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サイバーエージェント成長の柱として躍進を続ける横断組織「カップリングユニオン」から2017年8月28日、5番目となるマッチングアプリ「Torte(トルテ)」がリリースされました。最大の特徴は「女性ファースト」で、すべてを女性が決断するマッチングアプリなんです。
これまでカップリングユニオンからは4本のサービスがリリースされており、その主力マッチングアプリ「タップル誕生」はアプリの売り上げで国内トップに食い込んでいる状況です。なぜ、今、新たにマッチングアプリを投入するのでしょうか?その仕掛け人、サイバーエージェントグループで唯一となる女性の代表 飯島徹子 氏に話を聞きました。
Torte(トルテ)誕生までの系譜
Torte 飯島 氏:
「2014年に新卒でサイバーエージェントに入社しまして、ゲーム事業を希望して2年半ほど所属していました。カップリングユニオンのリーダーである合田(サイバーエージェント子会社のマッチグエージェント 代表取締役社長CEO 合田武広)の2つ下の世代になります」。
TechWave 増田:
「なぜ、ゲーム事業には希望して配属されたということですか?」
Torte 飯島 氏:
「はい。仕事を選ぶ時、ハードルの高いものを乗り越えた方が、その後に作られる価値は大きいと考えているんです。ゲーム事業を選んだ理由は、課金をしてもらうハードルはまだまだ高いと考えていたからんです。画面の向こうで消費者の方のお財布の紐をひらいてお支払いしてもらうわけですから。
ただ、その高いハードルを越えて価値を作っていければと考えました。ゲームそのものは遊んだこともなかったんですけど、せっかくだからとチャレンジしたという形です」。
TechWave 増田:
「ストイックですね。体育会系なんですか?」
Torte 飯島 氏:
「いえいえ、そんなことないんですよ。ただ、武道を10年ほどやっていました(笑)
それで、ゲーム事業で目指していたことがいくつかあり目標を立ててチャレンジしていたんですが、サイバーエージェントの組織のスピードは想像以上に速くて、思っていた半分ほどの期間でトントン拍子に目標がクリアできていってしまったんです。それで、これからの目標設定をどうしていこうかと考えてきた時に、CA36という社内プログラムの中でカップリングユニオンのリーダーである合田に出会ったんです。
それまで、自分がゲーム事業でやっていることは、5年とか6年継続していくサービスを成長させていくか維持していくかということに挑戦していたわけですが、そこで会った合田に「ゼロから新しい価値を生み出すというのは本当に難しいことだし、飯島が考えているようなハードルの高い経験につながるから挑戦しない手はない」と言われたんですね。
その言葉に刺激を受けてしまったんです。それでそこから社内のいろいろなプログラムを通して最終的に社長に決議をいただというのが創業までの流れです」。
恋愛体質
TechWave 増田:
「社内外で支持層が多い合田さんの一言が大きかったのですね。ただ、それだけでマッチング事業で起業するという決断をしたわけではないですよね?」
Torte 飯島 氏:
「実は私、恋愛体質だったんです。人生と恋愛を切り離せない。合田がやっているマッチング事業に感心を持つことになり、それで、女性向けにもっといいサービスを提供できないかという着眼点から始まりました。現状のマッチング業界の現状などを聞いていったんですが、話を聞くほどどんどん興味が沸いていってしまって、この「Torte(トルテ)」という事業にのめり込んでいってしまったというのが2016年のことでした」。
TechWave 増田:
「ちょうどサイバーエージェントがマッチング事業ドメインに集中するぞというタイミングで会社ができているんですね(2016年11月1日創業)。それから1年たらずでサービスインとなりましたが、サイバーエージェントグループの勢いを受ける中、飯島さんの「恋愛体質」を起点とする理念はいい形で事業として落とし込めたのでしょうか?」
Torte 飯島 氏:
「個人的な考えではあるんですが、人と人が深く関わり合うことは、部活とか恋人くらいしかないと思うんですね。自分は武道(剣道)をやってましたけど個人プレイだし、自分との戦いであるが多かったんですね。その中で、自分が自分の深さを体験したり、自分自身を培うのは男性との恋愛だけしかなかったんです。
学生時代は、時間があるということもありますが、恋愛が中心の生活となり、就職してからは仕事にのめり込みました。そして、この2つが掛け合わされる部分をみつけてしまった。恋愛体質という私の強い意志が、もしかすると女性のためになるのかもしれない、という可能性を感じてこの「Torte(トルテ)」という事業にチャレンジをしています」。
TechWave 増田:
「その意思や思いは、具体的にどういった形でサービスに落とし込められていくのでしょうか?」
Torte 飯島 氏:
「日本女性って、女性同士で相談しあって恋愛する傾向があると思うんです。奥手の人が多い、本当はいきたいのになかなか行動できてなかったりする自身の持てない人が多いと思っていて、私は人生においてもったいないなと思うことが沢山あったんです。もっと自分から行ったらもっと素敵な恋愛ができるのに、というもどかしさを感じていて、そこがもしかするとマッチングサービス構築のいいヒントになるのではないかと思っていたんです」。
TechWave 増田:
「そうした思想が、徹底した女性ファーストのマッチングサービスに進化したわけですね。」
Torte 飯島 氏:
「海外では数年前から女性が主導権を握るマッチングサービスを展開して伸びているところがあり、そういったところも参考にしながら開発を進めました。女性向けというくくりでいうと国内にもあるのですが、ここまで徹底して女性ファースを徹したサービスは一つも存在してないですね。
そもそも「タップル誕生」を筆頭にマッチングサービスのほとんどは男性がお支払いするモデルです。男性が料金を支払いアクションを起こさなければ事業が成立しない。ですから、発想があったとしても、女性ファーストのサービスに挑戦するという流れは生まれてこなかったのかもしれません」。
日常ほぼバレンタインデー化計画進行中
TechWave 増田:
「Torte(トルテ)」は、構造としては「タップル誕生」などと同じ、ただ、女性ファーストならではのポイントがあるようですね」。
Torte 飯島 氏:
「はい。使い方は、まず相手の情報を次々めくって、気になる人をみつけて「オファー(いいね)いきます。これは男性も女性も無料で行うことができます」。
「最終的にメッセージでのやりとりをするかどうかの判断は女性が行うというのがTorte(トルテ)の仕組みですが、なかなか動けない女性のために、さまざまなアイディアを盛り込んでいます。
まず、お相手を探している段階で、その男性からのオファーをもらっている場合は「脈あり」と表示されます。
TechWave 増田:
「これだけでもかなりドキドキですね。」。
Torte 飯島 氏:
「プロフィールについても、文字だけで長々と説明しても伝わらないと思うんですよね、だから日常の写真ベースで伝えてもらう仕組みを採用したんです。「休日の過ごし方は?」といった複数(現時点では最大6枚)のテーマに対し、日常の写真を投稿してもらう仕組みを採用しています」。
TechWave 増田:
「飾らない本人の日常の姿が浮き彫りになるようなイメージですね」。
Torte 飯島 氏:
「写真のレイアウトや文章、絵文字の使い方などに本人の人柄が出てくるように思うので、ここにはこだわっています。プロフィール項目としてはフリーの期間だとか喫煙をするかどうかなど細かい部分も掲載しています。将来的には、写真を分析してお相手を探せるようなことも考えてはいます」。
TechWave 増田:
「こうしたUIとか世界観作りで影響を受けているサービスなどはあるのでしょうか?」。
Torte 飯島 氏:
「それはインスタグラムですね。コンテンツのスライドUIやコミュニティのトーンなど参考にしている部分があります。
「Torte(トルテ)」ならではの機能といえば、女性からの口コミです。男性のプロフィール欄には、女性からの口コミレビューが表示されるようになっているんです。
これはマッチングしてメッセージのやりとりをしたことがある女性からの投稿なんです。これによりプロフィールだけでは伝わらない、本人の姿を第三者からの目線で伝えてもらおうとしています」。
TechWave 増田:
「まさに、恋の噂話的な」。
Torte 飯島 氏:
「特にマッチングアプリだと知り合いがまわりにいないので女性は不安だと思うんです。ただ、それはリアルの世界とも変わらなくて、結局はこの男性はどういう人なのかな?自分は遊ばれたら嫌だし、浮気されたら嫌だし、真剣になればなるほど不安になるものだし、だからその男性を知る他の人の目を伝えることで、そうした不安感を解消できるのではないかと挑戦しています。
TechWave 増田:
「最終的に、女性から行動しないといけないわけだから、なおさらですよね」。
Torte 飯島 氏:
「はい、最終的に、マッチした相手に対し24時間以内にメッセージを送るかどうかの決定権を持つのは女性ユーザーです。自分の恋愛を自分で決めるということになるわけですね。
ただ、行動しようかな?という人に対してみんなで相談し合える。こうした恋愛に共感し合える女性同士がいると感じられる環境の中で、女性が恋愛を決めるというのが「Torte(トルテ)」の世界観ということになります。社内では日常がバレンタインデーという言い方もしていますね」。
TechWave 増田:
「まだリリースして2日ですが、初速はどんな印象ですか?また、第一段階の目標値などがあれば教えてください」。
Torte 飯島 氏:
「初めはプロフィールのアルバム登録を、ほぼ全ての人に行ってもらいたいと思っていたのですが、もう初速段階で達成できそうな状況になっています。次はマッチング率ですが、こちらも大半の人が想定目標を達成していいる状況です。最終的にはマッチングした女性がメッセージを送るというとことですが、たった2日で想定以上の女性が行動に移していて、私としてはとてもうれしいです」。
「タップル誕生」を超える
TechWave 増田:
「Torte(トルテ)」は、「タップル誕生」と同じ月額3900円の課金プランになっていますし、女性ファーストではあるけどマッチングサービスとしてはさまざまなチャレンジをしているわけす。いずれ、男性ファーストの企画もやれるのではないか?すくなくとも、同グループの「タップル誕生」が競合になるなんてこともあり得るんじゃないでしょうか?
Torte 飯島 氏:
「はい、日本における女性向けマッチングサービスでトップを狙うのはもちろん、国内マッチングサービス5本の指には入りたいですし、そもそも計画では「タップル誕生」を超えるという成長を狙っています。
「Torte(トルテ)」は、女性からはじまる。女性が意思決定をする初めてのサービスだと思います。エブリデイバレンタインデー。高いハードルがありますが、広めていきたいと思います」。
(了)
【関連URL】
・Torte(トルテ)サービスサイト
https://sweet-torte.com
・Torte(トルテ)運営企業サイト
https://torte.co.jp
・サイバーエージェント4本目の柱を目指す「カップリング事業」横断組織統括リーダー 合田武広 氏の戦い @maskin
http://techwave.jp/archives/cyberagent-2017q1-result-24826.html
女性による口コミレビューは、一見すると言いたい放題になりそうな気がしたのだが、実際レビューを受けた側は自分自身の意外な側面を発見できるなど前向きに受け止められるようだ。ちなみに、同性の友達などからの投稿も将来的には展開していきたいと考えているようだ。
男女の出会いには本質を見えにくくするノイズが常につきまとう。飯島氏はこうしたフラットに人を見つめることができる世界を構築することで「むしろ相手のことが見えやすくなる」と話した。
さまざまな視点の意見にさらされることで、恋愛ひいては対人関係の不安が払拭されるばかりか、恋愛体質ひいては人生を長く人間関係の中で生きてすべての人たちの本質をむしろ浮き彫りにしていくのだろう。決して悪い世界ではない。