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2017年3月末、栃木県那須町湯本の「那須温泉ファミリースキー場」で登山の講習会に参加していた県立大田原高校の16~17歳の男子生徒7人と男性教員1人が亡くなった事故は本当に痛ましいものでした。のちの報道で、位置情報を知らせるビーコンを所有していないことが明らかになっていますが、仮にスマホを携帯していたらどうったでしょうか(栃木県の高校は、所有はOKでも校内での使用がNGのところが多くおそらく講習会も不携帯と思われます。そもそもあのスキー場付近は電波が届きにくい状態です)。
そんな雪山の遭難者の迅速な救助を目的に、ドローンや気球を使った無線中継システムを活用した遭難者特定方法の調査が行われました。この内容はソフトバンクがが総務省北海道総合通信局から2016年8月に受託した「携帯・スマホ等を活用した遭難者の位置特定に関する調査検討」事業による実証実験の結果によるものです。
この実証実験では、ドローンや気球を、臨時無線中継システムとして遭難されたと思われるエリアに飛ばすことで、スマートフォンや携帯電話から位置情報を取得できるかを検証しています。
スマートフォンがGPS(衛星)から取得したデータを得るには、スマートフォンにアクセスしないといけませんが、雪が深いと電波を得にくく正常な通信が行えない可能性があります。そこで、直接臨時無線中継システムを浮かべ雪に埋もれたスマートフォンや携帯電話との通信距離を短くすることで、通信を可能にしています。
特に、遭難者の真上に中継器を置くことで雪の中まで電波を深く届かせることができる可能性があり、それを含めた仮説を検証しています。
実験は、北海道虻田郡倶知安町のスキー場において行われましたが、高度約100メートルに浮揚させた気球無線中継システムとドローン無線中継システムを併用し、約4メートルの深さに埋もれた携帯電話・スマートフォンの位置を特定できたそうです。この実験では、雪の中での通信特性や、中継器の位置などとの関係も明らかになっており、雪山遭難者特定への有効な方法として道が開けることになりそうです。
なお、気球は係留するタイプで、設置運用まで2~3時間がかかるとのことですが、ドローンであれば現地到着から20分以内で運用できるとのことです。ソフトバンクはこの係留型の気球無線中継システムを2013年から全国の主要拠点に配備しているとのことで、ドローンを含めた運用まで拡大すれば人命救助に大きく貢献できる可能性があります。
【関連URL】
・気球・ドローン無線中継システムを活用した雪山での遭難者位置特定、調査検討結果について
http://www.softbank.jp/corp/group/sbm/news/press/2017/20170522_01/
・携帯・スマホ等を活用した遭難者の位置特定に関する調査検討の結果(総務省ウェブサイト)
http://www.soumu.go.jp/soutsu/hokkaido/R/20170330r.html
少なくとも栃木県では、ソーシャルメディア上などでの事件が多発することなどを受け、小中高でのスマホの使用や持ち込みはかなり厳しく制限されています。ただ、何らかの事件が起こったとき、GPSが行方を明らかにする強力な道具になるのはわかっています。ただ、なにぶんスマホではできることが多すぎてしまう。おそらく「ビーサイズの見守りGPSデバイス」あたりが適切なのだと思うのですが、いずれにせよ雪の中で電波を得るのは難しいわけでした。娯楽やお金稼ぎより大切なことがこの事件の中にいくつもあるように思いました。このような悲しい事件が二度と起こりませんように。心からお悔やみ申しあげます。