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日本人チームによる指輪型インターフェイス「Ring」が2014年10月9日、北米から出荷を開始している。価格は269.99ドル。
Ringは、複数のセンサーを搭載し、BluetoothでiPhoneや他デバイスと通信する仕組み。指にはめてジェスチャーをすることで、その動きを読み取り各種デバイスへと送信する。ジェスチャーをカスタマイズできるアプリなどもすでに発表されている。
デモムービーの完成度の高さなどから話題となり、米クラウドファンディング大手KickStarterでのキャンペーンは、開始1日半で25万ドルを達成。最終的には獲得金額88万ドルとなった。
ところが、デザイン変更や予定されていた出荷タイミングの若干のずれから不安視する声が続出。完成をあやぶむ記事なども出てくるなど、混乱する中での出荷開始となった。発表からちょうど1年での成果だった。
プロトタイプから見る進化と伝説の始まり
こちらはRingのプロトタイプから製品版への変遷を並べた写真。およそ10か月程度の開発期間での流れとなる。
実は、昨年2013年11月、米カリフォルニア州 サンマテオで開催されたDraper Nexux主催の投資家向けのプレゼンテーションイベントで、Ringプロトタイプの初となるデモを取材しているのだが、この段階では無線通信は実現できておらず、センサーのデータを画面に表示するレベル。
(デモをする株式会社ログバー代表 吉田卓郎 氏。おそらくプロトタイプマーク2と見られる)
(Ringに内蔵された6軸センサー&加速度センサーのデータを表示するデモ)
いくらRing型パッケージとなっているとはいえ、有線でセンサーのデータを取得して表示するだけなら初心者でもできる。デモを準備する周辺からも不安視する声が見え隠れしていたが、実際のデモは大成功。その会での優勝を勝ち取った。
今後スタートするRingの伝説はここから始まったといっても過言ではないだろう。
業界の後押し
Ringというデバイスの焦点は3つに分割される。
ひとつは「未来像」、「パッケージング」、そして「ソフトウェア」だ。
どんなハイエンドが技術があったとしても、C向け製品である以上ユーザーとして輝かしい未来が描けなければプロダクトに価値が帯びにくい。その点、Ringは大成功を収めた。吉田氏は、夢の描き方を心得ていた。
もう一つはパッケージングだ。Ringはハードウェア的な技術革新ではなく、iPhoneといったスマートデバイスや既存技術の組み合わせによる、一種のソリューションとしての強みを持つプロダクトだ。ただ、どんな形状でも成功するかというとそうではなく、指輪という体を成すからこそ、今後到来するIT利用のコンテキストの中心に居を構えることができるようになる。
しかも、時計はスマートウォッチとして激戦区になりつつある。スタートアップでそこに飛び込むのは危険がある。だからこそ、デザイン変更でちょっと不細工になったとしても指輪にこだわり続けることは妥当だといえる。
問題は、センサーと通信ユニット、バイブレーター、電池、メモリーという機能的要素が指輪の中にきちんと収まるかという点だ。チップ設計から手がけられる体力のある会社ならともかく、外部パートナーがなくては成立しないログバーにとってとても大きな障壁があったに違いない。
ところが、ICチップ業界はウェアラブル向け製品にフォーカスし始めており、国内でも村田製作所やTDKといった多数のメーカーが対応ラインナップを拡充していた。ウェアラブルを必要な部品が搭載されたソリューションでも数ミリ四方のものが出荷されており、ハウジング(指輪に収めるケールや基盤などの組み合わせ)さえうまくいけば製品として成立する流れが強まってきた。
ログバー代表 吉田氏は、こう振り返る「チップがどんどん小さくなっている流れが小型化にとても貢献しました。それとiPhoneや周辺機器などブルートゥース関連デバイスの普及が大きいです。それと、チップメーカーの丁寧なサポートがスタートアップにとっては後押しとなりました」。
また、ハードウェアの生産拠点としては中国や台湾などが話題にあがることが多いが、一定の品質を担保するにはリスクがある状態。Ringの場合、日本国内での生産パートナーを獲得しているためその点はひとまずクリアしているとようだ。
試金石
Ringの焦点、最後は「ソフトウェア」だ。
これはデバイスドライバーやジェスチャー認識アプリの品質がどうこうという範囲にとどまらない。
すでに北米ではウェアラブルにおけるコンテキストという表現があるが、人に至近なI/Oデバイスが、アプリやウェブ、各種サービスとの連携により長らく続いてきたプッシュ&リコメンド型のコンピューティングではなくインプットとアウトプットのバランスが高度化された時代が到来するようになると考えられている。
Ringの入口はジェスチャーで、指で描いた文字を認識するような機能をも提示している。指だけで機器のコントロールができることはなんて快適だろうとは思うが、これが「デバイスの前に立ってペアリング作業をして、2秒待ってから、、、」みたいな流れであったらプロダクトビジョンが台無しだ。
つまりここでいうソフトウェアというのは、夢を具現化するコンテキストを網羅する高次元のソフトウェアのことを指しており、Ringにおいてはその完成度が今後の成長の試金石になると考えられるのだ。
【関連URL】
・Ring
http://logbar.jp/ring/en/
・指一本で操作、日本発「Ring」型ジェスチャーデバイスが登場 【@maskin】
http://techwave.jp/archives/logbar_ring_will_arrive.html
Ring
が採用した通信チップはNordic Semiconductorのもの。例のMoffも同じ会社のものを使用していた。この会社は他社にはないニッチ製品を投下することで知られているが、吉田氏が言うとおりサポート力にも魅力があるようだ。チップメーカーがスタートアップを支援するなんて、一昔前では考えられなかったことで、その一面を切り取るだけでも潮流の変化と業界の変容の意義は大きい。