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ロシアンOLちゃん初登場、ヨーロッパ10カ国のICO規制動向

ロシアンOLちゃん遂に登場です 編集チョのマスキンです。ブロックチェーンや仮想通貨の情報はどうしても海外を中心に語られがち。TechWaveではさまざまな国と地域から多様な観点の記事やコラムを集め始めています。今回から定期的に記事を書いてくれるのはロシアンOLちゃん! 強烈なニックネームながら初回から力の入ったまとめ記事を寄稿してくれました。


2017年から2018年にかけて、新たな資金調達手段として良くも悪くも話題に上ったICO(Initial Coin Offering)。 各企業、プロジェクトが独自のトークン(コイン)を発行することで、100億円を超える巨額の資金を調達するプロジェクトが現れる一方で、トークン発行の容易さと、未整備もしくは曖昧な規制によって、全体の8割を超えるとも言われる詐欺的プロジェクトも多数生まれました。 最近では、世界各国で規制整備についての議論が進み、既存の法的枠組みで規制可能なSTO(Security Token Offering)の仕組みも新しく登場しつつあります。こういった状況の中で、トークンエコノミー構築のための仕組みの一部だと考えられていたICOの今後について考えるために、世界各国でこれまで何が起こり、何が議論されてきたかをまとめたロシアメディアの記事を、紹介したいと思います。

 世界では1日あたり平均4件のICOプロジェクトが始動していますが、2018年においては、多くがそれらが生まれるのと同じくらいのスピードで瓦解しています。

 非合法なICOはもう止めるべきなのではないか。投資家は自らの権利の遵守を要求し、規制当局は以前より厳しい態度を取り始めています。”to the moon”、つまり暗号通貨の相場価格の急激な伸びには程遠いのが現実でした。
しかしICO市場が無益に終わったのではなく、姿を変え、公共性の低い場へと移動しただけであるという反対意見もあります。

近年ICOブーム通して分かってきたことは、大体プロジェクトは有価証券のようなものを発行し、ベンチャー投資家がそれに興味を持っているということです。一方で多くの当局はICOプロジェクトと投資家に対する要求を明確にしつつあります。

今のところアジアとアメリカは暗号通貨を貨幣単位とする市場の漸進的な規制について論争していまするが、保守的なヨーロッパは既にしっかりと安全に、暗号通貨の助けを借りて資金を調達しようとする議案を採択しています。

ヨーロッパには今のところ集権的にトークンの発行を調整する機関が一つもありませんが、それによって各国がこの問題の独自の扱い方について精査することを妨げられている訳ではありません。

最近、有価証券と市場に関するヨーロッパ組織(ESMA)のトップであるスチーブン・マイオール氏はトークン発行と証券の類似性を指摘し、一定の規制をトークンにも適用する可能性を示唆しました。しかしその枠組みには当てはまらないICOはどうすべきなのか?
それについてESMAは2019年にフィンテック分野における暗号通貨その他の事業のモニタリングに100万ユーロ以上を費やす目的について声明を発表出し、この分野の規制に関する自らの立場を2018年末までに報告することを計画しています。

ICOプロジェクトはどこへ向かうべきか

ICO実施における国の選定を行う際、多くの人はジブラルタル、エストニア、スイスなどをまずは思い浮かべるでしょう。そう、これらの国々は暗号通貨ビジネスに正当な国としてPRに注力しました。これと並行して、読者のみなさんが思っている以上に、多くのヨーロッパの規制当局が存在しています。2018年の成功したケース例を基に、ICOプロジェクトにとって最も適切な規制が行われていると思われるヨーロッパ圏上位10カ国について見てみましょう。

マルタ

マルタはICOや、トークン、暗号通貨を流通させるための明確な規制枠組みを発表した世界で初めての国となりました。マルタのジョゼフ・ムスカット首相は、マルタを”ブロックチェーン島”に変える計画を立てていることについて躊躇うことなく声明を出しています。そしてこれは、無意味な言葉ではなく、実際にこの分野のニーズに対応できる規制の枠組みづくりに政府は積極的に取り組んでいます。DLTプラットフォーム、とりわけブロックチェーンプロジェクトの要求と保証に関する、デジタルイノベーション当局の規制法案も既に出されています。

また、マルタは正当な税制のお陰で、ブロックチェーン企業から支持を得ています。3月にはOKex、ZB.com、Bitbayなどのブロックチェーン企業がマルタへ管轄権を移動。9月には取引高においてリードする暗号通貨取引所Binanceやマルタの証券取引所がMOUにサインし、それに基づき、有価証券の性能をもつトークンでのビジネスプラットフォームがつく創られることになっています。

2018年にはマルタのICOプロジェクトが1億3400万ドル近くを集めています。それにはThe Abyss(DAICO)、Play2Live、Intimate、HOLDなどが含まれます。

スイス

この決して大きくはない国は、ブロックチェーンプロジェクトにとって大きな中心地になっています。現在スイスは、ICO資金調達額においてヨーロッパ諸国のリーダー的存在で、9 月末時点での合計調達額は計5億5600万ドルを超えています。

スイス政府はブロックチェーンスタートアップのための最も発達したエコシステムを創り出しています。ツーク州には暗号通貨産業の聖地、クリプトバレー(クリプトバレーアソシエーション)が存在。クリプトバレーの目的は、ブロックチェーンと関連技術のためのより良いエコシステムを世界で創り出すことにあります。クリプトバレーはイーサリアム財団発祥の地、またMonetas、Lykke、その他多数のブロックチェーンプロジェクトの本部となっています。さらにツーク州は、駐車違反の罰金をビットコインで支払える初の都市となり、一部の銀行でもクリプトコインをフィアットと交換することさえ可能です。

ICOの規制としては、企業のトークンが証券に分類された場合、既存の法律が適用されます。もしトークンが保有者に対して何らかのサービス料や特典を与えれば、それは規制されません。

2018年に1000万ドル以上を集めているスイスのICOプロジェクトとして、Friendz、Smart Containers、NEXO,、BitNautic、Quant Network、Essentiaなどがあります。

フランス

2018年9月にフランスではICOのための法規制が動き始めました。現在ICOを行うためには、企業はフランス金融市場庁(AMF)の許可を求める必要があります。そのような規制が投資家を保護し、資金喪失や、マネーロンダリング、テロリズムへの資金流出のリスクを軽減しています。
2018年にフランスでは、トークン発行を通じて6300万ドルの調達に成功しています。

フランスには恐らく、暗号通貨ビジネスを始める人たちにとって魅力的な国になることを目指しており、分かりやすい規制を作ることで外国の投資家を誘致しようとしています。

これはICOビザプロジェクトの存在がそれを証明しています。このビザは、クリプトプロジェクトを扱うために銀行に対してグリーンライトを与えているため、外国企業は申請することができません。資金を集めたいプロジェクトは、審査のためににホワイトペーパーを提出する必要があり、そこでは必ず次のデータが求められます。

・プロジェクトの詳細とそのロードマップ
・トークンにより与えられる権利
・争いが起きた場合の管轄裁判所
・経済的目的とICOで集まった資金の今後の利用法

最近では、フランスの分散型暗号通貨取引所Blockchain.ioのCEOピエール・ヌアザトがICOビザを申請し、 6000万ユーロの調達を計画しているようです。

このようにフランスは先駆的な立場を諦めるつもりはなく、かつてFacebookやInstagramのしたこと―正当にその部門を収益化し、全世界をその過程に引き込もうとしています。規制についてはまだ問題が残っているものの、同国はこの方針でさらに発展するつもりのようです。

ドイツ

ドイツでは、経済における仮想通貨規制のための枠組みが立案されています。2013年には、既にデジタル貨幣がドイツ連邦財政省に公認され、”支払いの単位”の地位を授かりました。これは、部分的な取引において利用できる財政手段として認められたことを意味します。もし仮想通貨が実際に商業取引で用いられた場合、その活動はドイツ連邦金融監督所(BeFin)に準じます。

2018年3月には暗号通貨は正当な支払い手段に認められました。商品やサービスを暗号通貨で決済した国民は付加価値税を支払う必要がありますが、取引所など仲介者は公式に免税されています。マイナーの業務委託料についても同じです。

今年の夏BeFinは、既に6つのドイツの銀行がデジタル貨幣を取り扱っており、利用者はそれを銀行窓口かATMでフィアットに交換できると発表。8つのドイツのスタートアップはICO、とりわけNeufundとWyskerはICOを成功裏に終えることができました。

エストニア

ここ10年でエストニアはビジネス、特に政府側からのデジタル進歩において、多くのヨーロッパ諸国にとっての見本となっています。今のところEUは統一された規制の枠組みづくりを達成することが出来ておらず、エストニアではICOが許可されているが、一定の条件があります。その主旨は、トークン分析に際しては実際の状況を考慮することであり、形式よりも内容が優先されなければならないというものです。

2018年エストニアのICOプロジェクトはAdHive、SKYFchain、Lympoなど、合計1億5700万ドルを集めています。

ベラルーシ共和国

ベラルーシ共和国は立法レベルでICO、暗号通貨取引所、デジタルトークン、そして暗号通貨が規制された国の一つとなっています。2018年3月28日にはブロックチェーン、トークン、デジタル貨幣に関係する、あらゆる事業家の活動を是認する”デジタル経済の発展に関する法令”が施行されました。さらに多くの国々と異なり、ベラルーシでは法令に準じ、マイニングと取引所での売買に税金が課されません。

政府の狙いは、免税その他のメリットを提供することで、外国資本を利用して国家予算を補填すること、また西欧諸国との関係を強化することにあります。
最近成功したICOプロジェクトの中にはScorum,、Jinbi、Miner Edgeなどが挙げられます。

リトアニア

リトアニアには現時点でICOに対する特別な規制はありませんが、当局は最近の発表で暗号通貨ビジネスのための規範的な土台をつくると表明しました。このアプローチは市場にとっても有利であると強調しています。
実際のところリトアニアのICO市場は既に存在し、リトアニア財政犯罪調査局(FNTT)の副局長ミンダウガス・ペトラウスカスによると、最近1年半の間にリトアニアで実施されたICOの資金調達規模は300%伸びて約5億ドルに達しているとのことです。

例えばリトアニアではICOのプラットフォームDESICOがセクリティートークンを発行しているプロジェクトのために始動し始め、DESICOチームも秋にSTO(Security Token Offering)へ取り組むことを計画しています。

2018年リトアニアのICOプロジェクトは2億7100万ドル以上を調達。それにはBankera、WePower、Debitum Networkなどが含まれています。

ルクセンブルク

現在ルクセンブルクには特別なICO規制はありません。しかし政府は様々な方法で暗号通貨市場を支援しており、近隣諸国の経験を参考にしています。ルクセンブルクはヨーロッパ金融の中心と呼ばれていることを考慮すると、この国がじきにICO活動の規範的規制をつくるのではないかと考える強い根拠になるのではないでしょうか。

ルクセンブルクで始動された少数のプロジェクトの中では、TICKO、AvantGarde Ratingsが注目に値します。それらは自らのプラットフォームを発展させるために必要不可欠な金額を調達しています。

イギリス

イギリスは発達した銀行システム、証券取引所、および一般的な利便性を犠牲にしてビジネスを行う観点から常に人気を得てきました。今のところICOを規制しうる具体的な法律はないが、それでもそのような資金調達の方法は国家に歓迎されています。

例えば、イギリスではInnovate Hub.という特別なプログラムが開設されました。金融行動監視機構(FCA)が、既存の国の立法基盤の下でトークンセールを行なっているにも関わらず、ICO、厳密に言えば自らのトークンの流通への規制に対する問題は未解決のままです。そのため今イギリスは他の国々のように暗号通貨使用に対する規定やICO手続きの業務を行なっています。

2018年イギリスのICOプロジェクトは4億9000万ドル以上を調達することに成功。Travala.com、Omnitude、MoneyToken、Xriba、Datareum、Medicalchainなど多数がそこに含まれています。

ジブラルタル

ジブラルタルはどうやらICOの世界史上の発展に大きく投資をするつもりのようです。ここでは2018年1月からDLTのための規範的法基盤が導入されました。イギリスの保護下にあるジブラルタルは、官僚たちの緩慢な決定を待つことなく、政治的に独立したまま、法基盤を形成していています。

2018年9月の始めまでにジブラルタルでは、諸プロジェクトがICOを通じて1億5700万ドルを調達。それにはGlobitex、ConnectJob、Detherが含まれています。

結論

暗号通貨産業にとって2018年は単純とは言えません。市場は変化の期間を経て、規制当局がゲームのルールを明確にすることは、新しいICOプロジェクトにとって良い土台になります。トークン発行・販売を通じた資金調達のための複雑なマニュアルにも、大きなメリットがあります。これはブロックチェーンスタートアップにとっての根本的課題を解決するかもしれません。第一に、そのようなプロジェクトには積極的に大きな資金が投資されます。第二に、伝統的財政システムはより緊密にブロックチェーンスタートアップとの交流ができるようになるでしょう。

【関連URL】 ・[公式] Web Summit | Lisbon | Where the tech world meets

蛇足: ロシアンOLちゃんです  ブロックチェーン業界全体に影響を与えるような主要な企業の動向を探る上で、個人的にはベラルーシ、マルタ、フランスのように、より積極的に合法化に向けて動いているエリアには特に注目しています。さらに各国政府による規制関連のニュースだけでなく、海外におけるブロックチェーン導入に関する事例や、主要プレイヤーの動向についても追いかけるようにしています。
例えばロシアでは、OTC取引関連市場の盛り上がりが注目されており、11月だけでHuobi、Binance、Kucoinがロシア進出を発表しています。こうした情勢は、規制動向と密接に関係していると考えられ、新しい事例が登場次第お伝えしたいと思います。

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