般財団法人品川ビジネスクラブは、クラウドファンディング・プラットホームである「CAMPFIRE」とコラボレーションし、受賞者の資金調達のトータルサポートを行う「ビジネス創造コンテスト」を行っている。受賞者には管理するSHIPの利用券も付与されるようだ。
地方関連では、世界トップクラスで人口減少が進む秋田県(鹿角市・湯沢市)で起業する挑戦者を応援する「ドチャベン・アクセラレーター2016」も目を惹く。審査委員には株式会社ガイアックス代表執行役社長の上田 祐司氏や、パタゴニア日本支社長の辻井 隆行氏の名前もある。応募資格は県外在住者、または、応募時点で秋田県内に居住して36ヶ月未満の方(平成25年10月1日以降に秋田に転入された方)とのこと。
中小企業庁委託事業として運営されている「ミラサポ」を見ると、年間では170ものビジネスコンテストが開催されているようだ。
TechCrunch Japanが開催する国内最大級のスタートアップの祭典「TechCrunch Tokyo 2016」でも今年ローンチした、もしくはローンチ予定のプロダクトをプレゼンで競い合い、最も優秀なスタートアップを決めるコンテストがある。2015年の優勝者である、社会保険や雇用保険などの労務手続きを自動化する「SmartHR」を運営するKUFUは、飛ぶ鳥を落とす勢いで成長しており、8月には約5億円の資金調達にも成功している他、導入社数は9月時点で2000社を突破しているようだ。
ビジネスコンテストを足がかりに、自社の大きな成長につなげる企業は増えている。起業家にはプレゼン能力も大切なスキルとなりそうだ。
起業に踏み切れない方にもビジネスコンテストはチャンスであろう。このコンテストをきっかけに、チーム形成が進むかもしれない。また飛躍の機会にもなるだろう。審査員の方々からのアドバイスは、普段事業を行っている視点とは別の気づきを与えてくれるかもしれない。受賞につながれば、メディアからも取り上げられ、資金的にも多少の支援があり、顧客獲得につながるかもしれない。全国で170ものビジネスコンテストが開催されていると知り、驚いた。自身の状況に応じてコンテストを出し分けることも選択の一つだろう。