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「レイジーミュージックラバー(受身型音楽視聴者)がオンライン音楽サービスに参加してくれるようになって欲しい」ーそんな願いから、新たなスタートアップに挑戦する浅枝大志氏。彼は2011年12月20日、仮想空間などの事業を経てソーシャル音楽視聴サービス「Beatrobo」をリリースした。
国内での熱狂的ファンの獲得。オースチンで3月に開催されたSXSWでは直接現地事務局とやり取りすなど万全の体制を整え、北米ユーザーから良い反応を得ることに成功するなど、目をみはるものがあった。
そして2012年4月4日、Beatroboは、2012年3月30日を払込期日として、 サイバーエージェント・ベンチャーズ、KLab Ventures、モビーダジャパンを引受先とする総額612500ドルの資金調達を実施したと発表した。ドル立てにした理由は、本格的に世界展開に乗り出すからだ。米法人も2月22日に設立完了している。
パーティは終わらない
出資比率は非公開で、出資はシリコンバレーのシードランウンド投資で良く使われるコンバーチブルノート(Convertible Notes)で行われる。なお、投資家の一つ「KLab Ventures」は、KLab上場後の2011年11月28日に設立されたベンチャー・インキュベーションの会社で、Beatroboへの出資は第一号案件となるとのこと。
「非常にありがたい評価を受けご出資頂きました。初期段階ではアメリカのVCへも出資アプローチを受けるべく、米法人からスタートしたんです。そして現在は、頻繁に渡米し海外展開の感覚をつかんでいる状態。
ビジネスはグローバルに拡げつつ、ただ、日本も実はマネタイズしやすいのではないかと感じており、全員が渡米するというよりは日本にもチームは分散させるなどを検討している状態。絶対アメリカとか絶対グローバルという考えに縛られる必要はないと考えています。
今回の出資により、スタッフ人件費と固定コストを1年はカバーできる。これまで、スタッフの多くは皆他の会社でフルタイムで働いた後でBeatroboプロジェクトとして苦労して動いていましたが、ようやくBeatrobo一本に集中してもらえるようになる」(ファウンダーCEO 浅枝大志氏)。
音楽体験の連鎖を生み出すBeatroboの第2章
Beatroboユーザーならご存知かと思うが、昨年のリリースから3ヶ月間、機能やサービスの拡充は殆どおこなわれていない。「ただ、どこがクリックされ、どこをどう使われたという調査は行なっていて、それを元に仕掛け直すというのがSXSWへの出展だったんです」(浅枝氏)。
「例えば、フライヤーも白ベースになっていますが、これまでは黒ベースで劇場風の画面だったものが、白に作り変えることで、より参加しやすく、フレンドリーな方向に強化しました。
これはBeatroboの体験を新しいものに変えていきたいと考えているからです。イメージしているのは音楽体験の連鎖。まずプレイリストを作り音楽を流すとDJが出てくる、するとここまでと違う要素として、その曲にLOVEボタンやコメントなどの反応をしたユーザーのロボが出てくるんです。今まではユーザーをクリックしても何も連鎖が出なかったのですが、そのロボのプレイリストが表示されるようにしました。
白ベースにして、各ロボへクリックしやすくしたことでロボへの関係が深まり、SXSWでの評価も「ロボがカワイイ」等が主になるなどの影響がありました。
オーディエンスのロボは、その曲が興味があるわけで、そのロボのプレイリストにも何かおもしろい曲がある。今度は、その曲をクリックすると、DJが入れ替わりプレイが始まるという仕組み。人気のある曲にはロボが集まるため、興味のある楽曲クラスタを触り続けるという流れが生まれました。
今後は、Beatroboでのロボ同志のコミュニケーションをFacebookに反映したり、楽曲へ直接リンクするURLを用してバズを発生させやすくするなど、ロボxロボの関係をソーシャルメディアと連携していきたい。
ただ一方で、Facebookソーシャルグラフを越えた方向も考えてあり、関心のあるジャンルからも楽曲を探すことができるようにしようとしています。Rockというジャンルを作っている人がいたら、その人のロボをお気に入りすることでソーシャルグラフ外の音楽のつながりを生むことができるだけでなく、特定のジャンルの楽曲を深堀りすることもできるようになります。そうなってくると、複数のロボが欲しくなるので、現在の1アカウント=1ロボの関係を見直そうとしています。この辺の工夫が有料オプションにつながると考えています」(浅枝氏)。
ウェブサービスからリアルの世界へ
「ここまではウェブサービスの話。Beatroboを作った理由は音楽を聴き方を変えるというのがテーマ。音楽に出会う機会が減ってしまったから友達を介したり、Beatroboのコミュニティで増し直そうとい考えているんです。
それは別にウェブだけじゃなくてもいい、クラブイベントと連携した展開もやっていきたいと思うんです。現在は6月に計画をスタートしていますが、そこでBeatroboのプレイリストを交換できる「音楽名刺」ガジェットを用意しているんです。
これは、BeatroboのIDが保存されたガジェットで、Beatrobo用アプリがインストールされたスマートフォンに挿入することで、BeatroboID情報を元にプレイリスト交換できるようにするもの。
それにこのロボデザインは、北米でも子供過ぎず幅広い層に受け入れられることが解りました。例えば「有名アーティスト○○氏セレクトのプレイリスト」が、本人のアバターロボのガジェットとアバターで届けられるとしたら? 十分ビジネス的な価値があると思うんです。それに、プレイリスト販売は、楽曲販売のような問題もありません。
「音楽xIT」がイケてるという文化をリアルの世界で創りたい。それをつなぐのがBeatroboであり、このガジェットになるんじゃないかと考えているんです。その流れの中でアーティストのブランド価値を創出して収益につなげていきたい」(浅枝氏)。
【関連URL】
・サイバーエージェント・ベンチャーズ、ソーシャル音楽コミュニティ “Beatrobo(ビートロボ)” へ出資 « CyberAgent Ventures, Inc.
http://cyberagentventures.com/newsrelease/20120404/
・Beatrobo
http://www.beatrobo.com/
・友人と同じ部屋にいるように音楽を楽しめる「Beatrobo」が最高の完成度でローンチしたよ 【増田(@maskin)真樹】
http://techwave.jp/archives/51719917.html
・「Beatrobo」衝撃のリリースから一夜明け…CEOファウンダー浅枝大志氏インタビュー 【増田(@maskin)真樹】
http://techwave.jp/archives/51720103.html
音楽はユニバーサルランゲージ=万国共通ではあるが、その聴き方、楽しみ型に共通項が見出せていない状態。ネット・ソーシャルメディア全盛の時代に、何が必要か。低迷する音楽業界は、ITベースの叡智による変容することはできるのだろうか。浅枝氏の今後にとても期待している。
8才でプログラマ、12才で起業。18才でライター。日米のIT/ネットをあれこれ見つつ、生み伝えることを生業として今ここに。1990年代は週刊アスキーなど多数のIT関連媒体で雑誌ライターとして疾走後、シリコンバレーでベンチャー起業に参画。帰国後、ネットエイジ等で複数のスタートアップに関与。関心空間、@cosme、ニフティやソニーなどのブログ&SNS国内展開に広く関与。坂本龍一氏などが参加するプロジェクトのブログ立ち上げなどを主導。 DJ、emacs使い。大手携帯キャリア公式ニュースサイト編集デスク。TechWaveでは各種イベント、創出支援、スタートアップ支援に注力。メール等お待ちしております! (宇都宮市在住)