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ロンブー田村淳 氏がサービス開発に人生を賭ける理由

田村淳 氏

人気コンビ「ロンドンブーツ1号2号」の田村淳さんが、芸能界という枠を超えてクラウドファンディングサイトCAMPFIREで新しいプロジェクトを立ち上げようとしています。その名も「クラウド遺言サービス『itakoto』」。意外にも死と向き合うためのサービスでした。

プロジェクトの支援者募集期限は残り9日。「一緒につくり上げる仲間を集いたい」という田村淳さんに話を伺いました。

故人からのメッセージ

TechWave 増田:

クラウドファンディングのページでは秋田県の恐山のイタコと出会いや、お子さんが生まれたことによる人生観の変容などがきっかけでこの「itakoto」というサービスを考えたと説明されていますが、亡くなられた方と残された方を結ぶためのサービスという理解でいいのでしょうか?

ロンブー 田村淳 氏:

現時点のアイディアですが、具体的にitakotoサービスを登録してもらった人は、臓器提供カードのような「itakotoカード」をもってもらい、亡くなった時に「あ、お父さん、メッセージ残してる」ということがわかるようになっていて、カードに描かれたパスワードでその内容(動画)を観ることができるというアイディアがベースになってます。

メッセージは、死んですぐなのか、1週間後なのか、故人が指定したタイミングで送ることができるようになっています。そうしたメッセージのやりとりによって、故人とよりきちんとお別れすることができればというサービスです。

基本は1対1のメッセージを保存して、日時指定で相手に送るようなサービス構造ですが、許可さえ得られれば、不特定多数に流してもいいかなと思っています。

TechWave 増田:

故人が残すメッセージというと遺言を思い浮かべるのですが、そういった法的にどうこうといったものとは違う存在価値を求められてるんでしょうか。

ロンブー 田村淳 氏:

臓器提供カードの意思表示と、itakotoによって届けられる肉声での意思表示では意味合いが違うと思っています。itakotoの法的効果がどうなるかわかりませんが、今のところ故人が

「死んだときに心配するな、こういう風に考えているから」とか
「行き詰まった時は、こうしなさい」とか

残った人に、単純に残したいメッセージを残すことができるようなサービスにしたいと思っています。

田村淳さんが残したいメッセージ

TechWave 増田:

次の残り人たちに自分の意思を継承したいという思いは誰にでもあると思うのですが、このサービスもそういう思いがベースになっているのですか?

ロンブー 田村淳 氏:

単純に、じゃあ・・・
僕が死にました。嫁は泣き崩れると思うんですよ。

私はお墓の前にはいません、といった歌のような概念て、全員にいっているようなメッセージで曖昧じゃないですか

そうじゃなくて、もっと、嫁は泣いていると思うけど、俺は人生を全うできてすごい幸せな人生だったから、この後は自分の人生を大切生きてくれ、時々俺のことを思い出してくれればいいから、1年後またメッセージ送るね。

というメッセージを節目節目で送ることができれば、今を生きる人の人生の糧となるとか、明日を生きようと思う力に変わってくれたらベストかなと思うんです。

TechWave 増田:

だからメッセージを一気に渡すのではなくて、時限発行の仕組みがあるんですね

ロンブー 田村淳 氏:

そうそう、よくいわれるんですけど、自分のスマホに保存しておけばいいじゃん、って。

けど、それって死んだ直後に見ちゃったら・・・

本当に届けたいメッセージ、メッセージってどのタイミングで届けるかってすごく重要かなと思っていて、それを新しい技術で伝えられるようになると一番僕が考えた理想に近づくんじゃないかと思うんです。

TechWave 増田:

ただ、今回のクラウドファンディングでは何十年も届け続けるには額が少ないですね。

ロンブー 田村淳 氏:

今回の募集金額はプロジェクトが成立する最低ラインが1000万円、目標として2000万円になっています。

ただ、これで完成形をつくるのではなくて、あくまでリリースしたときはスタート地点
なんですね。まずはこのクラウドファンディングキャンペーンを通じてアイディアを集めながら、メッセージを保存して日時指定で届けられるという最低限必要な機能をもったサービスを創り上げるということです。

時を超え心をつなぐ「イタコ」

TechWave 増田:

イタコさんとの出会いが、今回の「itakoto」に大きく影響しているとのことですが、どういったことがきっかけになったんでしょうか。

ロンブー :

実際に、番組の収録でやりとりをみたのは、大原麗子さんの弟さんだったんですが、なんで死んじゃったの、急に死んじゃったけど何がいいたかったの?といったやりとりをしているんです、死ぬつもりはなかったけど急に、今は痛くないから心配しないでといった。

そこで大原麗子さんと弟さんしか分からないやりとりがあったんですね、お父さんと仲が悪かったのが苦しかったといった内容で、ただ、その二人にしかわからないやりとりで大原麗子さんは腑に落ちたとおっしゃられてたんです。

TechWave 増田:

あの時、あの瞬間をお二人が思い出して心を通じ合ったんですね。
これが「itakoto」のサービスにある時限発行型のメッセージの原点になっているんですね。

ロンブー :

そうそう。
大原麗子さんは実際、弟さん生前は事情があって亡くなる前にそういったことを直接話せなかったんですよね。

死んだ後だから耳を傾けられる、死んだ人だから思いを傾けられる。
すごい死を厳格化しようと思っていなくて、なにか、お父さんどんなんだったかなーと気軽に聴けるだけでもいいように思うんですね。

ロンブー 田村淳 氏:

イタコさんとのやりとりについては、Q&Aみたいな情報を蓄積できるようなことができたらなとは思っています。

お父さんに「死んだ後こんなことを聴きたい」というったリクエストを事前に集められてたら、死語にその答えを聞けるようなことがいずれできるのではないかと。

TechWave 増田:

そういったやりとりが多く蓄積できるのであれば、死後にAIボットを創るなんてこともできますね。

ロンブー :

ただ味気ないですね。AIは否定しないですけど、ハートの部分が薄れてしまいますね。

TechWave 増田:

なるほど。今回は、β版からがスタートになるということですが、ユーザーさんや支援者はアイディアをどんどん言えて、それを吸収しながら作り上げていく仕組みになっているんでしょうか。

新しいものを考えて生み出す

ロンブー :

今はTwitterだけですが、CAMPFIREでは5万円以上の支援者は週一で展開している企画会議に参加できるようなリターンを準備しています。

どかんとお金を集めて、潤沢な資金があることも重要ですが、まずはこのアイディア段階から注目してくれる人が増えてくれたという事実を大切にしていきたいんです。

自分はこれでお金もうけをしようとは思ってなくて、
仕事は別にしているから生活はまあ担保委できている

お金儲けーというよりはこんなサービスがあったらいいと思うし、そんな思いを共にできる人たちとプロジェクトを立ち上げて新しいことをつくろうとするこの物語に参加して欲しいという気持ちが強くて。

だから、テレビのディレクターにはいってもらって、サービスを考えて、世に出すための物語をずっと収録してもらっていて、いつの日か、みんなで創ったサービスが動画になりました、映画になりましたといったことをやりたいなと思ってるんです。

TechWave 増田:

結構壮大ですね。ちゃんとマス層にまで浸透させたいとう強い思いがありそうですね。

ロンブー :

はい。またモラルがないとか言われそうですけど、実際に老人ホームにいって、おじいちゃん、おばあちゃんに、直接、近い将来死にます。大切な人たちに、何月何日にどんなメッセージを伝えたいか録画してくださいっていう講習会をやろうと思うんですね。

死を認識意識しつつ、PCやスマホもある程度使えたりITについてもちょっと知識があるような人に講演をやりたいと思います。

TechWave 増田:

遺言、といってしまうと敷居が高そうですが、例えば「まごチャンネル」(元アップルの梶原氏が狙う“IoT越え”の新サービス「まごチャンネル」 【@maskin】)というサービスがあって、気軽にスマホから写真をおじいちゃん・おばあちゃんに届けられるサービスがあるんですけど、そういったなるべく手がかからない方向もできそうですね。

ロンブー :

そういったカジュアルさは必要ですね。「おまえに言いたいことがある」みたいな重い感じにはしたくないですね。

まごチャンネルつかってます。あれだと、ポコポコポコポコ、写真を撮影した途端に届けられちゃうと思うんですが、「itakoto」の場合は、誕生日だとか結婚記念日だとかに時限送信されるようにしたいですね。

TechWave 増田:

淳さんの中で今回のプロジェクトのゴールはどう設定されてるんでしょうか?

ロンブー :

死者待ち、みたいで不謹慎ですけど、
現時点では死んだ人がメッセージを伝えられて、それを受け止める人がでてくる、それがまずはそれが一歩かなと思います。

自分の周りでの死は、おじいちゃん、おばあちゃんしかいないんです。

仮におじいちゃん、おばあちゃんから
「安らかに眠ってまーす」
「胃の調子は悪いっていってたけど、検査いけよ」
なんてカジュアルなことでもいわれたら、俺は泣くなと思うんです。

そのストーリーが一通り成立して、やりとが続けることができ、残された人と個人とか感情を交わすことができたらまず一つのゴールになると思います。

そのときは、番組で「itakoto」経験者のコメントを伝えたいと思いますね。

これらのメッセージ今を生きる人がで辛くなっちゃうんじゃ、れですけど。
ポーンと背中を押してくれることで気が楽になって元気になるとか、死者に対してのイメージも変わるといいなと思うんです。

(了)

今回の「itakoto」を開発するシュタインズ社と田村さん。このプロジェクトのためにマーベリックスという組織も立ち上げているとのこと

【関連URL】
・【田村淳プロデュース】クラウド遺言サービス『itakoto』をリリースしたい!
https://camp-fire.jp/projects/view/36449

蛇足:僕はこう思ったッス
 私的な話だが、この数年で仲間や恩師など複数の人と永遠の別れをすることになった。彼ら彼女らとの思い出の場所に立つ度に、あのとき交わした約束や思い出がフラッシュバックしてくる。こうした話に淳さんはGPS連動のアイディアを出すなどどんどん企画が詰まっていく印象。淳さんは、IT業界のおもしろさに注目しており、個人として企業への投資や、こうした芸能分野とは違う領域へのチャレンジを続けている。あくまで一つのプロジェクトではあると思うが、田村さんの人生観がどっぷり投入された内容だと感じている。
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