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「たった2か月間でプロダクトを完成させる」。高校生から社会人2年目までという制限で実施されたブレークスルーキャンプ。参加者は都内のマンションに住み込みで完成するまで開発を続けるという無謀と思えるゴール設定にもかかわらず、なんと全国から49チーム160名の応募があり、23チームが一人の脱落者もなくこの目標を達成。そして9月19日、審査を勝ち抜いた12チームの決勝プレゼン大会が東京品川のマイクロソフト本社に実施された。
審査員は、MOVIDA JAPAN 孫泰蔵氏、AppBank運営/GT-Agency 代表取締役 村井智建氏、プロフェッショナル コネクター勝屋久氏、マイクロソフト ディベロップメント 代表取締役社長 加治佐俊一氏、そして筆者TechWave副編集長 増田真樹も参加させて頂いた。
12チームのプレゼンテーションは基本5分、2分以内の質疑応答というルール。限られた時間をどううまく使うかが一つの焦点となる。審査は、ブレークスルーキャンプ主催の赤羽雄二氏が設計した評価シートを埋める形になるのだが、話を聞きながら詳細項目ごとに判断するのには想像以上の労力が必要だったが、最終的に各審査員から出た数値を集計することで公正な評価ができたように思う。(審査員のみなさんお疲れさまでした)
12チームの詳細は公式ブログを見てもらえればと思うのだが、日本マイクロソフトがプラチナスポンサーなのにも関わらずほとんどがiPhoneアプリ。しかし、マイクロソフト 石坂 誠氏は、マイクロソフト社のミッションを掲げ「そんなことはこだわらない」と熱く語った。
思えば、ブレークスルーキャンプは、多くの企業やボランティアスタッフ、外部協力者が関与している。利害関係抜きで参加チームやプロジェクト全体の可能性を信じようとする雰囲気があるため、十代の学生からベテランまでが、互いをたたえ合い、感動を共にしてきた。このような熱気のある空間を日本のIT業界のイベントで見たことがない。オーディエンスを含め、主催者スタッフ、チーム、協力者らを強く束ねたのは、石坂氏らのような方々が持つ “情熱” だったと感じている。
肝心のプレゼンそのものは、5分という短い時間の割に、まだまだ無駄が多いという印象。過半数のチームがオーディエンス取り込み常套手段である「問い掛け」を使っていたり、競合批判や市場の説明をするなどをしているうちに、最も大切なプロダクトの説明が不十分になるケースが続発。自信タップリに「うちのは最高です」と言ってる割に、中身がスカスカという内容には見るからに空気が静まってしまい正直に痛々しかった。
しかし、全てのチームがこれまでのプレゼンからは明らかなステップアップを遂げており、さらには決勝プレゼンの出場チームはもちろん、不出場チームによる3分間プレゼンでも脱落者が全くいないというのには驚きの声が多数あがっていた。ふりかえれば2か月の濃密な日常は不安だったに違いない。迷いながらも逃げずに前進し続けてきたチームのみんなは誰もが自信を持って自分の可能性をもっと追求すべき位置にまできている、そう感じた。
激戦を勝ち抜いたのは、合田チームの「FaceMatch」。ソーシャルグラフ(人間関係)の中で気になる異性を見つけたらそれを登録するというもので、下の画面のように「互いに気になった」2人には通知が送られるなど、好奇心とソーシャルグラフを非常にうまくまとめている。
「女性側から見ると受けいれがたい」とか「facebook創業原点に戻った」とか「出会い系じゃないか」といった意見もあり扱いに難しい部分があったが、市場性はともかく、1つの衝動「知り合いの側にいるあの子が気になる」という点を追求し完成度を高めることで、プロダクトとしての可能性を広めることに成功していると感じられた。会場のウケもよく、審査員も総立ち(一部誇張)となった。そんな、合田チームはこのような面々。
間違った。
こちらです
準優勝にはソーシャル電話帳アプリ 「engraph」。これは高校生参加の高橋俊成くんのチームによるもの。彼はプログラミングの実力も去ることながら、信念の強さや度胸、集中力で大人顔負けの可能性を持つ一人。
同点3位には中山チームの遊休時間活用アプリ「I’m free!」、高瀬チームの購読しやすさを追求した完成度の高いTwitterクライアント「Mutl」が入賞した。いずれも非常に高いクオリティを持っている。ライトニングセッションの中でも、マイクロソフト社がサプライズでお手軽ストレージ「TegalStock」を表彰し、これまたアイディアの良さに審査員からも評価する声が出ていた。
これにて、ブレークスルーキャンプ2011 -Summerは終了。その直後に行われたパーティでは赤羽氏から「来年も開催します」と宣言があったり、「もしかすると冬の開催も?」という話題も浮上した。多くのチームの方と話をしたが、質問や抱えている課題がよっぽど社会人より明確で素晴らしかった。熱くて短い夏だったが、日本人によるITプロダクト創出は大きく進歩したように思う。
【関連URL】
・Breakthrough Camp 2011 Summer
http://www.btcamp.com/
・Breakthrough Camp 2011
http://btcamp2011.blogspot.com/
この企画を聞いた時「強引に作らせてもアウトプットの質はついてこない」とタカをくくっていたが、中間プレゼン、最終決勝とその内容を拝見して、その考えが間違っていたことがわかった。彼らは自らが考え、自らの手でそれを作るため「完成させる」というゴールに向かうことで、企画内容はもちろんプロダクト名やコピー、UI/UX、システムなど全方位にわたってどんどん改善し洗練させていくのである。企画だけのチームではこれはできない。考えながら作ることの重要性を改めて感じさせられた。
審査にあたって僕は、チームによる創出活動において最も重要な「1メッセージに絞れるか」という点とプロダクトのシンプルさ(=完成度)に焦点を当てた。多くのチームが市場性やUI、ゲーミフィケーションといった要素に傾きメッセージが分散する中、FaceMatchは「気に入った子を選ぶ」というテーマを必要最小限な機能でシンプルにまとめていった点を評価した。ソーシャルグラフの活用面でもダントツだった。2位以降も優れた点が多く、順位こそついたものの、改善することで可能性が広がると感じられた。
話は変わるが8月の中間発表に、筆者の愚息小4年生を同席させた。彼は眠い目をこすりながら、最後までお兄さん方々の話を聞き、夏休みの課題に「プログラミング」というレポートを作成して学校に提出した。彼もJavaScriptでゲームアプリを開発する身。その大変さを理解している中で、ブレークスルーキャンプに出場し(私(父親)にツッコまれつつ)悩み苦しみながら前進する姿に感銘を受けたようだった。残念ながら決勝には同席できなかったが、キャンプに参加したみんなの奮闘を伝えると涙を浮かべていた。情熱は世代を超え、引き継がれていくものなのだ。この火を絶やさないためにも、僕達はみんなの奮闘をずっと胸に抱きつつ、共に前進し続けていきたい。
TechWaveのイベントにも来ていただいていた主催者赤羽さん、マイクロソフトさん、スポンサーや協力者の方々、チーム各位、そして運営をかなりがんばってた小俣くんたちに、この場を借りて御礼を申しあげたい。全ての人達の出会いに感謝。
コードも書けるジャーナリスト。イベントオーガナイザー・DJ・作詞家。8才でプログラマ、12才で起業。18才でライター。日米のIT/ネットをあれこれ見つつ、生み伝えることを生業として今ここに。1990年代は週刊アスキーなど多数のIT関連媒体で雑誌ライターとして疾走後、シリコンバレーでベンチャー起業に参画。帰国後、ネットエイジで複数のスタートアップに関与。フリーで関心空間、富裕層SNSのnileport、@cosme、ニフティやソニーなどのブログ&SNS国内展開に広く関与。坂本龍一氏などが参加するプロジェクトのブログ立ち上げなどを主導。“IT業界なら地方で成功すべき”という信念で宇都宮市から子育てしながら全国・世界で活動中。 / ソーシャルアプリ部主宰。大手携帯キャリア公式ニュースポータルサイト編集デスク。