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2万人の研究者がひしめく北関東・茨城県つくば市で2019年12月12日、筑波大学の起業家育成講座「筑波クリエイティブ・キャンプ・アドバンスト」の起業プラン発表会が開催されました。
この講座は筑波大学の卒業生で客員教授でもあるC CHANNEL 代表取締役社長 森川亮氏や、ベンチャーキャピタリストのD4V(Design for Ventures)伊藤健吾氏が講義を担当し、3か月6回の講義に加え、複数回にわたるメンタリングなどを経て、コンテスト形式のビジネスプラン発表会に挑むというものです。
「筑波クリエイティブ・キャンプ」とは
筑波クリエイティブ・キャンプは、筑波大学の授業として開講している起業家育成プログラム。グローバル人材の育成を目的に、産業界から筑波大学卒業生を中心とした講師を招いて展開する科目を集めた「未来構想大学講座」の一つとして展開。入門編と発展編の2科目が提供されており、いずれも1単位を取得できるというもの。
筑波大学は、この起業家育成の取り組みを教員にも展開しており、分野横断チームの研究などに報償などを用意するほか、産業貢献の取り組みを数多く準備している。また、つくば市も2019年10月、新たなコワーキングスペース「つくばスタートアップパーク」を開設。海外のコワーキングスペースなどとの連携の準備も進めている。
審査員はVSと筑波大OBで構成
発表会は以下の審査員によるレビューが行われる。
・伊藤健吾
D4V Founder & Chief Operating Officer/01STUDIO(株)代表取締役社長
・成瀬拓也(筑波大学卒業)
筑波大学 客員教授/株式会社ウィルフォワード 代表取締役
・上村崇
epiST株式会社 代表取締役社長/CEO
・加藤雅之
株式会社 軽子坂パートナーズ 代表取締役
・中西弘士
合同会社パックス・パートナーズ 代表社員
事業プランサマリー&蛇足レビュー
今回発表されたのは4チーム。サマリーと簡単なレビューをお伝えする。
・Traveluck ~海外旅行計画をストレスフリーにする
楽しいはずの海外旅行の予定を組む時間は約10時間。そこで最も手間がかかる「友人との調整」・「予定を生む」・「行き先を調べる」といった重要タスクををLINEチャットを使って短縮する。日程や予算、観光スポットを指定した上で、旅行計画を自動で提示する。海外旅行に行く日本人は役2000万人。ターゲットとする20~30代は3分の1で増加中。収益はアフィリエイトと広告。
メンバーは筑波大学情報科学類1年 今村翔太氏、筑波大学国際総合学類5年 福井香帆氏、社会工学類1年 糸日谷凜氏、開発パートナー(非受講者)に情報メディア創生学類1年大渕雄生氏。
蛇足)
国内旅行や放浪の旅などプラン選定がそれほど負担が大きくない部分にフォーカスを絞ったシンプルなプラン。ニーズは一定量あると思うが、実際の事業を成長させるにはノウハウとリソースが必要になる可能性も。
・恋愛♥CoacH ~スマホ恋愛相談マッチングサービス
恋愛に悩んだことがある人に対するサービス。友人などにも話せないような恋愛の悩みを相談して客観的できる。利用はスマートフォンアプリから。相談に乗る人は一般の人。ポイントを購入して相談したいコーチに依頼をする。一般のコーチはいるか?という問題について調査をしてみると相談に乗りたいという人が多い。コーチには初回60%、それ以降は85%のコミッションが入る。顧客獲得には広告に加えコーチによるPR活動を想定する。
蛇足)
審査員などから個人情報の扱いおよび、犯罪抑制の質問が相次いだ。事業のキモが「安心感を与えられる一般人」という漠然としたイメージに依存しており、本人の資質にほとんど関係ない部分で不正利用されるのでは?という懸念があった。確かに、言葉が上手い人につられてしまう危険は感じた。
・Lavid ~真にオープンアクセス可能な論文掲載プラットフォーム
コンピュータサイエンティスト向けの論文掲載・参照プラットフォーム。GitHubの世界観を論文に摘要。掲載だけで手数料を取る媒体や、そもそも閲覧する有料の媒体があり、自由闊達な論文参照・引用が難しい。そこで数百万本の論文を無料で参照できるようする。基本無料だが、Issueの立ち上げやブックマーク、逆リファレンス、論文内容の分析レポートなどの機能が使えるプレミアムサービスが月額500円。
チームは代表取締役CEO 立野温氏(筑波大学生命環境学群)、取締役CTO 座間謙伍氏(筑波大学理工学群)
蛇足)
論文掲載メディアをめぐる議論が噴出。旧来型のメディアへの掲載に固執する意見も多い。それは論文に限らず、ニュースメディアでもある話。強気の主張がそのまま事業の強みになったらおもしろいと思った。
・UPTREND ~学生向け投資情報&教育プラットフォーム
より早期に投資活動を行うために、学生向けの投資教育を行うサービス。ニュース配信やコミュニティ機能の提供に加え、有料の講座や質疑対応を展開し、そのコーチは報酬を受け取れる。集客は大学でのセミナーや個人による招待とブロガー&YouTuberへのパブリシティ。投資ゲームなどのコンテンツも追加する。
チームは海外生まれが主体。Crestere代表 KAHO TSANG氏(筑波大学国際総合学部3年)、TAKUYA MORI氏(筑波大学国際総合学部3年)、TSUKUMO KONDO氏(
蛇足)
投資開始が出遅れている日本の学生性に、より早期に投資を促すという理想的なミッションではるけれど、サービス自体は何十年も前からあるようなものばかりなのが惜しい。また、会場からはなぜお金のない学生に?という質問が相次いだ。理念からサービスへの落とし込みに課題がありそう。
審査結果とまとめ
全チームにさまざまな賞が授与される流れの中で、最終的に論文掲載プラットフォーム「Lavid」のチームが最優秀賞となった。
この発表イベントには、都市を上げて起業家育成にコミットしている福岡市および九州大学の学生らも参加し交流を深めた。地域を横断した学術機関を主体とした起業家育成の波は今後、おおきなうねりとなる期待を感じた。
【関連URL】
・[公式] 「筑波クリエイティブ・キャンプ」とは | 筑波大学 国際産学連携本部