インタビュー:「ツイッターノミクス」著者、タラ・ハントさん -後編- 【三橋ゆか里】

書評

カバー画像ソーシャルメディアを活用したDELLの有名なサクセスストーリーや、ウォルマートの失敗談。また大手に限らず、地元の小さなワイナリーや無名のミュージシャンが、ソーシャルメディアのパワーでウッフィーを増やし成功した事例などが、具体的に紹介されている「ツイッターノミクス」。

その著者であるタラ・ハントさんへのインタビュー後編(前編はこちら)では、より著者の魅力に迫ります。注目が集まる今後の彼女の活動ですが、え?スタートアップを始めるの?なんてことから、「セルフブランディング」に関する著者の考え方など、いろいろと面白い話を聞かせていただくことができました。Enjoy!

————
Q.「ツイッターノミクス」が出版されたことで人生は変わった?

2936
Photo by Masahiro HONDA(TechWave)

A.まず今日本に来ているのが変化のひとつね(笑)本当に嬉しいわ。それまでずっと自宅からコンサルティングの仕事をしているような状態だったから、そこから旅をして多くの人の前で話すようになって、ガラッと生活が変わった。本を出してからというもの、コンサルで学んだことを伝えるために、海外に行ってくださいってお金を出してもらえるんだから。素晴らしいライフスタイルだと思ってる、新しい出会いもたくさんあるし。

「ツイッターノミクス」は、コンピュータの向こう側にいた私を、オーディエンスの前に連れ出してくれた。それに自分で本が書けるってことを証明できたことも大きいわ。ブログを書くこととはまったく違って、辛抱強くなきゃいけないけれど、色んなデータをチェックしたりすることで多くを学んだし、書き手としても成長できたと思う。


————
Q.「ツイッターノミクス」の出版はあなたのマーケティング戦略にどう影響した?

A.私はもともと戦略とかプランニングにはあまり興味がないの。どちらかというと、色々な機会に出会って何事にも挑戦してみることの方が大事だと思ってる。この本を出版することによって、より多くの出会いに恵まれたり、以前ならば不可能だったことが可能になったことは本当に嬉しく思ってるわ。

————

Q.もともと書くことは好き?2冊目を書く予定は?

A.2冊目の執筆に向けて今はひたすら調査をしている感じ。2冊目のコンセプトは私たちの「価値観」についてよ。「ツイッターノミクス」でも、ビジネス文化がソーシャルウェブに入っていく必要があることを書いたけれど、今度はビジネスにおける価値観が、いかに人間の価値観と異なっているかを解き明かしたいの。ビジネスでは競合優位性やROIが重要視されるけど、人間にとって価値のあるものは愛とか美しさとか真実とか協調性っていう素晴らしいものだったりするでしょ。

ソーシャルウェブでは、愛や真実っていう人間の価値観に近いところを重視しているビジネスがうまくいく傾向があると思ってる。例えばアップルは、iPhoneやその他の洗練された製品を生み出すことで、美しさをとりまく文化を作り出してる。テクノロジーの分野でも、”Zappos”なんかは愛や幸せなんて価値観をすごく大切にしてる。どうやってビジネスの価値観と人間の価値観をつなげるか。その中心にあるのがソーシャルウェブよ。

————
Q.最近はどんな活動を?

A.サンフランシスコからカナダに戻るときに、シチズン・エージェンシーを退職して、いまはベンチャーの立ち上げをしようとしているわ。地元カナダ・モントリオール発信で、ユーザのお買い物データを開放するサービスなの。いまって、アマゾンで買い物をしたらその履歴はアマゾンに残されているし、お店で買い物をしたらそのレシートが財布に入っていたりするけれど、その色んなところに散在しているお買い物履歴を整理できたら便利じゃないかなって。サービス名は、”Shop”と”wow”を併せて”shwowp”。お買い物履歴が確認できたり、自分がいくら使っているかがわかったり、そんな買い物にまつわるあらゆる情報を整理して、さらに友達と共有したり情報交換ができるようにするつもり。

最終的には、自分がいかに他の人のお買い物に影響力を与えているかが見えたら面白いと思ってる。例えばあなたがスゴクおしゃれで、友達がファッションのお手本にするような存在だったとしたら、あなたがきっかけになって何かを買っている人がいることがわかるような。上手くいけば、これをお店やブランドに持っていって、こんな影響力のある人があなたのお店に貢献しているから、ディスカウントや特別なディールを提供できない?とかね。最初は英語で始めるけれど、ツイッターのようにグローバルに広げていくつもり。

————
Q.このアイディアはずっとあたためてきたもの?

A.私自身、オンラインショッピングが大好きで、買い物に関するデータが一箇所にないことを不便を感じていたの。だからずっとアイディアは持っていたわ。でも実際に動き始めたのは今年の1月。モントリオールでスターティングメンバーと出会って、いままさに作っているところ。ここ数週間で限定されたベータ版としてオープンすると思う。

私のことをブログを始めた頃から知っている人に言われたのだけれど、「ほんとにどこまでもチャレンジし続けるね。まずはブログを書くことにチャレンジして、その後カリフォルニアに引っ越すことでスタートアップと一緒に仕事をして、それから自分の書籍を出してスピーカーになって、今は自分でスタートアップをやってるのか」って。ベンチャーの立ち上げって、これまでやってきたことと全く違う。いまは資本を求めているけれど、あまり上手くいっていないから、自分たちで自分たちの給料を支払っている状態。でも新しいことにチャレンジするのは本当に楽しいし、十分に価値があると思ってる。

————
Q.シチズン・スペースの活動はどう?

A.シチズン・スペースは、SOHOワーカーの共有ワーキングスペースを作るために始めた活動よ。東京にもスペースがオープンするって聞いてる。独立して仕事をする人ってスタバで仕事をしたり、自分の家の空き部屋で仕事したりするでしょ。でも孤立しているし、外だとうるさかったり不便も多い。共有ワーキングスペースの目的は、そんな人たちを支援すること。オフィスの良いところどりを実現したの。今は世界中に数百の共有ワーキングスペースがあるのよ。

————
Q.ソーシャルネットワークでセルフブランディングをする人へのメッセージは?

A.私はセルフブランディングやパーソナルブランディングという考え方には反対。生身の人間らしく、正直でいた方がもっと個人レベルでつながることができる。パーソナルブランド自体は完璧でも、実際にはより深い人間関係を作ることができなくなるリスクが伴う。それに、タイガー・ウッズのように秘めた一面があった場合、それが発覚した際に、パーソナルブランドとの不一致によって人を幻滅させてしまうリスクがある。

私は2年半前にすごく落ち込んだ時期があったの。シチズン・エージェンシーとシチズン・スペースを一緒に立ち上げたパートナーと別の道を歩みだした時だった。そのとき私は、賢いビジネスのアドバイスをしたり記事を書くタラ・ハントというパーソナルブランドから、一人のすごく悲しい人間になった。でも、ツイッターで人としてもっと繋がろうとすればするほど、そして恐怖やあきらめた夢なんかについて話せば話すほど、個人レベルでのつながりが増えていくことに気づいたの。この時期に、他のどんな時期よりも友達が増えたし、表面的なつながりから、それ以上の深いものが得られたと思う。

だから、パーソナルブランドなんて考えない方がいいわ。ありのままの自分でいることが大事よ。

————
Q.horsepigcowというブログ名の由来は?

A.私の母親の口癖なの。兄弟の名前がスグに出てこないときに、「えーっと、馬!豚!牛!タラ!こっちに来て」って言うのが癖で、子どもの頃からよく耳にしていたから私にとってすごく自然なの。2003年にブログをはじめようと思ってドメイン名を考えていたときに、息子が「馬!豚!牛!ってどういう意味なの?」って聞いてきたことがきっかけになって、それをブログの名前にしたのよ。小さな街で生まれ育った自分を思い出せるし。

————
Q.カラオケが大好きって本当?

A.本当よ。「ツイッターノミクス」の原書、”Whuffie Factor”のプロモーションのためにもキャンピングカーに乗って、スポンサーをつけて、全米をカラオケをしながら横断するプロモーションをしたの。自宅のリビングにカラオケ機があるほど大好き。SxSWでも毎年恒例のカラオケ大会があるんだけれど、誰かがそこで「ソーシャルメディア界のカラオケは、ビジネス界のゴルフだ」なんて上手く表現してた。ソーシャルウェブの世界にいる人とカラオケって相性がいいんだと思う。すごくオープンで、自分を見せることに恥ずかしさを感じない、そして一緒に歌って絆を強めるカラオケと、コミュニティで人間関係が強まることに共通点があるのね。

————
Q.5年前のあなたは、いまの自分が想像できた?

A.世界を変えることに携わりたい、企業と顧客のバランスの悪さを何とかしたいという思いは持っていたわ。でも気づいたら色々起きていたという感じ。これは自分の本能や、信念、好きなことに従うことの価値を証明する結果になったと思う。自分が情熱を持つことに取り組んだことを後悔する人なんて一人もいない。それで食べていけなくても、挑戦したことに幸せを感じられるはず。
————

インタビュー時に、マイ「ツイッターノミクス」を持参してサインをお願いしたところ、”Go forth + raise whuffie!”とサインしてくれた著者のタラさん。「前進あるのみ!」というその強いメッセージにも表れているように、どこまでもパワフルで真っ直ぐで素敵な女性でした。今後も、彼女の活動を追っていきたいと思います。

「ツイッターノミクス」は、私がソーシャルメディアとの関わりの中で無意識にやっていたことを、わかりすく、また的確に教えてくれた、まさに”Awakening”(目覚め・気づき)です。もう今となっては、ソーシャルメディアの力に気づいていない人はいないでしょう。でもそれを最大限に活かすために手助けを必要とする人はたくさんいるはず。「ツイッターノミクス」は、そんな方に手にとっていただきたい一冊です。

【スタッフブロガー】三橋ゆか里

yukari_pink_smaller肩書きウェブディレクター。ディレクションの他、翻訳やライティングなど、フリーでお仕事してます。ツイッターIDは”yukari77“。

個人で運営している【TechDoll.jp】というサイトで、海外のテクノロジー、ソーシャルメディア、出版、マーケティングなどの情報を発信しています。目指せタイムリーな情報発信!

これまで雑誌のECで→UIデザインのコンサル→ウェブ制作会社などを渡り歩いてきました。そこで得たスキル、人、全部かけがえのない財産。幸せの方程式は、テクノロジー(UI, IA..)×マーケ×クロスカルチャー×書く・編集。いま一番夢に近いとこにいる。

詳しいプロフィールはこちら

最新情報をお届け

こっちはいろいろ

PAGE TOP
More in タラ・ハント
インタビュー:「ツイッターノミクス」著者、タラ・ハントさん -前編- 【三橋ゆか里】

Close