Facebookとのシェア争いにおけるmixiの優位性【湯川】

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 「Facebookとmixiのシェア争いって、どちらが勝つんでしょうか」という質問をよく受ける。いや、非常に頻繁に受ける。

 これまで何度も書いてきたが、わたし自身、このシェア争いには興味がない。ビジネスモデルがある程度確立したプレーヤー同士のシェア争いは結論が出るまでに時間がかかるものだし、そうした争いが始まった時点で実はビジネスチャンスや主戦場は別のレイヤーに移行するからだ。

 Windows対macのシェア争いが新聞記事になっていたころにインターネットが登場し、主戦場はブラウザになった。ブラウザのネットスケープとインターネット・エクスプローラーがシェア争いを繰り広げるころには、Yahoo!が登場した。Yahoo!と対抗馬のポータルが争っている間に、Googleが登場した。GoogleとBingが争っているときに、Facebookが登場した。なので、今はわたしの関心は「次にどのようなビジネスやプレーヤーが登場するのか」ということに移行していて、Facebookとmixiの争いにほとんど関心がない。

 だがあまりにも前出の質問を頻繁に受けるし、アーリーアダプターの間では「Facebookが圧勝する」という意見があまりにも多いので、あえてアマノジャク的にmixiの肩を持ってみたいと思う。わたしは次のような理由でmixiに優位な点があると思う。


(1)開発力で負けていても市場に出す速度でmixiの勝ち

 圧倒的な資金力の差もあるし、シリコンバレーという開発者のメッカに位置しているので、個人の開発力はさておき総合力で、Facebookの開発力がmixiのそれを上回っている。それは当然といえば当然の話だ。しかし開発した機能やサービスを市場に出す速度では、mixiのほうが上である。

 なぜなら世界という多様で分断された市場を相手にするFacebookは、機能を開発したとしてもそれをすぐに全世界展開するわけにはいかない。その機能を提供して問題となる市場がないか、時間をかけて検討する必要がある。

 その点ミクシィは開発者が日本という市場を熟知しているので、開発した段階ですぐにサービスを提供できる。例えばmixi年賀状のようなものもそうだし、mixi年賀状の仕組みを応用してクリスマスプレゼントなどのギフトを届けるというようなサービスをすぐにでも提供できるし、間違いなく早い時点で提供してくると思う。

 先日もミクシィは、おサイフケータイの国際標準仕様Near Field Communication(近距離通信、NFC)機能を搭載したスマートフォンでMixiチェックイン、Mixiチェックを可能にしたと発表したばかり。Android端末で利用可能になったNFCと位置情報を組み合わせた実際のサービス提供は、世界初の快挙。もちろんNFC搭載Androidケータイがまだほとんど出回っておらず実際に利用できる機会はまだないが、サービスを出すタイミングだけはFacebookに勝っている。

(2)モバイル領域での蓄積ノウハウではmixiの勝ち

 モバイル大国日本のSNSだけに、これまでにモバイル関連サービスで蓄えたノウハウがある。Facebookも本格的にモバイルに力を入れてくるようだが、今のところ蓄積したノウハウの量ではmixiのほうが圧倒的に強い。その証拠にミクシィが開発したモバイルのソーシャルアプリケーション仕様が世界標準に採用されている。(発表文:日本発のモバイルソーシャルアプリケーション仕様が世界標準に採択

(3)家電メーカーとの距離でもmixiの勝ち

 これからありとあらゆる家電製品のソーシャル化が進む。撮った写真はボタン1つでSNSのフォトアルバムにアップロードされ友人と共有できるようになるだろう。テレビを見ながら友人とSNS上のチャットで盛り上がるということも多くなるだろう。

 家電メーカーとの戦略的提携が必要になるわけだが、家電メーカーと協業するのに最も有利な都市は東京である。有力家電メーカーの本社や戦略部門がこれほどまでに集中している都市は、世界の主要都市の中でも類がない。事実、ミクシィはほとんどの家電メーカーと協業の方向で話を進めているもようで、今年はソフトバンクの「ソーシャルフォン」を手始めに、mixi対応の家電製品が幾つか発売になる見通しだ。

 一方で米国は、80年代に日本との競争に負けて、もはや家電メーカーはほとんど残っていない。Appleを家電メーカーと呼ぶこともできるかもしれないが、AppleはFacebookに対して強烈な警戒心を持っている。AppleとFacebookがスクラムを組んでソーシャル家電を次々と市場に投入するような状況は、現時点においては考えにくい。

 以上のような理由で、直近の未来においてFacebookがmixiに楽勝するという状況にはならないだろうと思う。それが「Facebook対mixiのシェア争いはどうなるのか」という問に対するわたしの答えだ。

 そう答えると、「では中長期的には?」とさらに質問してくる人がいる。うーん、中長期ねえ。

 ミクシィは「ユーザーにとって心地のよい空間」を目指している。一方でFacebookは、実名を強要する「心地の悪い空間」の側面があることを、運営するFacebookの中の人たち自身が分かっている。言ってみればFacebookは、「戸籍」「住民台帳」のようなインフラになることを目指している。「戸籍」「住民台帳」が心地よい空間であるわけがない。

 ただ「戸籍」「住民台帳」といった基本的なインフラ部分を提供してくれるので、世界中の多くのインターネットサービスがFacebookとデータ連携し始めている。多分に漏れずmixiもいずれFacebookとデータ連携する日がくるかもしれない。いや、そうなる可能性が高いのではないかと思う。

 それを「mixiがFacebookに取り込まれる」と形容する人がいるかもしれない。「mixiの負け」と言う人もいるかもしれない。

 でもそのころには、デジタル「戸籍」の戦いから、別のレイヤーに主戦場が移っている可能性がある。そして新しいレイヤーに戦いの場が移行した際に、有利な展開を見せるのがユーザーから愛されるサービスである。心地よいサービスである。そしてミクシィは今、その心地よいサービスを作ろうとしているのである。