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「われわれの定義するSNSは、友人、知人とつながりを提供するサービスのこと。この定義だと日本ではSNSはうちだけ、というのがわれわれの主張」と、ミクシィの笠原健治社長は語る。「食べログは食べ物が好きな人たちのつながりのグラフ(人間関係)。モバゲータウンやグリーとかだとゲーム好きな人たちのグラフ(人間関係)。ゲームグラフとかバーチャルなグラフと呼ぶほうが合ってる」というのがミクシィの考え方だという。日本の大手SNS同士の緊張感がうかがえる発言だ。
Infinity Venture Summit(IVS)は、日本の3大SNSであるミクシィ、モバゲータウン、グリーのトップが一堂に会する数少ない機会。なので以前から互いをけん制し合う発言がパネル討論会などで飛び出し、会場を沸かす結果になっている。1年前のIVSでは、ミクシィの原田明典取締役が笠原氏と同様の趣旨で「日本でSNSはうちだけ」と発言。これを受けて会場にいたモバゲーの守安功氏が「なんちゃってSNSをやっている守安ですが」と質問し、続いてグリーの田中良和氏が「かってSNSをやっていたと言われる田中ですが」と質問を切り出して、会場が爆笑の渦に包まれた。
今回のIVSでもミクシィの原田氏が「日本でSNSはうちだけ」と再度主張したあとでミクシィの新オープン戦略の一部を発表。それを受けてグリーの田中氏が「Facebookの戦略を真似たわけですか」と辛辣な質問をし、会場の爆笑を誘った。田中氏はその後のインタビューで「あれは単なるギャグ」と笑いながら説明しているが、実際にそうなのだろう。本当に険悪な関係であれば、公の場で相手を揶揄するような発言はしない。また下のインタビュー動画の10分15秒ぐらいのところでモバゲータウンの守安功氏が後ろを通りかかり「仲良くしましょうよ」とミクシィ原田氏に握手を求めてきている。ライバル同士の緊張感は存在するものの、険悪な仲ではないことがうかがえる。
▼リアルなソーシャルグラフとバーチャルなソーシャルグラフ
SNSが単なるクローズドな日記サイトから、人間関係をベースにした各種サービスを提供するサイトへと進化していく中で、笠原氏が主張するように実際の知人、友人とのつながりと、食べ物やゲームを通じたネット上だけのつながりを区別したいという要望は確かに増えてきている。前者をリアルソーシャルグラフ、後者をバーチャルソーシャルグラフと呼ぶユーザーも増えてきた。
わたし自身もそうだ。わたしは、Twitterのツイートに緯度経度の位置データを添付することがある。特にカフェなどで一人で時間をつぶしているときなど、位置データをつけてツイートする。実際にそのツイートを見て近くにいた友人が遊びにきてくれたことが何度かある。「疲れたので今日は飲みに行きたいな」とつぶやくだけですぐに友人数人が集まってくれたこともある。便利な時代になったものだと思う。
一方で約1万人いるフォロワーに自分の現在地を教えることに、なんとなく居心地の悪さも感じる。リアルとバーチャルなソーシャルグラフを分けたいと考えている。そこでmixiとタイムログは実際の友人、知人に限定し、Twitter、Facebook上では会ったことがない人とも友人関係をオンライン上で結んでいる。極端にプライベートな情報や本音発言はリアルソーシャルグラフにしか公開しないことにしている。
ミクシィはリアルなソーシャルグラフをベースに成長してきた。今後さらに多くのサービスをこのリアルソーシャルグラフをベースに展開していく。それがミクシィの新オープン戦略だ。それが可能なのはリアルなソーシャルグラフをベースにするユーザーが多いから。この優位性を説明するための「SNSはうちだけ」という発言なのだろう。リアルなソーシャルグラフをベースにしたサービスを今後最も展開しやすいのは自分たちである、という意味の発言なのだと思う。
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