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2012年2月20日、DiMERS Lab(ダイマーズラボ)株式会社は、歩くことで社会貢献を可能にするiPhoneアプリ「Causewalker」(コーズウォーカー)をリリースした。
Causewalkerは、加速度センサーを用いた歩数計で歩いた量を記録。利用者は、予め参加表明をしたプロジェクトに、歩数に応じたポイント(1000歩で2円)分の寄付が出来る。プロジェクトの提供主は企業であり、実際の寄付は企業が行うことになる。
企業自らによるソーシャルメディア(現在はFacebookのみ。今後Twitterにも対応予定)上でのプッシュ型発信ではなく、このアプリを使うことで、プロジェクトに共感したユーザー発信で情報を共有してもらえる。ユーザーは自分が参加したプロジェクトを通じて提供企業も応援することになり、ユーザーとの関係構築の面で企業にとってメリットのある仕組みに仕上げた点が特筆される。
DiMERS Lab代表の長野英章氏は、企業に新しいマーケティング手法を提供することで、NPO/NGOのファンドレイジングの課題を解決したいという想いを持っている。日本にはNPO/NGOの数は4万もあるとも言われ、一説によるとコンビニの数よりも多いそうだ。また、日本では法人による寄付が4900億円に対し、広告宣伝費は5.9兆円の予算規模があるという。Causewalkerの利用を企業のマーケティング(Cause Marketing)の一つに位置づけ、広告宣伝の予算を持ってくることで、DiMERS Labは上記の課題を解決しようとしている。
「寄付白書 2010 Giving Japan2010 要約」日本ファンドレイジング協会
http://jfra.jp/wp/wp-content/uploads/2010/12/summary1.pdf(PDF)
「有力企業の広告宣伝費(2010年度)」日経広告研究所
http://www.nikkei-koken.gr.jp/research/research.php?research=0&recno=552
今回のリリースではまずアプリのDL数を伸ばす戦略をとり、プロジェクトはCausewalker自身が提供している。同時に企業へもプロジェクト提供の営業活動を始めているところだ。規模の大きい企業では、既にCSRなどで特定の活動をサポートしているだろう。Causewalker向けにそれを適応させることも、また支援先のNPO探しなど全く新規プロジェクトをDiMERS Labと一緒に企画することも受け付けている。
また、寄付完了時にはバッジが貰える。ここに載せる情報次第では、バッジをクーポンとして機能させるO2O的な使い方も同社は企業に提案している。バッジの情報は6回まで変更出来るため、企業にとっては、一度切りのプロジェクトで終わらない継続的なコミュニケーションが可能になるだろう。今はバッジ変更の際「通知」によるユーザーへのプッシュはしていないが、利用状況次第で導入も検討しているとの回答を得た。
【ダウンロードはこちらから(iTunesへのリンク)】
http://itunes.apple.com/jp/app/causewalker/id500542658?mt=8
非常に意欲的な取り組みで個人的にも応援しているが、技術面を中心とした課題も既に見える。加速度センサーはバックグラウンドで動かない。つまり、他のアプリを使うとCausewalkerは止まってしまう。もちろんこの問題を運営側も認識しており、ユーザーの利用状況を見ながら、位置情報取得型への移行も検討している。しかし、GPSは電池の消費量が大きく、常に立ち上げておくわけにもいかない。技術的なハードルを乗り越え、どのようにユーザー数を伸ばし、企業の参加を促していけるか。
DiMERS Labのメンバーはグルーポン・ジャパンの出身者である。長野さんに「グルーポンで学んだことの何がCausewalkerに活かされたか」と質問を投げかけると、「仕組みを作ることや、様々なステークホールダーを考慮すること」と答えてくれた。確かに企業サイドのマーケティングニーズをここまで汲んだアプリは、スタートアップの製品としては比較的珍しい。
グルーポンからなぜ社会貢献へ?と思われるかもしれない。しかし、グルーポンの原型はThePointと呼ばれる共同アクションサイトである。資金や人を集め、共通の関心を持つ人々に情報共有や行動の場を提供することを目的に、社会問題(Cause)などの解決として使われた。ThePointはサービスを止めてしまったが、一定の人数が集まらないと実行されないという仕組みが、グルーポンに継承された。
その意味で、Causewalkerはグルーポン創始者アンドリュー・メイソンの落とし子なのだ。
写真家、広義の編集者。TechWave副編集長
その髪型から「オカッパ」と呼ばれています。
技術やビジネスよりも人に興味があります。サービスやプロダクトを作った人は、その動機や思いを聞かせて下さい。取材時は結構しっかりと写真を撮ります。
http://www.linkedin.com/in/okappan
iiyamaman[at]gmail.com