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「Clova」はLINE株式会社 取締役 CSMO 舛田淳 氏の直属の部隊で、LINEの各事業とはほとんどやりとりをせず新たな価値の創造に注力」しています。単なるリモコンで機能を実行するスピーカーではなく愛があり話しかけたくなる存在。TechWaveでは、2017年8月23日、Clova対応のAIスピーカー「wave」の先行体験版が予約者に向け限定出荷される前に、LINE 取締役 CSMO 舛田淳 氏に「Clova」の本当に姿について話を伺いました。前編に付き続き後編をどうぞ。
Clova対応AIスピーカー「wave」が8月23日出荷
TechWave 増田:
「間もなく(2017年8月23日)Clova対応のAIスピーカー「wave」先行体験版が出荷されますが、実際のところどのような使用感で提供されるのでしょうか? 初めから誰でもある程度の会話UXを体験できるイメージか、それともまずは機能限定版として提供して様子を見ながら仕様を決め、デバイス内の組み込みソフトウェアもアップデートしていくイメージなのか、教えてください」。
LINE 舛田 氏:
「ハードウェアでやるべき部分と、ソフトウェア・クラウド側でやりべき部分と役割分担があると思っていますが、ほぼほぼの機能はクラウド側にありますので、こちらは常時アップデートしていきます、どんなエクステンションが必要になっていくかまさに規格をしていっているとろころですし、パートナーの皆さんにご協力を頂いたりしています。
例えば、このデバイスはキッズ向けだよね、キッズ向けにはこういうコンテンツが必要でこういう配慮が必要じゃないか、であるとか、これは一人暮らしの男性向けだよね、それなら我々のグループ会社のVincleの「Gatebox」(「Gatebox」誕生秘話、妄想が産んだバーチャル嫁ロボット30万円が5日間で200台も売れる理由)などがわかりやすいですが、そういった設定一番愛着を持っていただけるし一番効果が高いものを作り込んでいくんだと思います。
クラウド型AIプラットフォームなので何にでも繋ぎ込めるんですよね。繋ぎ込んだところでどういう風なものが必要になるか、そこはつないだデバイス側でやるべきものだったり、ソフトウェアで多少サポートをするというような構造で進めています。なので、むしろ現在では用途をしぼるべきではないと思っています」。
TechWave 増田:
「スマートフォンは、Clovaスピーカー「wave」の正式サービス時(2017年末頃を予定)にセットアップ以外で連携するようになるのでしょうか?」。
LINE 舛田 氏:
「まずはセットアップのみになると思いますが、実は、Clovaプロジェクトを動かしている韓国では専用のアプリで検索から何から何まで動かすことが可能になっています。ハングル語の音声認識でかなり高度なことができるようになっています。日本でやっているClovaアプリはまずはセットアップのみになりますが、さまざまな機能を追加していこうと考えています。Clovaアプリ自体がエージェントのようにどんどん進化していくという計画を描いています。
なお、今回出荷される先行体験版は、専用アプリで一度設定してしまえば、スマホ側からの操作は不要です」。
TechWave 増田:
「先行体験版waveは、正式サービスと同じハードウェアで、初めは音楽再生など基本的なサービスのみが使える状態だということですが、」。
LINE 舛田 氏:
「何でそもそも先行体験版をやるのかというと、これは社内でも色々と議論があったのですが、これはAIデバイスみたいなモノをやっていくにあたって、まだまだ我々のものって完成形になっているかというとそんなレベルにはなっていないと思います。成長の余白が非常に大きい状態です。
AIは教師データが必要で、データを学習しながら成長するんですという話がありますが、データだけではなくてユーザーのみなさんの気持ちや思いというもも大事だなと思っていて、できたら開発プロセスの中に入っていただきたいなって思ったんですね。Clovaというものと、ユーザーの皆さんが、データ収集もするんですけど、いろいろなご意見も頂きたいなと思っています。
我々も、意見をいただいたから、じゃあこれをアップデートしました、じゃあこれを改善しましたよと、できるだけオープンにある程度リアルタイムにお伝えていきたいなと思っているんですね。その中で、いい関係性ができていって、正式版を迎えたい。正式版以降もこういったコミュニケーションが重要だと思うんですね。
世界的にもこういったデバイスというのは生まれたばかりですので、これを一緒に育てていこうと思っていただける完成ができたら私ども自身もClovaも幸せなんだろうと先行体験版を手の届きやすい価格で提供させていただいたという経緯はありますね。機能でいうと、音楽や基本的なものだけに限定されあまり乗っていませんが、順次アップデートしていく軌跡を一緒に共有できたらなと思っています」。
TechWave 増田:
「今までのLINEも、ユーザーさんのレビューを大切にされてきたと思いますが、開発プロセス自体は変わらず、むしろよりユーザーさんとの関係を深めていこうという考えがあるのでしょうか?」。
LINE 舛田 氏:
「そうですね、ユーザーの皆さんの声を聞きながら改善を高速にやっていったのが私どもの最初から変わらない姿勢なのですが、ハードウェアでもこれと同じようなやり方ができるのだとしたら、それは私たちの強みになるでしょうし、どこまでみなさんと一緒に、みなさんのモノとして、みなさんのパートナーとしてClovaが存在できるかが大事ですので、今回はこのような方針で先行体験版をやらせていただきました」。
TechWave 増田:
「スマートスピーカー市場では2万円程度の安価なものが出回っていますが、いずれもハードウェアだけでみると赤字であるという話が出ています。LINEスピーカー「wave」のは1万5000円、先行体験版は1万円と破格です」。
LINE 舛田 氏:
「はい・・しかも、先行体験版は正式版と同じハードウェアで、かなり頑張って1万円とい金額を出しています。ただ、我々はハードウェアでビジネスをやっていく会社ではないと思ってますし、AIクラウドプラットフォーム「Clova」がどう拡大していくか、waveが普及すること、Champが普及すること、Faceが普及することそれぞれ大事なのですが、もっと大事なのは、私たち自身のプロダクトでなくてもClova Insideのプロダクトがどこまでみなさんのお手元に届き使っていただけるか、どういう風な時間を過ごしていただけるか、どれくらい時間を過ごしていただけるのかが大事だと思っています。
この辺の考え方はこれまでと違っているんです。スマホしかなければ、スマホだけ向いていれば良かったんですが、この先の時代に関して言うとスマホは1デバイスに過ぎない、テレビかもしれないですし、時計かもしれないですし、PCかもしれない、固定電話かもしれない、そういったありとあらゆるモノに「Clova」が繋込まれていってみなさんのことをサポートできるようになるというのが私たちの目指すべきどころで、それによっていろいろなコンテンツやサービス、そして人が最適な距離に私たちがサポートすることができるようになるんです。これはゴールに近いビジョンですが、今やっと半歩くらい進み始めたというところです」。
TechWave 増田:
「Clovaの体験の質の部分は理解できたのですが、ユーザーを増やすという目線で見たときに、すでに一定規模のユーザーを国内で獲得してはいるものの、デバイスを増やすことでさらに拡大できるという考えがあるということでしょうか?」。
LINE 舛田 氏:
「そうですね。ただ、スマホのユーザーがすべてアクティブかというとそうではないんですよ。私の家ではwaveが動いているんですが、私の母は文字入力が早くないのでスマホに振り回されている節がありまして、音声でこういうことができたら本当に楽だよねと使ってくれていますし、子供もそうですね。私自身も、waveをやり始めて改めて感じたのは、スマホを見続けている姿勢は辛いし結構不自由だなと思うんですよね。ずっと見てますし、私にとって非常に大事なデバイスではあるんですが、これを離したとして手は自由になるわ、視線は自由になるわ、かなり人間にとって正常な状態、自然な状態になるかなと思うんです。
これまでは人がデバイスに合わせていったけど、今後はデバイス側が人間に合わせることができるんじゃなかと思うんですよね。音声認識もコンピュータビジョン(画像認識)を駆使すればインプットもアウトプットももっと自然な形でやれるんじゃないか。それはインターフェイスのパラダイムシフトだと思うんですね。今やっているクラウドAIプラットフォームは、ユーザーインターフェイスの進化だと思っていまして、このインターフェイスがどうなっていくかという戦いでもあると思っています」(了)。
(聞き手:TechWave編集長 増田真樹)
【関連URL】
・LINE 舛田淳 氏が語るClovaの世界(1/2)、スマートスピーカー出荷直前
http://techwave.jp/archives/interview-mr-masuda-about-clova-01.html
・TechWaveが追ったLINE
http://techwave.jp/tag/line
・LINEがAIスピーカー参入、先行販売は夏 価格は1万円
http://techwave.jp/archives/introducing-ai-smart-speaker-wave-from-line.html
・[詳説 Clova] LINEが狙う「お茶の間」、世界HOME覇権争いにスマートポータルで挑む @maskin
http://techwave.jp/archives/line-clova-25548.html
「Clova」がクラウドで動作するAIプラットフォームだということは分かっていても、そこから先のことがわからなかった。IBM Watsonのようにツールが提供されるもので、中身を自分で作っていかなければならないのか、それとも半自動的に動く機能が用意されていてユーザーは命令するだけでいいのかベールに覆われていた。今回のインタビューで明らかになったのは、インターフェイスは会話であり、そこをいかに簡単にするかが「Clova」の役割であるということだ。また、情報としては分かっていたけどClovaのパートナーとの関係性もぼんやりわかってきた。複数のClova Insideデバイスと途切れることなくつながる、そのためにありとあらゆるモノや企業、人、コンテンツがClovaに関わってくるということだ。