「この瞬間にもチャンスは何万粒も降ってきている」ウィズグループ・奥田浩美インタビュー【本田】

News奥田浩美

[読了時間:3分]

【スタートアップを支える人たち】
 スタートアップ界隈の人間にとって知らない人はいないであろう、ウィズグループ代表の奥田浩美さん。私もカンファレンスの取材現場で何度もお会いしていますが、彼女がスタートアップの支援にこうも熱心な理由を、ちゃんと知っているいる人は少ないのではないかと思います。今回まとまったお時間を頂き、改めてその辺のお話を伺って来ました。
 話は、スタートアップを支援する理由から、チャンスとは何か? そして、より大きな幸福論・人生論に発展していきました。

スタートアップの支援で世代を繋ぐ

 インタビューの前段として、奥田さんの経歴とキーワードを簡単にまとめると、

  1. 教員でもあった個性的な父の影響により、中学3年生で妹と二人暮らしを始める。
  2. インドの大学院で2年間社会福祉を学ぶ。
  3. 帰国後、国際会議の運営会社に就職。
  4. 26歳で最初の起業、その後海外のIT企業(サンマイクロ、オラクル、アップルなど多数)が日本で開催するカンファレンスの運営で草分け的存在となる。
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ウィズグループ代表・奥田浩美さん(Photo:Masahiro Honda 撮影協力:NOMAD NEWS BASE

 人が物事を生み出すことが好きで、0から1の瞬間にどれだけ立ち会えるかが、奥田さんの楽しみだという。経営者としても、最初の起業は出資者の資金で、現在の会社は自己資金で立ち上げた。1年以内に1/10、10年で1/100とも言われる企業存続率の中、起業や会社運営の酸いも甘いも身を以て経験。さらに、この間(90年代後半から2000年代)に多くのIT企業・経営者の浮き沈みを目の当たりにしてきた。

 本業では、海外のIT企業の本邦初となるカンファレンス運営を次々に手がけ、その道のプロとして実績を積み重ねている。一番新しい世界で勝負すれば、男性・女性も関係ないという自信。これまで女性であるデメリットを感じたことが一回もなかった。

 しかし、2010年9月に開催されたAPEC女性リーダーズ会議の企画に関わることで、一つの転機が訪れる。世界の女性の起業・労働に対する環境を知るにつれ、「周囲の女性のことなんて全く考えてなかったんだ」と愕然としたという。それは、当時10歳だった娘さんの将来を強く意識することになり、続けてきたスタートアップの支援も目的がより明確になった。


 「見方は凄い変わりましたね。時間に区切りが出来るようになりました。子供って0歳から1歳って凄く変わるじゃないですか。小学校、中学校とタイムラインがはっきりしてくる。この子のこういう時までに、成人するまでにこうなって欲しいな。」

 娘さんたちの世代が成人した時、女性を取り囲む環境を向上させるために、「今」何が出来るか。「将来」それが出来るかは年齢的に不安だと、奥田さんは冗談交じりに語る。しかし今、男性・女性関係なく現代の若者を支援すれば、その次の世代の起業や自由な働き方の道がより開けるという信念を持っているのだ。

 「(子供たちの将来は)暗い暗いと言うじゃないですか。可哀想な時代に生まれて、重荷を背負わされたと。でも少なくとも将来を憂うよりかは、目の前の世代を(支援することで)娘を繋ぐところまでいければ。その中の一つで、今一番生かせる所がITのスタートアップなわけですよ。」

 「ずっと掘り起こしてみると、(インドの大学院で)マザー・テレサの研究をしていたときに、なんだかんだ大きいことは言わないで、まずは目の前の人を助けましょう、まずは家族からとか言っているじゃないですか。まずは周りの人一人を幸せにして、もう一人、もう一人と・・・」

「キラキラしたものがいつも降っているイメージの中で生きている」

 奥田さんには、他人のチャンスが見える才能があるという。そのチャンスは、人と人を会わせることで活かされ、その結果さらに自分の周りに素敵な人が集まるという循環を生み出している。奥田さんの個性的なチャンス観を説明してもらった。

 「みんな世の中には中々チャンスがないと言いますけど、自分に合うものがないだけで、チャンスって世の中に溢れている。この瞬間もあちこちにチャンスがあって、降ってきている気がするんです。それがたまたま自分のチャンスじゃないだけ。でも、人とこう会わせたら、その人のチャンスだぞというものは、惜しまず会わせますね。」

 「なんだろう私の特技は、やっかまないことなんですよね、きっと。やっかむどころか、いいチャンスが生まれれば、皆その人達は自分の味方になり更に助けてくれて、もっと前向きなことがやれていく。それは体感的にずっと、人にチャンスを見つけてあげれば、一番得するのはその人の周りの人だなって。(そこには私も)必ず入っていますからね。」

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起業家や投資家が毎晩集まる六本木awabar。取材当日は、渡米を控えたGrow!代表の一ツ木崇之氏も来店。

 「若い子に言いたいのは、(起業に対しては色んな)意見があるんだから、結局自分じゃんということ。ビジネスプランが思いついたのって、その人にとってのチャンスなんだったら、そこを試してみればいいし。私の方はけし掛けはしないけど、あなたがどうなるか分からないし、私はこうだったけど、自分以外のケースでは大失敗のこともあるし。」

 そのことを本人がまず楽しみ、結果、成功した起業家や優秀な人に囲まれ、さらに起業を夢見る若者が集まってくる。なお、奥田さんが支援したいと思う「面白い人」は、嗅覚で分かるらしい。

 「面白い人というのは、今年来年こうしたいと言うよりかは、自分はこういう人生で何をしたいかが漠然とでも。その人自体は分かってないにしても、何かこう幸せにする方向に生きていく。きっと人々を幸せにするような何かがあるか・・・。一緒にいて、いろんな所がギラギラして人を蹴落として渡り歩いていくという人は、分かるじゃないですか。そういう人はピーンと入ってこない。」

今後とキャリアのゴール

 今後の目標は、ITにかかわらず幅の広い繋がりを作ることに加え、これまでのキャリアを総合させることである。

 「今までやってきた福祉や教育やITを何かの形で、あと10年でどうにか結合させなきゃいけないとずっと思ってて。これがあったから、こういう私の人生の中で、この着地点があったんだみたいなストーリーをずっとずっと作っている。」

 先述のスタートアップ支援は既にその結実点のように思うのだが、それについては、

 「来るべきところには来てるんです。毎年自分がどっちの方向に生きていかなきゃいけないかは、過去を振り返って、あと目の前にあるものと、凄く先にあるものを考えながら生きているんで。そんなに突拍子もないことで走っているんじゃない。何かあったものは活かしてあげないと、自分のあの瞬間が可哀想。その為に使命がある。」

 その使命は数年前から見え始めていて、これまでの経歴から、ITとビジネスと福祉の融合点の付近に存在するという。ただし、最近の若者が憧れる「社会起業」という言葉の使用は避けた。そこは行くべきところと自覚しているようだが、まだ腹落ちはしていないとのこと。起業を経験し、お金のドロドロした部分も見てきた人間には、使命感をもって何かをするためにこそ、お金や仕組みの必要性が痛いほど分かる。そのため、そういったビジネス的観点を抜きに語られがちな「社会起業」という表現は使いたくないのだ。

 どんな生き方をしたいか?という問いに対し、以下のように締めくくった。

 「40代後半になると、あと1年しか生きられないかもと思い始めますよね。すごく人間が出来てる人は、社会のためだけにコツコツと生きるんでしょうけど。私の場合は、社会のためも考えるけど、自分の楽しみも考える。」

 「本音は、最高の仕事して、最高に家族とも楽しいことをして、自分自身もこれ以上遊べないっていうくらい遊びたい(笑)」

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awabarでは、こんな奥田さんに会えるかもしれません。

蛇足:私が思うに、
 奥田さんと最初に出会ったのは、確かIVSの会場でした。この業界の錚々たる経営者に注目が集まる中、我々裏方や周りの人間にも気を配る立ち振る舞いが、とても大人の女性に感じたものです。

 その後あちこちのイベントでもお会いすることになり、また日々のオンラインのアップデートからは、毎晩のように誰かと飲んでいるエネルギーのある人物像を垣間見ています。

 今回の取材を終え、こんなにも人が周囲に集まり、信頼もされている理由が改めて分かりました。まず自分のビジネスをしっかり作り、その経験を元に惜しみなくサポートしていること。さらに、楽しむことに仕事もそれ以外も関係ないという姿によって、周りをポジティブな「気」で満たせること。

 本稿でも書き切れなかった”スタートアップの母(あるいは姉かな?)”奥田さんの経歴や思いは、彼女のブログ(特にこのエントリ)を是非読んで欲しいと思います。

著者プロフィール:本田正浩(Masahiro Honda)

写真家、広義の編集者。TechWave副編集長
その髪型から「オカッパ」と呼ばれています。

技術やビジネスよりも人に興味があります。サービスやプロダクトを作った人は、その動機や思いを聞かせて下さい。取材時は結構しっかりと写真を撮ります。

http://www.linkedin.com/in/okappan
iiyamaman[at]gmail.com

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Posted by okappan


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