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研究こそすべて。実験を繰り返すイメージがあるバイオテック領域ですが、ジーンクエスト 代表取締役 高橋祥子(PhD) 氏(写真上)は起業という道を選びました。
「もっと加速していくためには会社にしないといけない、と当時 大学院生(ドクター)だったのですが卒業を待たずに会社を立ち上げたんです」。
研究結果を社会に還元して成長する仕組み
ジーンクエストが展開するのは個人向けゲノム解析サービス。唾液を元に個々の遺伝子情報を解析し、遺伝的な体質や疾病リスクに関する情報を提供するものです。
個人向けには遺伝子調査キットをネットで提供していて、唾液を採取キット入れて返送後、およそ一ヶ月後にマイページ上で遺伝子情報を確認できるサービス。遺伝的な体質、疾患リスクに関する情報を提供するほか、検査後に提供可能になったアップデート情報を常に適宜マイページに提供していきます。
なぜ、このようなことをやっているか?それに対し高橋 氏はこう説明します
ジーンクエスト 代表取締役 高橋祥子(PhD) 氏
「今ある研究成果をきちんと社会に還元し、
結果的にサービスに参加する人が増えて
結果的にデータが集まって研究が加速していく
研究と事業のサービスのシナジーが大きく回るような仕組みを作ったのがジーンクエスト」(高橋 氏)
このような遺伝子情報を集めることで、外部の研究機関や大学、民間企業など10機関以上と連携して共同研究を進めることが可能になっているとのこと。
バイオテックで何が起こっているのか?
「インターネットがもたらしたすさまじい進歩の流れはみなさん体感されていると思います。
特に最近ではビッグデータと呼ばれる大規模なデータが取得できるようになってきて、じゃあ、それをどう活かすかということで人工知能/AIがバズワードになったりしているわけですが、それと似たような流れがバイオテックでも起こっている状態です。
DNAの発見、ヒトゲノムの解読されたのが2003年くらいですが、そこからいろいろな技術が飛躍的に発展し、膨大なデータが得られるようになってきた。では、そのデータを使って私たちは何をするのか?ということが問われるフェーズに入ってきています。
こちらは有名な図なんですけれども、ゲノムの解析コストというのがムーアの法則を超えて飛躍的に下がり、性能が上がっているということなんです。
これで何が起こっているかというと、飛躍的にさまざまな発見が生まれ論文の数も急増しているわけです。
それで私たちがゲノムデータをなぜ集めているかというと、
生命データを収集することによって
1.生命の法則性を明らかにし、
2.その法則性をコントロールすることで価値を生み出すこと。
ということになります。つまりどういうことかというと、例えば大規模な遺伝子データを集めます。その中で、うつ病になったことがある人と層でない人のグループを比較してどういう遺伝子が関わってくるのか解析したりしています。この遺伝子情報を持つ人はこの病気にかかわっている、一つ一つ調べていきます。実際にその薬を作るときどこをターゲットにしたらいいのか、何がかかわっているのかが見えて、実際に予防・治療・再現・未来予測などが可能になっていきます。
ビッグデータ時代が生命科学研究にもたらす変化
現時点ではゲノムが最も根本の情報なので私たちの事業ではフォーカスしていますが、ゲノムだけではわからないことはあります。その他にもタンパク質やメタボロームなど、健康診断などらゆるさまざまなデータが得られるようになっているんですね。
これまで研究を進めるというのは、知識と経験のある専門家が仮説を立てて、それを検証していくというのが研究のサイクルだったのですが、それらのデータが簡単に取れるようになってしまったため、専門家の経験と知識に頼るまでもなく統計的に仮説が導き出せる様になってしまったんです。それが、先ほど述べたような論文の数の増大という結果になっています。
そうすると研究者の役割も変わってきて、どう経験と知識に基づいて仮説を立てるか、ではなくて、どう情報を取得して活用して、何を目指して価値化するのかを考える仕事になっていると思います。
こちらの図は、私が考えた概念的なイメージなのですが、生命データの解析のコストがどんどん減少していくに従って、生命データの量自体は加速度的に増えているということを表しています。
つまり、今後はデータを持っているところが勝つ、データの価値そのものも上がっていくのですけれども、データの量が多すぎて模倣するようになるとデータの価値は上がらない。どこのどのデータを使って、何を目指して価値化することが重要になってくるんです。
ですから私たちはまずゲノム情報の収集にフォーカスしているわけですが、今後は様々な生命科学のデータから医療に役立てたり社会問題の解決に役立てたりしたいと考え、このような研究活動をやっているわけです。大規模なデータを研究に活かして価値かするスキームでデータ取得をしていて、そこに集めて価値化して、そこで新たな発見をしていきたいと思っています。
このサイクルをどんどん回していくことがゲノムの研究や世界を前に進めることだと信じてチャレンジしています。ただ、実際、この取り組みが将来私にも誰にも予測はできません。やってみないとわからないんです。だからこそ、私はこの世界でチャレンジして前に進めたいと思うんです」(ジーンクエスト 代表取締役 高橋祥子(PhD) 氏)。
【関連URL】
・Genequest [ジーンクエスト] | 日本初、大規模遺伝子検査・解析サービス
https://genequest.jp
バイオテックの世界で今何が起こっているのか。国内のプレイヤーで最もわかりやすい言葉で伝えてくれたショートスピーチだと思う。バイオテックは、ITの領域に完全に踏み込んでいる。いや、生命科学はITで描かれているわけで、ビッグデータや人工知能、スーパーコンピューターなど様々な技術が総当たりでチャレンジできる領域なのだと思う。そんな世界にジーンクエスト高橋氏は、大学から飛び出てまでチャレンジしているということに感銘を受けた。なお、この講演は世界の名だたるバイオテック研究者・事業者が日本に集ったDGLabのイベント「New Context Conference」(DG Lab が「バイオテクノロジー」にフォーカスする理由、伊藤穰一氏ホストイベントの主要2テーマに採択 #ncc2017tk)における内容をサマライズしたもの。