モノづくりからコトづくりへ!デジタル施策へ踏み出した「白鹿」の挑戦― ad:tech kansai 特集(6)辰馬本家酒造 端山裕樹氏

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ad:tech kansai ボードメンバーインタビュー特集
関西地域3拠点を舞台に繰り広げられる「ad:tech kansai」のボードメンバーの方々のインタビューを連載形式でお伝えします(特集一覧はこちら)。

辰馬本家酒造株式会社コミュニケーションデザイン部 端山裕樹氏

サニーサイドアップなど複数の独立系PRエージェンシーで外資系企業やスポーツイベントなどの広報を担当してきた端山裕樹氏は現在、辰馬本家酒造株式会社コミュニケーションデザイン部に在籍し、デジタルを始めとするコミュニケーションを担っています。「白鹿」という大きなブランドを持つ老舗企業のコミュニケーションについてお話を伺ってきました。

— 東京のPRエージェンシーから灘五郷の辰馬本家酒造へ。中々珍しい転身ですね。

神戸に地縁があったわけではないのですが、PR時代から続く人のご縁がきっかけでした。20年以上もPRエージェンシーに所属して、担当したことがない産業分野がなくなってしまったくらいでしたので、何か一つの分野に集中してみたいと思っていたタイミングでした。辰馬本家酒造という300年以上の歴史を持つ酒蔵でありながら、古いものに縛られずに新しいものを作ろうとするトップの考えに共感し、入社したんです。

—外部からと、インハウスでのコミュニケーションの違いはいかがでしょう?

PRエージェンシー時代にも酒蔵のPRは経験していて、白鹿としてのエッセンスを加えてニュースを作っていますが、発信の仕方はわかっていても、外部から企画を立てるのとインハウスで企画を立てるのはやはり大きな違いがありますね。エージェンシーはあくまで外から見た「面白いもの」を無邪気に攻めの姿勢で発信することができたのですが、社内の人間になってみると「それはできないな」と守りに入らざるを得なくなってくる。そこをどう乗り越えていくかがインハウスのポイント。乗り越えて攻めに転じられれば強みになります。

—具体的にはどのような施策を行なっていらっしゃるのですか?

今はまず「日本酒を飲んだことがない人」に日本酒を飲んでもらうための取り組みをしています。国税庁の調査(*)で、アルコールの摂取量のうち日本酒はおよそ6%だという結果が出ています。そうなると、日本酒同士で顧客の取り合いをしていても縮小していくばかりですから、残りの94%に対してコミュニケーションを取っていこうと。全国規模で日本酒を流通させている自分たちの立ち位置は「日本酒ビギナーの育成」だと、モノづくりからコトづくりへとシフトチェンジをしたんですね。お酒が美味しいのは当たり前、「米を笑いに!をテーマにお酒って楽しいよね」を作っていくことが私たちの大切な役割だと考えました。

その戦略の中では外国人も日本酒ビギナーという捉え方になります。初めての方にトライしてもらうという目的は一緒ですから、もちろん彼らもターゲットとして視野に入れています。そこで外国人が日本女性の美しさを感じる瞬間はいつなのかを調べたら、着物を着て日本酒を飲んでいる後姿のシルエットに魅力を感じるということがわかったので、花束をイメージした酒器を開発しました。さらに酒器だけでなく、日本酒のボトルを運ぶための配達袋を現代風にアレンジした商品を開発し、日本酒を取り巻くものを作っていく。これはインハウスじゃないとできない施策です。

—確かに、アクセサリー類まで開発するのは社内にいなければなかなかできない企画ですね。では、デジタルにも精通している端山さんが日本酒業界のデジタルコミュニケーションについて感じていることはありますか?

地酒メーカーのデジタル施策はフットワークが軽くていいものが多いですね。クラウドファンディングでお酒を作ったりなんていう施策もそうですし、InstagramやfacebookなどSNSをうまく活用して消費者とのコミュニケーションをとっています。情報デザインという観点からも地酒はわかりやすく、自分ゴト化されやすい。共感をうむインタラクティブな世界を地酒メーカーは先行して取り組んでいます。逆に今は大手酒造が出遅れていると思います。ターゲットに唯一直接メッセージを届けられるデジタルマーケティングには取り込んで行かなければいけません。私たちも今、「ソトノミ」というテーマを掲げて、SNSで流行しているグランピングにぴったりの日本酒を開発するなど、殻を打ち破るチャレンジをしています。

—ad:tech神戸ではキーノート講演に辰馬社長がご登壇されますが、そのあたりのお話も伺えるんでしょうか?

そのチャレンジの話はできるといいですね。私は伝統と伝承には違いがあると思っていて、伝承は変えてはいけないものだけど、伝統はイノベーションでどんどん変えていくべきだと考えているんです。何しろ灘(神戸・西宮)は江戸時代に「清酒」という大ヒット商品を生んだ街なんですよ。次々とビジネスを生んでいく力があるはずなんです。ですから、キーノートだけでなく、ad:tech関西全体を通じて「うちも同じ悩みがあるな」と共感をしてもらいたいと思うし、一緒にチャレンジできる企業間交流をぜひ生み出していきたいです。

—楽しみにしております!ありがとうございました(了)

(プロフィール)
端山裕樹
辰馬本家酒造株式会社 コミュニケーションデザイン部
プラップジャパンなど複数の独立系PRエージェンシーにおいて、外資系企業や国際スポーツイベントなどの広報を担当。その後、サニーサイドアップでは、PR本部副本部長として外資系消費財メーカー、食品、行政・官公庁などあらゆる企業、団体のコミュニケーション戦略の企画から実施までを行ってきた。また、同社の広報・IR部長としてセクションの立ち上げから、IPOのコミュニケーション戦略を統括。広報コンサルティング20年のキャリアを活かし、現在、350年以上続く伝統のある酒造メーカー「白鹿」のコミュニケーション戦略を担う。

(*)成人1人あたりの酒類販売数量表:
https://www.nta.go.jp/shiraberu/senmonjoho/sake/shiori-gaikyo/shiori/2016/pdf/006.pdf#page=4

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アドテック京都
日程:2017年7月18日(火)
場所:みやこメッセ
参加者数:1,800名+

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日程:2017年7月19日(水)
場所:堂島リバーフォーラム
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日程:2017年7月20日(木)
場所:KIITO(デザイン・クリエイティブセンター神戶)
参加者数:1,000名+

うえの みづき

うえの みづき

お茶の水女子大学卒、民俗学を専攻し在学中はセーラー服やルーズソックスなど女子学生の制服文化について研究。新卒入社した出版社のベンチャー部門で法人営業を担当するも、クライアントの「紙媒体の予算はデジタルに回すことにしたんだ」の一言にショックを受け、web業界へ。
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