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1億6600万再生のハッピー・チューバッカ事例
Happy Chewbacca(ハッピー・チューバッカ)動画をご存知だろうか。まだの方はぜひこの動画を見て欲しい。*Chewbacca=スターウォーズに登場するキャラクター
Facebook発で1億6600万再生を記録した、米国では知らない人はいない最近の勝ちパターン動画である。Chewbacca Mask Ladyと言われるこの女性はYoutuberでもタレントでもなんでもなく、テキサスに住むごくごく普通の専業主婦。とある日、自分へのご褒美として、Chewbaccaマスクを購入。それが嬉しくてたまらなくて、子供を迎えにいく間の10分間で、早速装着してはしゃぐ姿をセルフィーしてFacebookにアップした。それがまさかの全米中で大ヒット。この動画を見る人は必ず腹を抱えて大爆笑し、「ありのままでHappyを表現するって素晴らしい!Wow!」といった様子でまたたくまに再生数が伸びた。
正直、日本人からするとそこまで笑えるのかよくわからない部分もあるのだが、ともかく物凄い再生数を叩き続けているのだ。さらに付け加えたいのが、仮にこれが「子供へのプレゼント」文脈であれば、感動的な余韻を残してさらに共感を呼びそうなところ、あくまでも彼女がマスクを買ったのは自分のためである点。それにもかかわらず、あまりにも幸せそうなので、スターウォーズ本家俳優も声明を出し、様々なパロディ動画が作られ、投稿した女性本人もTV番組に引っ張りだこと、大変な大事になっている。
結果、Chewbaccaマスクは完売。販売元のKohlは大喜びして、彼女に$2,500の商品券をプレゼント。ただし、アフィリエイト機能はついていないので彼女にはFacebook自体からは何のインセンティブも入っていない。なお、経済的なインパクトについてはこちらの記事に詳しい。
Why ‘Chewbacca Mask Mom’ Is The Most Famous Haul Video To Date
https://www.forbes.com/sites/fruzsinaeordogh/2016/05/23/why-chewbacca-mask-mom-is-the-most-famous-haul-video-to-date/#40a3e3215740
Facebook Liveの課題
先日、Wall Street Journalに、Facebook Liveに関する批判的な記事があげられた。広告収益モデルにも関わらず、Liveに関しては視聴情報がブラックボックス化している点が、媒体としての不信感をもたらしている。また、誰でも自由に簡単に動画を載せられることから、倫理問題への懸念も強く指摘される、という内容だ。
Facebook, Rushing Into Live Video, Wasn’t Ready for Its Dark Side
https://www.wsj.com/articles/in-rush-to-live-video-facebook-moved-fast-and-broke-things-1488821247
対して、デジタルフューチャリストのBrad Berens氏は、さらに付け加える。先のHappy Chewbaccaのヒットについて明るい話が多々されているが、これもあくまでも例外中の例外である、と。彼女が特段幸せそうでつい笑ってしまっただけで、手法に特に再現性があるものでもない。ましてYoutubeのように、一個人に対して報酬が入った訳でもなく、Facebook Liveが今後そのようなプラットホームになる可能性も考えにくい。
Liveの醍醐味とは、今リアルタイムで起きている状況を、一喜一憂しながらハラハラ見つめることである。人々の集中力を最も稼げるもの、つまりマネタイズ可能性があるのは、Eventness(=イベント性)であり、Live終了後のシェア動画ではないのだ。ポリフォニー論で有名な20世紀ソ連を生きた思想家ミハイル・バフチンの思想を借りて表現するならば、Liveが終わった時点でそれはただの録画で、過去である。
現に、人々がいかにEventnessに熱狂するか、昨今のSnapchatの飛ぶ鳥を落とす勢いをみれば明らかだろう。
そして、新しいインフラが整えば、従来の定説が崩れ、新たな価値が生じる。そのスピードはテクノロジーの変化により更に早まり、気づいた頃には、それまでの常識は過去の遺物となってしまう。それを我々はイノベーションと呼ぶが、最初はなんとも気持ち悪い存在なのだ。
Facebookプラットホーム上のLiveに、Live本来の役割が担えるとは考え難い。今後のFacebook Liveの方向性について、注目し続けたい。
[Special Thanks to Mr.Brad Berens]