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2010年2月「iPhoneとツイッターで会社は儲かる(山本敏行著)[国内初書評]」という書評で取り上げたEC studioを覚えている人は多いのではないだろうか。おいしい話があっても「会いに行かない」、オフィスに電話すらない、トンでもないあの会社である。
その会社代表取締役 山本敏行氏が新しい書籍を発売した。その名も
日本でいちばん社員満足度が高い会社の非常識な働き方
この冷たい会社は、株式会社リンクアンドモチベーションの組織診断で「社員満足度が高い会社」として2年連続で日本一輝いているという。確かにこの書籍を読むと一緒に働きたくなる。とてもロジカルに冷静にビジネスを促えており、読んでいるだけで仕事というものの考え方に変化が生まれるそんな内容になっている。
最も共感したのは「株式公開をしない」「外部資本を入れない」という点。筆者は、ネット系起業家に必ず「目標は」と質問するのだが、ほぼ100%「上場、株式公開」といってくる。なぜ?と聞くと「規模を大きくする」とか「キャピタルゲイン」という話。金儲けの手段で会社を立ち上げるという意見が多い。しかし、山本氏は「会社は、個人が成長するためのインフラ」と言い切るので、すがすがしい気持ちになる。
なぜか。筆者だけでなく、多くの仕事人は「働く意味」を求めている。決して上場だけに固執していない。起業系経営者と従業員の乖離は埋まらず、従業員は無理をするだけで、結局、うまいこと売り抜けた経営陣はプチリタイアを満喫するだけに終わるという現実が横たわっているからだ。
山本社長はネットだけで営業をする会社としてECstudioを起業した。しかし、創業期だからと大切なスタッフに普通の経営者と同じような厳しい態度を取ったのだという。
「短期間で多くのスタッフが離れていきました。社員に対し奴隷の様に厳しくする経営者をあれほど嫌だと思っていたのに、、、。これはダメだと思い、会社を変える決断をしました」(山本氏)
そんな山本氏が実行に移したのは経営者1000人に教えを請うということ。そこでうまくいっている
会社の共通項を見い出したのだという。
うまくいってる会社の3つの共通点
?社員のために自分の時間を使っている
?社員についての愚痴や不満を言わない
?自分の会社、自分の社員のことを楽しそうに話す
なるほどと思いつつ、本当にそれでうまくいくのか疑問に感じる点もある。しかし、この3項目を発展させたEC studioの理念の原点とも言える「しないこと14か条」を見ると、なるほどと思えてくる。山本氏いわく「社員に無理はさせない」ということを徹底するための内容になっているのだ。
社員第一主義企業の「しないこと」14か条
(この14か条はウェブに掲載し「変更しない」と宣言されている)
◯01 ITを活用できないことはしない
経営にITを活用するIT経営実践企業の見本として、訪問営業や、電話営業をすることなくインターネット上のみで営業いたします。その他のあらゆる業務においてもITを経営に徹底的に有効活用する企業を目指します。
◯02 株式公開しない
ビジネスモデル的に設備投資は不必要であり、信用力向上による営業力もホームページを有効活用すれば、上場企業と対等に集客することができるうえ買収の危険性も防げるため株式公開いたしません。
◯03 他人資本は入れない
経営理念、経営ビジョンの実現を貫くため、他人資本は入れません。
◯04 経営理念を共感いただける会社としか取引しない
最も重要である経営理念を共感いただけない会社とは、収益が見込めるビジネスであったとしても取引いたしません。
◯05 経営理念に沿わないビジネスはしない
収益が見込めるビジネスモデルがあったとしても、経営理念に沿わないビジネスはいたしません。
◯06 特定の組織に所属しない
特定の組織に所属すると想定外のタスクが回ってくるため従業員第一主義の観点から特定の組織には所属いたしません。
◯07 スタッフをクビにしない
経営理念に共感し、経営ビジョン実現に向かっているスタッフをクビにいたしません。
◯08 売上目標に固執しない
売上目標に固執することでスタッフに無理をさせる、お客様に迷惑をかけることから売上目標達成のための無理はいたしません。
◯09 サービス向上に妥協しない
ビジネスモデルが完成し、収益モデルに仕上がったサービスであったとしても常にお客様の立場に立ってメスを入れ、サービス改善を怠りません。
◯10 守りに入らない
売上が安定して伸びている事業であっても時代遅れであったり、クオリティに満足がいかないサービスは積極的に提供を中止します。
◯11 高価格なサービスは提供しない
時間、距離の概念がないコストゼロ空間であるインターネットを有効活用すれば、業務効率が上がり、コストを削減できるという考えから、ハイクオリティロープライスなサービス提供を目指します。
◯12 会社規模を追求しない
インターネットを有効活用すれば業務効率が上がり、少数精鋭で運営できるという考えから会社規模は追求せず、サービスのクオリティを追及し、経営ビジョンの実現を目指します。
◯13 日本にプラスにならない事業はしない
EC studioを創業するきっかけとなった「インターネットで日本を良くしたい」という創業当初の目的を忘れることなく、日本全体にプラス効果のあるサービス提供を目指します。
◯14 日本市場だけにこだわらない
日本市場を最優先にしながらもインターネットは世界とつながっていることから、日本国内から世界に向けて積極的にサービス展開をおこなっていきます。
ストイックなルールを敷くネット企業として米37Signalsが思い浮かべられるが、ルール化しているわけではないし、サービスの内容までルール化していない点からEC studioの方が完成されているような印象を受ける。この項目をどうやって構築していったのが、なぜこうなるのか、興味のある人は是非本書を読むことをお勧めする。
(おまけ)本当に電話がないEC studioのオフィス(東京)スタッフは全員3ディスプレイ
仕事というものの促え方や起業を検討する全ての人に贈ります。
【日本でいちばん社員満足度が高い会社の非常識な働き方 (山本敏行著)】
■ 関連URL
・EC studio
http://www.ecstudio.jp/
僕は東京、北米を転々とし、2001年から栃木県宇都宮市に住んでいる。ここからリモートで取材をし、記事を書き、大手ニュースサイトの編集までやる。当初、執筆やコンサル等の仕事面で不利もあり、一時期は都内に通勤したこともあったが、ネットが普及し、人々の心が変わるにつれ問題がなくなってきた。家内は神奈川生まれなので東京に戻りたいという意識もあったが、EC studio山本さんのスタンスに出あってから、意地でもここから世界に向ってやる、と思っている。彼は「ネットは弱い人に光を照てる」と良く言う。ネットの本質はそこにあると思う。私の個人ブログmetamix.comは1993年にスタートしたものだが、2010年から「小さきものに灯りを」というコピーに変更している。ある詩の一節だが、山本氏に共感し、自分個人の今後の方向性を決定するのに大きく貢献している。
十代からメディアクリエイターとして企画設計からマーケティングまでマルチな才能を発揮。週刊アスキーなど多数のIT関連媒体で活躍。雑誌ライターとして90年代を疾走後、シリコンバレーで証券情報サービスの起業に参画。帰国後、ネットエイジで複数のスタートアップに関与。関心空間、富裕層SNSのnileport、@cosme、ニフティやソニーなどのブログ&SNS国内展開に広く関与。坂本龍一氏などが参加するプロジェクトのブログ立ち上げなどを主導する。
数年間の休眠後、現在TechWaveのスタッフライター1号機として活動する他、書籍などを中心に執筆活動および講演活動を展開。大手携帯キャリア公式ニュースポータルサイト編集デスク。DJやイベントオーガナイザー。スタートアッププロジェクトのアドバイザー等として活動。ユニークな経験、独自の情報ツール等を武器に、徐々にフルスロットル状態へ。
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