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「クマゼミの羽には抗菌作用がある」。関西大学システム理工学部 伊藤健教授らのグループによってこの構造が突き止められたことがNHKの2018年8月28日の報道で報じられました。物理構造が抗菌作用をもたらすことで、さまざまな分野での応用が考えられる画期的な研究成果でした。
報道によると、クマゼミには「羽の表面に直径5000分の1ミリ以下の極めて細かい突起が規則正しく並んでいる」とのことで、ここに大腸菌が含まれた液体を付着させると「菌は10分から20分ほどで細胞膜が壊れて死んでしまった」というのです。
2016年に抗菌作用量産を画した論文公開
実は、クマゼミの羽に抗菌作用があることは以前から知られていました。関西大学システム理工学部 伊藤健教授は、2016年7月に「制御可能なナノ構造を利用した高感度センサと抗菌素材の創出」という論文(PDF)を公開。クマゼミの羽の構造をナノ構造で模倣することで、同等の高性能な抗菌作用を構築することに成功しています。
この構造は量産化が可能で、当時の論文には量産化への企業パートナー募集が記載されています。医療現場はもちろん、一般家庭の台所など、薬品を使った面倒な菌の除去が大幅に楽になる期待があります。関西大学には先端科学技術推進機構という、学内の知的所有権の移管組織があり、事業化へGOサインがすでに出ていたのです。機構に確認したところ現在も企業パートナーなどは継続的に募集中とのこと。
すでに論文が発表されていた抗菌構造が、なぜ今頃ニュースになったのかきっかけは不明ですが、伊藤健教授は「セミの翅の持つ抗菌作用の時間依存性」といった発表を2018年1月にも行うなど構造模倣のみならず仕組みの解明に乗り出しており、さらなる技術レベルの向上の糸口が見えたと見る目もある状況です。
【関連URL】
・[PDF] 制御可能なナノ構造を利用した高感度センサーと抗菌素材の創出
蛇足:僕はこう思ったッス
今、日本でも最もホットな事業創出シーンは、大学や企業の研究室または研究チームといってもいいだろう。世界規模の大きな可能性をもった技術や研究結果がゴロゴロ横たわっている。大きな問題は、それが出資者や事業化のプロの目に伝達されていない点。もしくは、桁違いの事業価値を理解できないか。日本の投資家は見向きもしていないが、残念ながら海外から直接出資を狙う動きは日に日に活発化している。