- 「ソラコム」がスイングバイIPOを実現、東証グロース市場上場承認 - 2024-02-22
- (更新)結果速報 LAUNCHPAD SEED#IVS2023 #IVS #IVS @IVS_Official - 2023-03-09
- 「始動 Next Innovator 2022」締め切りは9月5日(月)正午ー経産省・JETRO主催のイノベーター育成プログラム #始動2022 - 2022-09-01
[読了時間: 4分]
業績低迷にあえぐ日本の大企業は、ベンチャーマインドを取り込むことで再起できるのか?
TechWaveも2年ほど前からオープンイノベーションというキーワードを借りその潮流を支援してきたが、いよいよその試金石となるである取り組みが動き始めた。
仕掛け人はWilとソニー。両者は2014年12月12日、スマートロック・デバイスを開発する新会社Qrio(キュリオ)株式会社を12月中に設立すると発表した。資本金は3億3350万円
で、出資比率は、WiLが運営する投資育成ファンド「WiL Fund I, LP」が60%、ソニー株式会社:40%となる。
Qrioの代表取締役には、WiL General Partnerの西條晋一 氏が、取締役にはWil CEOの伊佐山元 氏がそれぞれ就任している。
ソニーとしては異例のスピード
WiLは、日本とシリコンバレーに拠点を置く投資育成会社で、同社が運営する400億円規模の投資育成ファンドには産業革新機構ほか事業会社が出資しており、その中にはソニーも含まれている。同社は大企業との連携をテーマの一つに掲げており、今回の合弁会社設立は、ソニー平井社長直下にある部署等の動きもあり異例のスピードで決まっていったという。
「WiLの出資者でありパートナーであるソニーさんと連携策を模索していましたが、ソニー社内研究で生まれた技術資産を活用するという観点では、スピーディーに事業化していくイメージをつけることができませんでした。
そんな中、北米でこの2年ほど前から注目されていたスマートロックはどうかと議論し始めたのが2014年の4月頃。私自身が不動産物件と関係することもあり、まずはイメージしやすい領域として提案していったところ異例のスピードで今回の会社設立に至りました」(Qrioの代表取締役/WiL General Partner西條晋一 氏)
外部との接点構築から化学反応へ
中核事業の不振が続き、大規模なリストラが実施されているソニーではあるが、開発力を高めるべく社内の意思を統一し、それにともない多様な動きが社内でいくつも立ち上がっているのは事実。ソニー品川本社にはモノづくりをテーマとしたスペース「CreativeLounge」が2014年9月にオープンしており、その仕掛け人らもQrioの支援に関与している。
しかしながら、Qrioの設立は、ソニー社内からも驚きの声が聞こえてきている。外部と連携しようとする新しい動きは、それぞれが独立しており連携もなかなか見られない。そもそも、大会社のしがらみからか、企画からプロダクトがリリースされるまで数ヶ月ということは考えもよらなかったというところにきてこのスピードだからだ。
西條氏はいう「合弁だからこそのスピード感だといえますね。すでに、ソニーの名を隠してクラウドファンディングに出品していたFES Watchといった動きもあり、過去セオリーを脱することの抵抗は薄れている中、さらに合弁会社がやっていることだから、という暗黙の了解があったのでしょう」。
それに加え、ソニー平井社長の再起にかける意気込みもQrioのフットワークの軽さを後押しする。名ばかりのオープンイノベーションが先行する中、トップの決断と社内イノベーターの力がWiLの旗振りによって集結した形となったといえるだろう。
クラウドファンディング立ち上がり→ソニー販売チャネルで拡大
Qrio設立と同時に発表されたのは「Qrio Smart Lock」というサムターン型のスマートロックデバイス。すでにサイバーエージェントのクラウドファンディングMakuake上で案件が公開されており、現行執筆時点(2014年12月12日 14時45分)で、目標額150万円のうち、65万円超の出資を達成している状況。
「Qrio Smart Lock」は、スマートフォフォンで鍵の開け閉めができるデバイス。先日、紹介した電通ブルーの「246」(電通ブルーが謎のIoTデバイス「246(ニーヨンロック)」を発表、その先にある狙いとは? 【@maskin】)と、見た目や機構こそ違うものの発想や向かう方向は同じ。
Qrioの社長 西條氏と、電通ブルー社長の吉羽一高 氏は、サイバーエージェント時代に面識があり、スマートロック参入については事前に情報交換も果たしているようだ。
電通ブルーの246が企画優先だとすると、Qrioはソニーのハード生産力と販売チャネルを活用できる大企業コラボの優位性を活用していくモデル。双方のモデルが実際の市場でどう浸透していくか注目される。いずれにせよ、大企業とベンチャーの流れのイノベーションにおける試金石となるのは間違いなさそうだ。
【関連URL】
・WiLとソニー、スマートロック事業を行う合弁会社を設立
~ソニーの無線セキュリティ技術を活かし、スマートロックの製造販売とサービスを展開~
http://www.sony.co.jp/SonyInfo/News/Press/201412/14-1212/index.html
・電通ブルーが謎のIoTデバイス「246(ニーヨンロック)」を発表、その先にある狙いとは? 【@maskin】
http://techwave.jp/archives/dentsublue_246_announcing.html
日本におけるIoT注目度は、世界おしなべて考えても極端に高い。どんなに中国などの生産量が上がっても、心のどこかでハードを忘れたくない。おそらくそれはソニーのような戦後経済をハード開発生産技術で社会イノベーションをおこしたプレイヤーの再起を願う人が想像以上に多いからのように感じている。
ただ問題もある。ハード生産や組み込みソフトなどに関わってきた人材がIoTという土俵にあがってきていないという問題だ。いくら、ArduinoだEdisonだといっても、多くがDIYレベルからの入口であり、そこで勝負しようとするイノベーター層はまだまだ少ない。
そうした状況に一石を投じるのがQrioといえるだろう。こうした取り組みがソニーという巨艦を構成する人々に認められ、経営的にも全社を牽引し、技術者としても魅力的に写るのだとしたら、業界の流れは変容していくのだろう。