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イーサリアム共同創設者 Joseph Lubin氏が語る、その威力と新規ビジネスの可能性 #RISEConf

RISE2018イベントレポート
今アジアで一番熱いテクノロジーカンファレンス、「RISE」が2018年7月9日~13日にかけて香港で開催されました。ウェブサミットグループのイベントで一番の成長率を誇っています。
スタートアップや企業のイノベーションをリードするエクゼクティブが集結するこのイベントは、日本からの参加も徐々に増えています。TechWaveでは昨年に引き続き特派員を派遣し、ここでしか読めない特別レポートをお届けします!

イーサリアムの威力と新規ビジネスモデルの可能性

Co-Founder of Ethereum, ConsenSys Joseph Lubin氏・Twitterより

ブロックチェーン、フィンテック、セキュリティというキーワードが目立った今年のRISE。

日本でも各所で取り上げられていますが、金融というイメージをお持ちの方もまだ多いのではないでしょうか。このプレゼンテーションでは、イーサリアムの共同創始者である同氏が「Me, myself and Ethereum」というテーマでブロックチェーンの可能性について語りました。

インターネットの崩壊 〜

これまで我々人類は、数千年の時を経て多くの技術を開発してきました。金融、法律、医療、会計、保険、機械、情報など実に様々です。現段階では、これらは誰かが決めた規律にのっとってコントロールされています。ブロックチェーンというのはこの構造を変えさらに強力なコネクションを生むものになることと僕は予測しています。これからの時代は、マニュアル作業の信用より、オートメーションによって保障されたものを信用するようになっていきます。

インターネットは素晴らしいですが、セキュリティの観点からみるとすでに崩壊しています。インターネットのセキュリティはハッカーやウイルスとのイタチごっこの過程でパッチワークのように構築されてきました。根本的な構造に欠陥があるのです。ブロックチェーンは、ネットワーク構築の時点で強固なセキュリティが実現されています。これからのビジネスの現場では、ブロックチェーンを使い全ての取引が暗号化され信用性の高いものになり、これまでのファイヤーフォールで囲ったような既存のITセキュリティはなくなると思います。

個人情報の保護という観点からみてもインターネットは理想的ではありません。そもそも個人のアイデンティティという定義がインターネット上では確率されていないうえに、今はまだ多くの企業がそれぞれに顧客の様々な情報を持っていて、1か所で管理をしています。そこが何らかの形でアタックされると、簡単に個人情報が漏洩してしまうという弱体性があります。

ブロックチェーンでは、そういう意味では世界初の長期的で持続可能なデータベースであるといえます。自己証明型身分証明という、自分自身でコントロールできるものです。自分の情報やコミュニケーション内容を暗号化したりすることが可能です。この技術はいくつかの企業によって構築されています。そのひとつがuPortです。

uPortは、アプリで簡単にID管理ができるというサービスです。ブラジルやスイスではすでに実用化されていて、政府機関の情報にアクセスする際などに使われています。最近でuPortを使って選挙もできるなど幅は広がっています。

誰もが直接つながれる世界

ブロックチェーンの信頼されている理由のひとつに、ブロックチェーン上のデータはどれも詳細履歴を確認することが可能で、誰かが不正に書き換えたりすることが構造上できないという点があります。
パワフルなセキュリティシステムと、高い信頼性を持ちえ、さらに非中央集権的なコミュニケーションを取ることができます。これが何を可能にするかというと、「だれもが直接つながれる」世界です。ビジネスにおいて仲介は決して悪いことではありませんが、仲介することによって仲介コストが発生します。仲介が存在する世界では、「対価」は「本来の対価―仲介料」であって、「対価+α」ではありません。

ブロックチェーンでは、サービスを受けたり、取引をするのに仲介が必要がないため、コンテントクリエイター、リソースプロバイダー、サービスプロバイダーにとって最適な環境になります。

例えば、Ujomusicという楽曲ライセンスなどの販売から支払いまでリアルタイムで行うことができるサービスがあります。アーティストは楽曲提供をダイレクトに行うことができるので、これまでのように売上の7割を音楽レーベルに支払う必要もありません。その分聴衆へのコスト負担を下げ、楽曲をもっと提供しやすくなります。

メディア界でもブロックチェーンは活用されています。Civilという信頼性のあるリアルニュースを提供するネットワークがありますが、ここではジャーナリストがフェイクニュースや盗用の可能性があるコンテンツをアップロードすると、信用レートが下がっていき最悪の場合にはネットワークから追放される仕組みになっています。他にも、Bounties.networkという異なったスキルの人が集まりプロジェクトを一緒に行うことができるようなサービスもあります。

ブロックチェーンは、サービスだけでなくリソースへのアクセスも簡単になります。エネルギーや天然資源の取引にもブロックチェーンを活用できますし、データのストレージとしても使用することができます。

ブロックチェーンのビックウェーブはいつ来るのか

ブロックチェーンによる革新はもう起こっています。トークン化、ディセントラリゼーションされた取引、IoTデータプロトコルなどすでに市場に存在するものはたくさんあります。これらの要素は、多くのスペシャリストによって複雑に組み合わされ新しい技術となっています。これは、将来的には一つの大きなコンピューターに近い働きをするようになると僕は考えています。

インターネット(www)はもともとはディセントラリゼーションモデルで構築されていました。ですが、その変革がもたらした富により、ネットワークが独占され中央集権的になったのです。そうなった理由は、インターネットにはもともと”Shared Ownership”というネットワーク上の誰もがその者の主であるという概念が欠けていたのです。

音楽業界の例をあげますが、アーティストがツアーを企画しそのツアー運営権をこうしたディセントラリゼーションされたネットワーク上で販売することも可能です。そして例えば保険会社がそこに入ってきて、ミュージックツアーに付随して保険を販売するということもできます。Uber、Lyft、Airbnb, Task Rabbitはシェアリングエコノミーのアグリゲーターといえますが、今後はディセントラリゼーション化が進むともっと進化すると思います。ブロックチェーン上ではビジネスをするに企業という存在もいらなくなるかもしれないと言われています。

【関連URL】
・[公式] RISE Conference 2018
・[特集] RISE 2018レポート記事一覧
・[記事] TechWaveが世界最大級のテクノロジーカンファレンス 『ウェブサミット』の日本公式パートナーとして始動

蛇足: 特派員より
今回のRISEはブロックチェーン、セキュリティがキーワードだったと思います。5月のアメリカ版Collisionでもセキュリティの話が多くありましたが、信頼という観点からどんどんディセントラリゼーションが加速していく、というような話が多くありました。ブロックチェーンというと金融というイメージがあるかと思いますが、クリエイティブから天然資源まで実に多くの分野で活かせるとなると今後の展開が楽しみです。

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