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ゴミ問題の解決に取り組むスタートアップ「ピリカ」は本日(2020年3月25日)、人体への摂取や環境への影響が多いとされるマイクロプラスチックを元とするプラスチック片の流出状況の2019年の調査結果について発表した。
調査は2019年6月より日本国内の河川・湾岸100か所で実施され、98か所でマイクロプラスチックが検出された。そこで解った流出量は、海洋汚染が進んでいるという発展途上国をしのぐボリュームだという。
なお、この2019年の調査データは本日(2020年3月25日)18時よりオープンデータとして公表する計画。
プラスチックの海洋流出問題の解明を目指す「アルバトロス」プロジェクトとは
マイクロプロスティックとよばれる小さなプラスチックは飲料水や食物を通して人体に取り込まれやすいとして問題とされている。プラスチックそのものは無害だが、体内に取り込まれた場合、有害となる物質が含まれている可能性があるからだ。
ゴミ問題を解決する取り組みを展開する「ピリカ」では、このプラスチック海洋流出問題を解決するには「どういった製品・用途のプラスチック」がどのように「流出するか」の実態解明のため、2016年よりプラスチックによる海洋汚染問題の実態解明を目的とした調査プロジェクト「アルバトロス」を開始している。
プラスチックの海洋流出の調査で従来行われていた船で網を引く方法では入れるエリアが一部であり、水路などより広範囲で調査できる手法が求められた。
そこで、株式会社ピリカでは、河川や港湾でも活用できる浮遊プラスチック採取専用の装置を開発。
この装置とプラスチック片の成分分析・特定までを一貫して行う調査手法を開発し、国連環境計画と一部共同展開などをして世界10か国、38か所の調査を実施したという。
この2018年調査で「人工芝」や「農業用の肥料で使われるカプセル」が海洋流出していることが判明している。
「アルバトロス」プロジェクトの進化、採取から特定まで
ピリカはこれまでの「アルバトロス」プロジェクトでの調査を踏まえ、2019年6月より調査を実施。調査ポイントは、前年度の約3倍にあたる100か所に拡大している。
内訳は関東(43か所)・関西(15か所)・中部(11か所)・北陸(11か所)・九州(10か所)・沖縄(10か所)で、市街地や農業地、都市部や郊外とさまざまなパターンを選択している。
なお、今回の調査は日本財団の「海と日本 PROJECT」の一環として一般社団法人ピリカを実施母体に、日本財団および「環境再生保全機構 地球環境基金」から助成を受けて実施ししている。
加えて、アドバイザーに東京理科大学 二瓶先生・東京工業大学 福原先生・ミヨシ プラスティック製品の鑑定などのサポートも得ている。
「アルバトロス」2019年度の調査で見えてきたもの
2019年度調査の結果として、98地点でマイクロプラスチックがみつかった。多かったのは75拠点で見つかった人工芝・プラスチックコーティング肥料・ペレット(プラスチック製品の中間材料)、そしてシート・ロープ類である。
特に、港湾部の角部などでは調査平均と比較して50倍以上高い1平米で100個以上のホットスポットが(東京湾では250以上のケースもあった)が発見されている。
こうしたプラスチックゴミは中国や東南アジアなどが多いイメージだが、日本はそれに匹敵するかそれ以上の流失が起こっていると考えられる。「日本のプラスチック使用量が多いということが原因として挙げられる」(ピリカ代表小嶌不二夫氏)という。
スポーツ施設の人工芝の87%がグラウンド外に漏れ出す事実
調査で採取したプラスチックのうち約70%が何に使われていたものかが判定できていない状況ではあるが、一方、「人工芝」が採取量の約14%を締めるということが2018年度の調査から解っている。
ピリカが今回「人工芝」に特化した調査も実施しているが、そこで解ったのは調査したスポーツ用途施設で調査ができた106か所のうち87%が人工芝がグラウンド外に漏れ出しているという事実だ。また、うち47%は深刻な流出が発生している。
下水処理場などの簡易処理をすり抜けるマイクロプラスチックのほとんどが河川や港湾にそのまま流れ込んでいると考えられるという。
ピリカ(=アイヌ語で「美しい」)が立ち向かう不可逆な問題
難しい世界的な社会問題に挑むピリカは2011年、京都大学の研究室で誕生した。ゴミを回収するSNSを展開し、これまでに世界100か国で1億個以上のごみを回収した実績を持つ。現在は、AIベースの画像認識技術を駆使したさまざまな展開を展開している。
創業者の小嶌不二夫氏は、このマイクロプラスチック流出は「不可逆、後戻りできない問題」と話す。
「地球規模で人口が増え、一人一人が豊かになることに従ってプラスティックの使用が増えてきている。消費量や流出量が指数関数的に増えてしまっている。
こうしたプラスチックが生態系へ流出し、生物が飲み込むことで窒息や餓死・怪我が起こっている。また、プランクトンのCO2吸収を阻害し気候変動への影響も懸念されている
ただ、これらが全て科学的に因果関係が充分証明されているわけではないが、予防原則に立ち活動を加速している。
この様な状況を見て、一般消費者に何ができるか?という問いもあるが、全ての人は消費者であり・有権者である」と説明している。
なぜなら、消費者はプラスチックを使っているお米を買う・買わないという判断ができる。それを見える形で発信すれば、企業も意識を向けると考えている。
今回のマイクロプラスチック調査で、流出が判明したのは各自治体が管轄する施設が圧倒的に多いということもあり、その対策を住民一人一人が求めれば変わると考えている」(小嶌氏)。
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今後、ピリカは、流出メカニズムを明らかにするだけでなく、今回の取り組みで得られた手法や機材の提供を通じて、地方自治体やNPO、環境調査会社会社が調査をしやすい体制を構築。企業や業界との問題解決に向けた連携も視野に入れ活動していく考えだ。
【関連URL】
・[公式] 社団法人ピリカ