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Twitterは人間関係そのものであり、オンライン社会が広がるなかで一般社会のインフラになる可能性がある。これまでいろんなところでそう主張してきたのだが、自分の中でもうまく説明できていないという感じを持っていた。こうした話をしても、相手はキョトンとした顔をしていたし。
僕の言いたいことを説明するのにちょうどいいサービスが登場したので、このサービスを使ってTwitterがどのように社会のインフラになっていくのかを説明したい。
まずは以下のビデオを見ていただきたい。
友達を誘ってグループでランチする場所を決めるサービスで、Lunchwallaという新しいサービスだ。
友達の輪の中から、誘いたい人物にだけチェックマークをつける。そして次に行きたいレストランも幾つか選んでチェックする。あとは招待メールを一斉に送付するだけ。招待された友達が行きたいレストランに投票し、最も票が集まったレストランにランチタイムに集合、という非常に簡単なスケジュール調整サービスだ。
このサービスを利用するには、自分のID、パスワードを設定し、友達を一人一人勧誘していくことも可能だが、もっと簡単なのはFacebookのアカウントを使うことだ。Facebookアカウントを持っている人なら、Facebookのロゴをクリックするだけで、すぐに会員登録が終わってしまう。面倒な個人情報の入力作業はないし、Facebookで使っている写真をそのまま使える。そして何よりも便利なのが、Facebook上の友達関係をそのまま引き連れてくることが可能なことだ。自分のFacebookの友達のリストが表示されるので、この中からこのランチのサービスに呼びたい友達をチェックしていくだけ。Lunchwallaに登録して、すぐその場で友達をランチに招待できるようになっている。
ID、パスワードの入力の手間が省けるだけではなく自分の人間関係(ソーシャルグラフ)を新しいサービスにそのまま持ち込める。感覚的には、Facebookの追加機能のような感じだ。
大手ポータルで使っているIDを使って新しいサービスに加入できるというオープンIDと呼ばれるID共通化の仕組みがある。日本では普及を促進しようという動きがまだ見られるが、それほど普及に成功していないのは、多くのIDを覚えなくていいという程度のメリットしかないからだと思う。僕の周りの人間を見ていると、オープンIDを利用する代わりに、どのサービスでも同じID、パスワードを使っている人が多い。オープンIDを使わなくても、セキュリティ面で少々妥協すれば、同じID、パスワードの使い回しでほとんどのサイトは十分なわけだ。
ところがLunchwallaにおけるFacebookのIDによるログインのようなケースだと、多くの人が利用する。ID、パスワードの入力省略だけではなく、友達のリストを持ち込めるからだ。
最近のUSの新しいサービスを見ると、ほとんどがこうした形で登録できるようになっている。1からID、パスワードを設定しないといけないサービスのほうが珍しくなった。
そして利用できるのは、FacebookアカウントかTwitterアカウント。この2つしかない場合が圧倒的に多くなった。この2つで決まりだ。FacebookのIDとTwitterのIDがネット上の共通のIDになり、どのサービスにもFacebook上の人間関係と、Twitter上の人間関係を持ち込むのが一般的になっている。注意:あくまでもUSでの話。
こうしたサービスを使うことで、オンラインの人間関係とリアル社会での人間関係の融合がさらに進むのだろう。Facebook上で知り合った人と実際にランチしたり、リアルな状況の中で知り合った人とFacebook上で友達関係を結ぶということが一般的になっているわけだ。
日本でもTwitter上では、このようなリアルな人間関係とオンライン上の人間関係が融合しつつある。Twitterを楽しめている人は、このことを実感しているはずだ。これがこれまでのインターネットの楽しみ方と、Twitter後の楽しみ方の大きな違いだと思う。匿名で本音を語るのが楽しかったネットの「陰」の使い方よりも、人とつながるというネットの「陽」の使い方のほうが増えてきているのだ。(参考記事:インターネットの楽しみ方の「陰」と「陽」)
USでは、IDと人間関係のインフラとしてTwitterとFacebookの地位が確定したが、日本ではまだどうなるか分からない。今のところ日本では、ID、人間関係のインフラとしてはTwitterが最有力候補なのは間違いない。だがFacebookも日本に事務所を作ったし、若者向けでは「Amebaなう」を始めとする多くのTwitter風サービスがしのぎを削っている。どこがデファクトになるのかはまだ予断を許さない。どこかがデファクトを取る必要もないのかもしれない。サービス間の連携が進むのであれば、デファクトを取る必要もないからだ。
このIDと人間関係のインフラはモバイルにも入っていくる。Microsoftの次期スマートフォンWindows Phone 7の連絡先は、Facebookのアカウントと同期される。ケータイの連絡先がFacebookなのだ。日本で発売される場合は、これがTwitterアカウントと同期されるのかもしれない。「Amebaなう」と同期するケータイが出てくるかもしれない。
オンラインの人間関係をケータイの中に入れて持ち運び、友達のオンラインの活動状況がリアルタイムで分かるようになるわけだ。
そして情報は人間関係を通じて流れるようになる。Twitterを使っている人なら、このことは既に感覚的に理解できるだろう。セール情報も流れる。マスメディア広告よりも効果的になるかもしれない。
人が集まり、情報が流れるようになれば、次はお金が動くようになる。Facebookがオンラインペイメントの新しい仕組み作りを目指して人材募集を始めたのはこのためだ。
今はまだ社会の1割ほどのユーザーしか積極活用していないソーシャルメディアだが、これからのソーシャルメディアを活用する世代は増えていくだろう。若い世代のケータイの利用方法をみれば、既にケータイをソーシャルメディアとして活用し始めているのが分かる。ソーシャルメディアが社会の基盤になるのは間違いないと思う。