ソーシャルリクルーティング普及のハードルは、日米の人事部門の違いと目標管理の難しさ【武田直人】

寄稿

[読了時間:2分]

武田直人さんからの寄稿です。ソーシャルリクルーティングの課題を採用現場の視点から。(本田)

武田直人
(@naotake0410)

 TechWave読者のみなさん、はじめまして。
 ソフトバンクグループで転職サイト「イーキャリア」の企画・マーケティングを担当している武田直人と申します。以前イケダハヤトさんの「ソーシャルウェブが拓く未来」に寄稿した「ソーシャルリクルーティングが超えるべきハードル」について多くの反響をいただいたので、より採用現場に近い視点で再編集し、ロングバージョンでおとどけします。

日本でLinkedInは普及するか

 ソーシャルリクルーティング、すなわちソーシャルメディアを活用した就職・転職活動への注目度が高まっています。私も含め、この分野に関心のある人間のもっぱらの話題は、「日本でLinkedInは就職・転職サービスとして成功するのか」です。

 否定派の意見としてよく出てくるのが、「実名でキャリアを公開したり、転職意思を表明したりする文化が日本にはない」というものですが、個人的にはこの意見には賛同しかねます。

 LinkedInはビジネスマッチングツールとしての機能も兼ねており、LinkedInに登録していることがすなわち転職を考えていることにはつながらない。LinkedInを使っているからと言って、上司に怒られるいわれはありません。

 結局のところ、LinkedInを使うメリットが実名公開のデメリットやリスクを上回るかどうか、に尽きると思います。そしてLinkedInを就職・転職サービスとしての側面で捉えた場合、そのメリットとは「いい仕事に出会えること」です。

 だとすると、LinkedInを活用して人材募集を行う企業が増えれば、必然的にユーザー(求職者)もLinkedInを使うようになるはずですが、事はそう単純な話でもありません。

日本とアメリカの人事部門の違い

 1つ目のハードルは、日本とアメリカにおける人事部門の役割の違い。アメリカの場合、人事部門は採用活動のサポートを行い、採用権限やその予算は事業部の責任者が持っているケースが一般的ですが、日本においては採用予算を人事部門が一括で管理し、事業部の責任者は面接官としての機能のみを保有するのが一般的です。

 日本における採用活動開始までのプロセスを整理してみましょう。

【プロセスA】

  1. 現場にて採用ニーズが発生
  2. 各事業部門の採用ニーズを人事が集約
  3. 全体の人員バランスを調整し、人事が採用計画を策定
  4. 採用計画と採用予算を提出し、社内承認される

 上記1から4までのプロセスを経て、実際の選考に入り、そこではじめて現場の責任者が登場します。そのため、3で人事が採用計画を策定する際に、LinkedInが募集ツールとして組み込まれている必要があるのですが、そこまで先進的な人事部門はごく一部です。加えて、LinkedInに限らずあらゆるソーシャルメディアは運用こそが一番のポイントで、いわゆる「苦労対効果」が見合わないと判断されてしまう可能性も高いです。

 LinkedInを採用活動に使う際のプロセスは以下のようにシンプルである必要があります。

【プロセスB】

  1. 現場にて採用ニーズが発生
  2. LinkedIn上で知り合いをたどっていくと良さそうな人が見つかる
  3. 見つかった人にコンタクトを取る(現場責任者が)

 それゆえ、人事部門が採用活動の全体方針を設計する日本の多くの企業(特に大手企業)ではLinkedInは浸透するまでに時間がかかるでしょう。現場責任者が勝手にユーザーにコンタクトを取られては統制がきかなくなってしまうからです。

ソーシャルリクルーティングの目標管理

 統制がきかなくたって良い人材が取れればいいじゃないか、という意見ももちろんあると思うのですが、採用計画の数値目標管理という観点からするとなかなか難しいのが実状です。これが2つ目のハードルになってきます。

 インターネット求人広告を使った母集団形成が当たり前になったこともあり、採用の現場でも費用対効果を明確にすることが強く求められるようになりました。その結果、「母集団形成⇒説明会参加⇒書類選考⇒面接⇒内定⇒入社」という一連のステップにおけるコンバージョンレートを人事部門も経営陣に対してコミットする必要が出てきています。ソーシャルメディア上ではどの程度のユーザーにリーチできたかを測定するのは非常に難しいため、目標達成度を明確に算出することができません。

 加えて、ソーシャルリクルーティングでは【プロセスB】の3のように、採用活動の最初のステップである母集団形成を現場責任者に依頼する必要があります。

 つまり、目標管理が難しい上に、その達成は目標数値を策定した人事部門ではなく、他部門である現場責任者に委ねられてしまうということです。

スタートアップベンチャーこそチャンス

 上記2点の理由により、ソーシャルリクルーティングは日本で普及しないかというと、決してそうではないと思いますし、私自身もソーシャルリクルーティングがもっと浸透してほしいと願っている1人です。

 大手企業が活用を渋っている今こそ、スタートアップベンチャーがこの魅力的なサービスを活用して優秀な人材を確保するチャンス。スタートアップベンチャーであれば人事部門も整っていないケースが多く、それゆえこれまで述べてきたような組織構造上のジレンマを気にせず自由な採用活動が行いやすいはず。スタートアップベンチャーなどの小規模企業を中心にソーシャルリクルーティングが一般化し、人材の流動化がさらに加速する。そんな動きが1~2年の間に出てくることを期待しています。

著者プロフィール:武田直人(タケダナオト)

ソフトバンク・ヒューマンキャピタル株式会社
新規事業推進部/メディアプロデュース部 エグゼクティブ・マネージャー
転職サイト「イーキャリア」をはじめとした人材サービスの企画・マーケティングを担当。
個人主体のクラウドワークスタイル実現に向け、日々奔走中。

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