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世界7万人が集結する世界最大級のテクノロジーカンファレンス、ウェブサミット。日本からはまだ参加者も少なく、少しずつ認知度が上がっているという段階。世界では有名だが日本で認知度が低い場合、“お堅い”組織は出ていかないイメージがあるのではないかと思います。そんな中、昨年日本からの組織としては初となる出展を果たしたJ-Startup。2019年も出展を決めた理由、またJ-Startupが海外カンファレンスなどへの参加を通し何を成し遂げようとしているかをJETROの田中井将人氏と新田沙織氏に聞いてきました。
J-Startup とは
J-Startupは、経済産業省(METI)、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、日本貿易振興機構(JETRO)、その他民間支援機関が中心となって構成されている組織。成長スタートアップ企業を「J-Startup企業」として認定し、大企業やベンチャーキャピタル、アクセラレーターなどの「J-Startup Supporters」とともに、海外展開も含めサポートしてくれるプログラム。
政府の「企業価値又は時価総額が10億ドル以上となる、未上場 ベンチャー企業(ユニコーン)又は上場ベンチャー企業を2023年までに20社創出」という目標を検討している一貫で行われているプログラムで、世界を舞台に活躍するスタートアップの創出を通じて政府の目標達成を目指すことが目的。また、この活動により起業家マインドをもった人が社会全体に広まり日本国内におけるスタートアップエコシステムのさらなる強化を目指している。
ウェブサミットは、JETROの強力なグローバルネットワークリサーチから選ばれた
―Web Summit 知ったきっかけについて教えてください。
田中井:J-Startup ローンチした際、海外展開をどのようにしていくかを模索していました。策を考えているうちに、いくつかの世界的に知名度の高いカンファレンスに出展してみてはどうかという話になりまして。どういうイベントが良いかという情報を集めるのに、50ヵ国以上に拠点を持つJETROのネットワークを活かしながら40以上のカンファレスを調べました。スタートアップの事業領域、来場者数、VC、メディア、スタートアップのステージ、地域など様々な観点から精査し、最終的に6つに絞りました。そのひとつがウェブサミットでした。ウェブサミットを選んだ理由は、単体イベントとしての規模、マッチングの仕組みがよくできていたことです。言語の問題があるので、全参加者がコミュニケーションを取りやすい仕組み作りがあることは重要でした。
1社あたりのコンタクトが100件を超えたのはCESとウェブサミットだけ
―出展してみていかがでしたか?
田中井氏:ウェブサミットでのマッチングは600件を超えていました。昨年参加した6つのカンファレンスのなかでも、1社あたりのコンタクトが100件を超えたのは、CESとウェブサミットのみでした。6社ともそれぞれ課題はあったものの、全体的には満足度も高かったです。そのうちの1社でJ-Startup企業であるUnipos(Fringe81株式会社)さんは、web summitで多様な来場者からフィードバックを得て、欧州にも日本と似たような組織課題があることをみつけ、その後現地法人を任せられるライトパーソンにリーチし、リサーチを重ねてドイツ進出を決断しました。参加したスタートアップの感想としては、「会いたかった人に会えた」、「EU圏の企業がどのように考えているかわかった」などがあり、課題としては「ピッチに出れなかった」という話もありました。
J-Starupとしては、メディアカバレッジとビジネスマッチングをKPI指標に設定していました。組織のゴールでもあるスタートアップがグローバルにスケールしていくための初期ステップを支援する目的です。
J-statrupで出展するには
―J-Startupの企業としてカンファレンスに出展する際の審査はどんな仕組みになっているのですか。
田中井:大きく分けて2段階です。まずは、J-Startupとしての設けた基準にあてはまるかどうかで選定します。その後主催者がそれぞれの規定に沿ってスクリーニングしていくという形です。2段階目については、主催者によって項目がことなります。ウェブサミットは、起業年数などのレギュレーションが他のカンファレンスよりも厳しい印象でした。
欧米のスタートアップは、短期間で急成長しバイアウトする企業が目立つ中、日本では中長期で成長させていく企業が多いです。それが、カンファレンスのスタートアップ出展基準にもよく表れており、ウェブサミットのような次のUberやAirbnbを探しにきている投資家に向けては、5年以上という年数があるだけでレーダーに入らない場合もある印象です。そのギャップを埋める作業を僕らがして、なるべく参加する企業の皆さんにはネットワーキングなどに注力できる環境づくりをしたいと考えています。
日本発グローバル!な企業がもっと増えてほしい
ー今年も出展されますが、今年の目標、去年とは異なる取り組みは何ですか?
新田:まずは、去年よりたくさんのスタートアップに参加してほしいということです。日本からの企業を発信していく場にしたいと考えています。主催者と条件についての交渉、なるべく日本企業が参加しやすいようにできる限り良い環境を整えられたらと思っています。
また、昨年は初回だったこともあり、出展に注力していました。今年はスピーカーを輩出したり、デモステージに参加してもらったりして、日本のスタートアップを世界へもっとアピールしていきたいです。そのほか、新たな取り組みとして検討していることは、ウェブサミット出展経験者、J-Startup の大企業サポーターなど一緒に盛り上げてくれるパートナーを増やしていく、またサポートの一環としてピッチのトレーニングなどもできればいいかなと思っています。
海外展開を支援する手厚いサポート
―こういった海外カンファレンスにJ-Startup を通して参加するメリットは何でしょうか。
新田:いくつかあると思いますが、単体で参加するよりも会場においての注目度、集客力が違うと思います。それこそウェブサミットのような7万人が参加するような大規模なイベントでスタートアップブース1社だけではインパクトが薄れてしまうかもしれませんが、J-Startupの企業として出すと、規模感、装飾、メッセージ制において参加者に印象を残すことができると思います。
また出展前のサポートとして、ピッチトレーニング、事前事後のマッチングアシストなども行っています。また、海外展開を本格的に進めたい企業に対してはイベント前後に関わらずJ-startupがもつネットワークを使ってグローバルアクセレレーションハブなどの紹介サポートなども行っています。
プロフィール
田中井 将人
日本貿易振興機構(JETRO)
イノベーション・知的財産部スタートアップ支援課
日本貿易振興機構(JETRO)入構後、海外70カ所以上にのぼる機構海外オフィスのITシステム・インフラ構築の企画・運営を行う。その後、三重貿易情報センター、南米コロンビアでの勤務を経て、2016年3月より現職。250社以上の日本発スタートアップ・ベンチャー企業のグローバル展開に携わり、CES、Web Summit、SLUSH等の世界的カンファレンスにて日本政府パビリオンのプロデュースを行う。官民によるスタートアップ集中支援プログラム『J-Startup』の運営チームメンバー。
新田 沙織
日本貿易振興機構(JETRO)
イノベーション・知的財産部スタートアップ支援課
金融機関にて法人営業とストラクチャードファイナンスを担当後、日本貿易振興機構(JETRO)に入構。
日本のデザイン製品のPRや中国のEC関連イベント等担当後、2017年8月より現職。
日本発スタートアップ・ベンチャー企業のグローバル展開に携わり、欧州やシンガポールのスタートアップイベントを中心に担当。
官民によるスタートアップ集中支援プログラム『J-Startup』の運営チームメンバー。
[関連URL] J-Startup@ウェブサミット キックオフイベント
取材あとがき
「普段は結構地味な活動しているのです。」とおっしゃっていたお二方。○○国の○○に精通した企業と会いたい!などの要望に応えていらっしゃるのだとか。正直、政府関係者の方って“お堅い”イメージがありましたが、お二人はとても気さくでなにより本当に日本から世界へ羽ばたく企業を応援したいと力を尽くしていらっしゃる点が素晴らしいと思いました。ウェブサミットへの日本企業の出展は一昨年までゼロでした。昨年J-Startupが出展すると決定した際、この大事な一歩が政府関係機関であったことは日本の希望だと思いました。今年は、さらにJ-Startupが活性化し、ウェブサミットも一緒に盛り上がればと思っています。