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高度化するドローン産業、リモート計測から非GPSまで ジャパン・ドローン 2017レポート

無人機ドローンの商業利用をテーマとした展示会およびカンファレンスイベント「ジャパン・ドローン 2017」が2017年3月23日から3月25日にかけて千葉県の幕張メッセで開催されました。

主催は2014年7月に設立された一般社団法人日本UAS産業振興協議会(略称JUIDA:Japan UAS Industrial Development Association)、イベント事業者コングレおよびスペースメディアジャパン3社共催という形です。参加企業社数は122社。JUIDAが認定するドローンスクールやテストフィールド、ドローン専門メディアなども出展していました。

撮影・計測・施工、そして物流

「ジャパン・ドローン 2017」を一言で統括すれば “ドローン産業利用本格化の幕開け”ということになります。ドローン機体マーケットリーダー「DJI」が最新機種「Inspire 2」を筆頭に、産業用の「MATRICE 600 Pro」、自然環境調査や点検用ドローン「DJI Zenmuse XT」や農業用「DJI Agras MG-1」といったモデルを揃えてきたのをはじめ、各社がセンサーやカメラ、配信ソリューション、計測データ分析システムなどを展示しました。

Inspire 2のデモには常に人だかりが
産業用・農業用ドローンが並ぶDJIブース

産業的的には大きく「物流」・「計測」・「農業」の3カテゴリーに別れています。物流については。最も進化が進んでいるのは「計測」の領域です。「農業」は農薬散布対応機などが複数展示されていましたが、計測の分野に包括される部分もあります。「物流」については、規制やルート確保などへの対応が待たれるという印象でそれほど多くの展示があるわけではありません。そのようなことからも全体を通じて自律飛行やドローン飛行管制が強く求められていると感じました(楽天がドローン管制事業に参入、米AirMap社と合弁会社を設立)。

エンルート社の物流想定モデル

高度化するリモート計測分野

「ジャパン・ドローン 2017」の主役は「計測」といっても過言ではないでしょう。アメリカ産のレーザーセンサー(LiDAR=Laser Imaging Detection and Ranging)などを活用し、より高精細な地理データの取得が可能になっています。また、シネマカメラや8K映像伝送技術などとあわせて、リモートでの送電網や橋・風雨力発電施設・高速道路などの施設の観測や森林や渓谷・都市環境・農地・森林・建設現場などのマッピングなど実用段階に入ったことを実感できます。

レーザースキャナを搭載した計測パッケージ「TDOT」。機体はDJI MATRICE 600 Pro

ドローンで計測した点群データから建設計画業務に使える3D/4Dデータを作成できるGIS(地理情報システム)ソフトウェア「ScanSurveyZ」(ビィーシステム)。建築現場ではすでに導入されつつあるとのこと。

有線ドローン「PARC」(田中電気)。電力供給が可能。定点観測に適している。

農業分野は実用段階へ

ドローンの農業活用のポイントは、リモートセンシングと農薬散布の2つに分けられます。会場には農薬散布可能なドローンが複数展示されていました。

DJI社製・Agras MG-1

ASCL社製・オリジナルのカスタマイズ可能な農薬散布用のドローン

植物の生育状況を把握できるマルチスペクトルカメラを搭載したドローン

VRとドローン

計測範囲が広範に渡ると目視での操縦は不可能になります。よりリアルにその場の状況を把握するためにVRを活用するアイディアにも注目が集まりました。

5キロ離れた場所から360視野で操縦できるiRoboticsの展示

リアルタイムではなく、測量データから作成した3DモデルをVRでブラウズする用途もニーズがありそうです。人の足では行けない場所をドローンで計測し観測するなどの用途です。測量データに建造物などを加えて加工して、建築計画後の内容を確認するなどの用途も可能とのことでした。

フォーラムエイトのドローンxVR

安全性を確保するために

産業用ドローンはホビー用などと比較すると筐体も大きく墜落時の危険性が高い傾向にあります。より安全に航行するために通信や墜落時対応、より精密な動作を実現するための多様な取り組みが展開されていました。

ドローン墜落時に自動で開くエアバッグ

海釣り用リールを応用した製品「ミヤ・リードロン」・ドローンの紛失を防止し安定性を担保する

ドローンの通信環境を整備するために「セキュアドローン協議会」が活動を開始していますし、トラブル時の操作状況を分析するための小型のフライトレコーダーなども登場しています。

JAXA承認基盤技術を使用したフライトレコーダー(イージステクノロジーズ)。実際に宇宙産業で使われているものを転用

高度化するドローン

ドローンの軽量化や航行時間延長などに貢献するさまざまな取り組みも展示されていました。

ドローンに最適化されたプロペラ(先端力学シミュレーション研究所)

ファソテック社・アルミ相当の強度と軽量さを持つカーボンファイバーでドローンの部品を3Dプリント

ドローンでの使用を目的としたCNT燃料電池

非GPSと屋内利用という流れ

産業利用シーンでは屋内やトンネルの中、地下などでドローンを利用するニーズがあり、それを実現するための非GPS運行のソリューションも展示されていました。ドローンソリューションを多数展開するブルーイノベーションでは「インドアフライトシステム」を展開し、下水管点検用ドローンシステム、物流倉庫用ポートシステムを開発しています。ジツタ社は、土地測量の技術を組み合わせて非GPS環境での精密ドローン誘導および計測システムを展示していました。

ジツタ社の非GPS誘導。測量用のプリズムをドローンに装着

土地軽量用のシステムと連携してドローンを精密誘導

先ほど「iRobotics」のVRリアルタイムモニタの展示を紹介しましたが、機体を目視しながら、ウェアラブルモニタ。「VUFINE(ビューファイン)」でセンサーなどの情報を確認する方法にも注目が集まりました。農薬散布のシステムを応用した、壁面補修スプレー散布などにも活用できそうです。

。「VUFINE(ビューファイン)」を使用した操縦デモ

非GPS/室内利用として異色だったのがセキュリティ用ドローン。屋外セキュリティとして人感センサーを搭載するドローンの例はあったのですが、オフィス内での巡回飛行のみならず社員の残業抑制につながるとしたのが「T-FREND」。映像はクラウドに保存される仕組みです。

オフィス巡回システムドローン「T-FREND」

まとめ、自律飛行と管制

これだけのドローン応用プロダクトが揃うと、人の操作ではなく自律飛行が求められそうです。また、飛行ルートを整理するドローン航行管制も不可欠です。このイベントではカンファレンスの方で管制やドローンソリューションをテーマとしたいくつかのパネルセッションが行われていましたが、今後の焦点となるのは間違いなさそうです。

完全自律飛行を目指すV-CUBEが提供する離着陸ポート。周辺気象状況観測データ収取から給電、データ蓄積まで全て自動でおこなれる。設置すれば完全自動でドローン運用が可能となる

【関連URL】
・ジャパン・ドローン 2017 / Japan Drone 2017
http://japan-drone.com

蛇足:僕はこう思ったッス
 実に幅広い業界業種がドローンを軸に集まってきていると感じた。課題はソフトウェアとソリューション。果たして欧米型のソフトが人口密度の高い日本に適用できるかが焦点。ソフトに弱い日本だが、アイディアは多数集まっているわけで、これを価値にかえられる企業やスタートアップの登場が期待される。実はテラモーターズグループの「テラドローン」がフォーカスしているのはまさにこの領域だったりする。
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