ネットが管理される危険性ー伊藤穰一さんインタビュー

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▼伊藤穰一さんにとってのこれまでの10年、これからの10年

 今はネットのオープンな文化が危機的な状況にあるという。通信やメディア関連の企業はこれまでネットの影響力に関しては様子見の立場を取っていたが、自分
たちの既得権を守るためにいよいよ攻勢に転じている、というのが伊藤さんの過去10年の総括、今後10年の予測だ。ネットのオープンな文化を守ろうという
人たちと既存勢力との戦いは激化する一途で、どちらが勝つかは予断を許さない状態だという。
 ネット関連技術の標準化組織は既にいくつかあるが、その多くは草の根の団体。それを国連組織の中に組み込もうという動きもあるようだ。そうなれば、民間ではなく国家がネットを制御することになる。

「伊藤穰一氏インタビュー 第1回音声ファイル」

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 【インタビューの抜粋】
○湯川 まず、伊藤さんにとってのインターネットの今までの10年というのは、どんな10年だったと総括されていますか。
○伊藤 ボトムアップで、ユーザー・ジェネレーテッドに近いオープンネットワークになった。それが10年前だったら、ネットワーク屋さんでさえ、こんなことはできないと思っていた。それがほぼこの10年後、当たり前になった。そうなるのに、10年かかったのです。
○湯川 初めからインターネットというのはつながりの世界であったり、ユーザー・ジェネレーテッドのメディアであったりと言われたのですが、本当にそうなるまで10年もかかってしまったということなのでしょうね。
○伊藤 そうだね。でもハリウッドはいまだにユーザー・ジェネレーテッド・コンテンツはあまり好きではない。ケーブルテレビや電話会社というのは、できればインターネットを閉鎖していきたい。モノポリ(独占企業)たちはまだ生き残ろうとしている。やはり力がある所は残っていて、たぶんそこがいま壊れてきているところだね。今後の10年はその戦いが、ポイントに集中して行われるということではないのかなと思います。
○湯川 (ネットの自由な文化のほうには)絶対行かさないぞという動きがあって、ひょっとすると今後10年間で揺り戻しがある。そういうことをおっしゃっているのですか。
○伊藤 うん。この10年間で大体インターネットとはどんなものか、みんなわかってきたから、ますます論点もはっきりしてきている。昔は危険性も感じてもいなかったわけ。今の国連とかでは、すべてのコミュニケーションは(国連組織である)ITU(国際電気通信連合)が管理するべきだと言う人もいるわけ。国と電話会社、この2つが世の中のコミュニケーションを仕切るべきだと思っている人たちもいる。僕は下手をするとインターネットが、ここ数年間で今の形でなくなる可能性があると思う。
○湯川 それはどうして。
○伊藤 それは、例えばITUがICANN(インターネット上で利用されるアドレスなどの標準化や割り当てを行なう組織。民間の非営利法人)との争いで勝って、例えばICANNがなくなってしまって、IPアドレスとかドメイン名は全部国連管理のITUがやって、全部国が決める。そうなると、免許がないと機種も作れない、認可がないとイノベーション(技術革新)もできない。インターネットが、今の電話会社とケーブルテレビを足して割ったようなネットワークになってしまう可能性はまだあると思うんだよな。本来であれば国は独占禁止法などを使って独占企業(モノポリ)を壊すべきですが、いまの政治状況から言うと、モノポリは影響力を持ってしまって、なかなか壊れないんだよね。
○湯川 なるほどね。そこのところで国が、特にモノポリに影響されやすいような政府が、インターネットの大元のところの権利を握ってしまうと、これからイノベーションというのは起こりづらくなってくるということですね。
○伊藤  それがなぜ駄目かというと、1年に1回おじさんたちが集まって、一生懸命あらゆる可能性を想定して規格を作っていったら、こんな分厚いのになっちゃうわけ。インターネットのイノベーションというのは13歳の男の子でも、何でもソフトを書いて、みんなで付けてワイワイ走りながらやるという感じなのね。そういうほうがイノベーションがうまくいくというプロセスが証明されたにもかかわらず、昔からいる人たちが「そろそろまた僕らに権限を戻せ」と言い始めている。それが、いま起こっていることです。
○湯川 なるほどね。日本のインターネットというのも、村井純さんなんかが、「とにかく5年待ってくれ、5年好き勝手にやらせてよ。いろいろガチガチに法律を決めずに。そうでないとイノベーションが起こらないのだから」と。日本人はどちらかというとガチガチに決めたいほうだから。村井さんは一生懸命「ガチガチはインターネットに似合わないのだ」と言っていましたよね。でも10年もユルユルできたのだから、そろそろは規則を当てはめてもいいのではないですか。自由奔放のネット文化にはもちろんイノベーションというプラスはあるのだけれども、その反対で問題でもあるわけではないですか。
○伊藤 でも問題点よりもプラスのほうが断然大きいし、それにオープンなインターネットというのは民主主義の柱になってくると思うんですよ。もうこの時代、監視だけされて発言できず、オープンなネットワークがない国には民主主義はあり得ないと思うの。国民は喋らない、聞くだけ。しかも国民は監視される。国に任せたらそういうネットワークになるのが当たり前なの。しかも中央で作ったものをみんなに放り投げるだけで、それがビジネスモデルとしていちばん分かりやすい。
 イノベーションというのもそうだけれども、言論の自由などの基本なものが、いまインターネットによって生まれてきているわけです。中国などは、いまブログを取るのに免許が必要でしょう。管理している人にとっては、そちらのほうがいいかもしれないが、せっかくこれからグローバルな会話が始まろうとしている中で、かなり危険になると思います。

伊藤穰一さんの略歴
wikipediaの日本語版には出ていないけど、英語版には伊藤さんの情報がいっぱい載っている。それだけ海外で活躍されているということだ。
wikipediaによると、伊藤さんは京都生まれ。4歳のときに親の仕事の都合で渡米、14歳のときに帰国しているが、大学は米タフツ大学、シカゴ大学へ留学。
 現在の仕事はテクノラティの国際部門のジェネラル・マネジャー、日本シックスアパートの会長、クリエイティブ・コモンズの理事、ネオテニーの最高経営責任者、ICANNの理事、オープンソース・イニシタティブの理事、モジラ財団の理事など、多方面で活躍中。
たしか欧米の雑誌の、世界で最も影響力のある100人とかいうのに選ばれていたような記憶があるんだけれど、違うだろうか。だれか知りませんか?

この取材の音声は、IBM広報誌「無限大」から提供していただきました。

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Editor In Chief at TechWave.jp
1990年代初頭からソフトからハードまで50以上のスタートアップ立ち上げを国内外で経験。平行して雑誌ライターとして疾走。シリコンバレーでガレージベンチャーに参画後は、国内でネットエイジを筆頭にスタートアップに多数関与。ブログやSNSの国内啓蒙、ソニーの社内イノベーション事業など関与。通信キャリアのニュースポータルの立ち上げ期の編集デスクとして数億PV事業に育てた後、TechWaveにジョイン。世界最大のグローバルIT系メディアであるスペインの「Softonic」の元日本編集長
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