どこにいても力を発揮する「会社を辞めない という選択」 奥田浩美さんの最新刊 @maskin

Re:Work, 書評HiromiOkuda, 奥田浩美, 日経BP


[読了時間: 4分]

 「人はどんな場所にいても、社会を動かす仕事ができるはずだ」。

 本書の冒頭につづられたこの一文を読み、全身の細胞がすべて入れ替わってしまうような感覚に包まれた。なぜなら仕事や生活、そしてすべての人の人生そのものを救済するような力があると感じたからだ。

 人はどうすることもできない苦境を、自分以外の誰かに原因があると決めつけたがる。何もしなくても何をやっても大した痛みはない。それどころか楽過ぎて、責任転嫁のスパイラルはその周辺の人々を巻き込んで強大な猛威へと発展していってしまう。しかし、すべての人にとって、その人自身を取り巻く結果や事象に無関係であるなんてことはない。何もやらない社員ばかりだと嘆くばかりのあなた自身は、すでにそのマイナスのスパイラルに加担していると考えるのが妥当だ。

 自分が活躍できない理由を他人の責任にし続ける人は、どんな会社にいっても、どんな場所にいってもそのままでは活躍は難しいだろう。逆に、社会を動かすほどの仕事をする人は、どんな会社にいても、どんな場所にいても必ず人々をゆさぶり、大きな一歩を遂げるはずだ。

 この本は、IT業界を長年見続け、自らも起業家・事業家として活躍を続ける奥田浩美さんの最新刊「会社を辞めない選択」というもの。日経BPから2015年2月9日に出版される。タイトルからすると会社を辞めるかどうかの方法論のように見えてしまう部分もあるかもしれないが、仕事という概念そのもの、働き方についての気づきとなるエッセンスが大量に詰まっている本と考えていただきたい。


奥田 浩美「会社を辞めないという選択─会社員として戦略的に生きていく」|Amazon
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会社の役割とは何か

 いま理由なき打算があらゆる地面を埋め尽くしている。辛かったら出てしまえばいいし、楽しそうならすべてを放り投げて飛びつくのが当たり前。失敗したら、謝まって別なことを始めればいい。誰かの勧めで人生を変えるくらいの大胆さを誰もが持つようになったものの、目の前にある課題や問題は放置したままで、結局誰の心もつかまず、何も変えないまま、空虚な熱狂に朦朧としたまま時間が過ぎてゆく。
 
 そんな状況に対し、著者の奥田さんは本の中で、まず「社員 vs 会社」みたいな対立構造は止めようと指摘している。「大企業 vs スタートアップ」「東京 vs 地方」とか恣意的なカテゴライズによる二項対立構図は、ムラ社会的な閉鎖性をもたらすだけでなく、個人やチームの可能性を破壊してしまうと考えられるから。本書では、まずその固定観念を外すが必要と主張する。

 たとえば、会社での仕事は「スポンサー付きのチーム戦」である。

当然、社員個人もチームの一員としてゴールを目指して協力しあってゆくことになる。チームメンバー同士が歪みあっていては決して力は発揮できない。もちろん、一人で戦うことはできるかもしれないが、チーム各位が協調し、支えあい一丸となることで、個人の力を最大化することができる。それがチームであり、会社で働くということの最大のメリットであり醍醐味だろう。しかも、大きな会社になれば、さらなるバックアップも期待できる。そう考えると、こんな有利な条件はないだろう。

 ただ、そんなメリットがあるにも関わらず、大小かかわらず企業が疲弊しているのはなぜか?本書は「働く意味」の不在と鋭く指摘している。

その場に立った日の気持ちを忘れてないか?

 社会人であれば誰でも新しい仕事やプロジェクトの門出に興奮したことがあると思う。大きな夢や抱負、さまざまな期待に胸を膨らませ「ここで、目標を成し遂げよう」と誓いを立てたのではないだろうか?

 ところが、多くの人が、時間の経過をともにそのことを忘れてしまう。何のためにやっているか、どうしてここにいるのかすら曖昧になってしまい、そこから負のスパイラルが始まることになる。

 どうして忘れてしまうのか?それは「理由」を失ってしまっているからのように思う。なぜ、その場にたったのか、なぜやろうとしたのか。自分の心をゆるがしたその衝動の理由こそが、社会に生きる人それぞれの原動力であり、壁を突き破るきっかけとなる。決して、会社が、誰かが悪いのではなく、各位が自分の意欲を信じなかったこと、自分に正直に愚直に前に進もうとしなかったことにすべての原因がある。

 本書は、そういった概念的な課題感を乗り越えるために、個人の戦略作案であるとか、金銭感覚の磨き方、そりが合わない人との連携の仕方の必然性を丁寧に説明してくれる。それぞれがリアリティのある解説になっているため、気づきを得られるだけでなく、すぐ取り入れることができるのがいい。

 仮に、あなたが負のスパイラルから決別し、自分の意欲や衝動に正直に、自分なりの考えやビジョンを持ち、多様な人とのネットワークを拡大し、具体的なプランを着実に実行していくことができれば、どの組織でも、どの地域でも、どんな環境でも突き抜けることはできるようになるだろう。おそらくたくさんの課題や問題があっても、きっと乗り越えられるだろう。多くの社会的成功者がそうしてきたように。

書籍「会社を辞めないという選択」について

奥田 浩美 著
四六判 200ページ

価格 : 1,512円(税込み)
ISBN : 978-4-8222-6842-8
発行元 : 日経BP社
発行日 : 2015/02/09

会社を辞めないという選択

 会社員として戦略的に生きていく

内容紹介

「会社にいるとやりたいことができない!」と思ってない?

自分だけの強みを活かして大きな仕事をなしとげる方法を、
スタートアップ企業1000社の栄枯盛衰を見続けてきた起業家・奥田浩美が説く。

第1章 起業家思考があなたの強みを活かす
 ・自分が今の会社にいる理由とは
 ・会社を“使って”やりたいことをやるには
 ・あなたのビジョンと会社のビジョンを考える
 ・会社員は最もかっこいい働き方ができる

第2章 会社に居るからこそ社会を大きく変えられる
 ・今の社会に足りないものは一体何か
 ・社会はあなたにどんな能力を求めているのか
 ・会社を、そして社会を、あなたが生き延びさせる
 ・黒子から黒幕へ

第3章 個人を活かすチーム作りと成長戦略
 ・苦手な人は良い持ち駒になる
 ・欠点を埋めるより、長所を鋭利にすべし
 ・“怒る”という価値の減少

第4章 IT、地域、情報格差 -ビジネスで人を幸せにするには
 ・情報格差が広がりすぎている
 ・本当の意味でのモバイルワークを
 ・無力感を超えて


奥田 浩美「会社を辞めないという選択─会社員として戦略的に生きていく」|Amazon
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【関連URL】
・奥田 浩美 の 会社を辞めないという選択─会社員として戦略的に生きていく | Amazon
http://www.amazon.co.jp/gp/product/482226842X



蛇足:僕はこう思ったッス
maskin2011009rev.fw 本書の中で一番考えさせられたのが、後半にある「怒るという価値の減少」という項目です。共感とか絆とか、就労環境の改善とかの流れで、いがみ合いのない職場は増加していると体感的に思いますが、逆にいいかんじにやり過ごす人が急速に増加しているように感じます。問題は放置、または完全方針転換。全然解決してないことを良しとするどころか、問題に気づきすらしていない人が大量に発生しています。本書の中では的確なヒントがありますが、おそらく本書が提言するようなシナリオで成長しようとする人と、そうでない人とでアプローチが違うでしょうし、今後、どう変化していくのか考えさせられました。

最後に社会を変えるようなことをする人のパターンですが明白です。大きな仕事ができない人は「ダメと決めつける」「(あらゆることに)理由がない」「他人に依存」のパターン。これは大企業などに勤務する人に多いように見えますが、スタートアップやベンチャー企業でも同じで「俺はでっかいことをする」というけど、中身はないパターンなんかはそれに該当しますね。個人事業主でも同じ。結局のところ前述した「大企業」「スタートアップ」「地方」といったボーダーとかカテゴライズはまったく無意味。

これらの話は、過去40超のスタートアッププロジェクトで働き、会社の概念を超越したTechWaveをマネージし、海外のグローバル企業に勤務するという流れできた僕の体験において、海外の会社を含め共通すると思います。この本の出版を機に感じたのは、こうしたダメダメスパイラルも良しとするという風土があったなと改めて驚きつつ、それら時代の荒波を乗り越えるにはそうした「個をつなぐ強い意思」が必要なんだとという点でした。

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Editor In Chief at TechWave.jp
1990年代初頭から国内外のソフトからハードまで50以上のスタートアップ立ち上げを経験。平行して雑誌ライターとして疾走。シリコンバレーでガレージベンチャーに参画後は、ネットエイジを筆頭にスタートアップに多数関与。ブログやSNSの国内啓蒙、ソニーの社内イノベーション事業など関与。直近では通信キャリアのニュースポータルの立ち上げ期の編集デスクとして数億PV事業に育てた後、TechWaveにジョイン。世界最大のIT系メディアであるスペインの「Softonic」に参加後、2016年からTechWave第三章として新興メディアの開発を再スタート。国内最大規模のスタートアップ&B2Bイベント「アプリ博」のオーガナイザー。
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