Y Combinator卒業「Teespring」共同創業者ロングインタビュー 採用から顧客維持、VCとのつきあい方やプライベートまで

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PeraPeraコラボ!
編集長のmaskinです。シリコンバレーで読まれているブログポストをキュレートし日本語に翻訳して発信する「PeraPera」とのコラボとして、インタビューや翻訳記事をお届けすることになりました。PeraPera創業者のMike さんは東京生まれですが、アメリカ・バークレーで育ち、サンフランシスコでスタートアップを創業後、このPeraPeraの事業を立ち上げるため東京に引っ越してきたそうです。(iOSアプリ版PeraPeraはより多くの記事が読めたり、希望の記事を提案したり投票したりできるプラットフォームになっているとのことです。無料ユーザーは翻訳された記事の50%読め、有料のプレミアム会員は読み放題になるとのこと)。今回、Tシャツ販売プラットフォーム「Teespring」の共同創業者で、Y Combinator卒業者のCTOのエバン・スタイツークレイトン(Evan Stites-Clayton)さんのロングインタビューをお届けします。

TeespringはオリジナルTシャツの製造・販売までをカバーするクラウドファンディングサイトである。Y Combinatorを卒業後、Andreessen Horowitz (アンドリーセン・ホロウィッツ) やKhlosla Ventures (コースラ・ベンチャーズ) などから5600万ドル (約64億円) を調達している。Teespringを通して既に190万枚のTシャツが製造・販売されている。

ー 各ステージでのテック系の人材の雇用と管理に関して、CTOとしての課題はどんなものでしたか? 何か教訓はありますか?

テック系の人材を雇うのは、最初は大きな課題だった。本当に、創業当時はどうしてもエンジニアを雇うことができなかったんだ。何人か見つけて、初期段階で何人かすばらしい人材を雇うことはできた。僕が会社のためにしたことで、一番大事なことの一つは、基本的に一から僕たちのコードベースを再構築する、もっとすばらしい技術的な才能を持っているリードエンジニア/アーキテクトを雇うことだった。

これは、いわば突然起こったようなものなんだ。僕は、Skypeでランダムに面接をしていた。ここで僕が使ったワザは、最初はベイエリア外に目を向けてみるというものだ。僕たちは在宅の仕事を探している人たちを獲得することができたんだ。プロビデンス(編集部注:アメリカ合衆国ロードアイランド州最大の都市・東海岸)にいたころは、ほぼ不可能だったからね。プロビデンスにいる僕たちと一緒に働いてくれる人を見つけるには、この人たちがどこか別の場所にいて、そこから働いてもらうという方法しかなかった。僕たちがベイエリアにやって来た後でさえも、僕たちの会社に参加してくれるひとを見つけるのは思っていたよりも難しかった。

エンジニアリングの才能を持っている人たちにとっては、スタートアップか大企業かは関係なく、たくさん選択肢があるんだ。僕たちの数字はかなり良いもので、成長もしていたけど、エンジニアたちにとって、このTシャツ会社っていうのはあまり魅力的なものではなかったんだ。何か本当に面白いエンジニアリングの課題があるものだとは思わないでしょう。僕たちが新しいリードアーキテクトを実際に雇ったときに、僕が試してみてうまく行ったのは、何ていうか、直感に頼ってみたんだ。Skypeで15分ぐらい話をした。僕は彼のコードだとか、そういうものの技術的な評価は一切しなかった。そういう資格が自分にはあるとすら思わなかったから。彼は本当に賢そうに見えたから、その場で彼にオファーを出したんだ。「じゃあ、これぐらいの額でどう?」って言っただけだよ。そうしたら彼は、「いいよ!」って返してきた。

僕はその最初のSkypeコールで取り決めをしたってわけ。すばやく行動して、何かを実現させる態勢を作るのは、大きな会社にはあまりできなくて、スタートアップにはできることだと僕は思う。これは、本当にすばらしいエンジニアを獲得できるかどうかに関して、決め手になる場合がある。しかも、それだけじゃなかったんだ。彼は、「わかった。じゃあサンフランシスコに引っ越すよ」って感じだった。僕は、「ああ、僕と一緒に住みなよ。家に空き部屋があるから」って言ったんだ。つまり、これで一度に、僕たちは次の従業員を見つけて、自分はルームメイトを見つけたってことなんだ。彼は本当にすばらしい人だったし、今では自分の会社を始めたんだ。僕はそこのエンジェル投資家だ。初期の採用はこんな感じで、その後は、エンジニアを雇うのがどれほど難しいことなのかを理解した。

もう一つ難しいのは、すでにエンジニアリング担当の経営者がいない会社では、たいていのエンジニアは働きたがらないんだ。自分たちよりも上級の人がいて、この人から学んだり、管理してもらえることを望んでいるんだ。でも、どうやってこういう人たちを見つけたらいいだろう?エンジニアリング担当のマネージャーや、上級エンジニアを、どうやって見つけたらいいだろう?

エンジニアリング担当のVPを雇うことに関して話を始めたんだけど、これは高額なプロセスだから、本当に難しい。最終的にはそうしたし、今、僕たちが抱えているエンジニアリングチームができたのは、そのプロセスのおかげだと言わざるを得ないね。大学へ足を運んだり、ハッカソンを開催したり、講演を行ったりして、一口に言えば僕たちのブランドを宣伝し、Teespringの名前に対する認識をこのコミュニティの中に生み出そうという努力もたくさんしたんだ。

インターンや大学生をたくさん雇っているわけではないから、これが一番効果的な戦略かどうかはわからないけど、後々のトップレベルの人材を獲得する役に立ったと思う。本当の人材確保戦争は、経験のあるエンジニアの間で起こるもので、社会に出てくる新卒の間ではないんだ。こういった人たちはたくさんいるし、3カ月のブートキャンプを終えたばかりの人たちもたくさんいる。本当に難しいのは、エンジニアリング担当のすばらしいマネージャーや、すばらしい上級開発者を見つけることだ。時間はたくさんかかったけど、組織全体を作り上げる助けになってくれた、すばらしいエンジニアリング担当VPを雇うプロセスは、その努力に見合うものだった。

ー どうやって最初のユーザー100人を獲得しましたか?

電話しただけだよ。本当にコールドコールをしていたんだ。僕たちには最初コミュニティがあったんだ―キャンパス周辺の人たちや、知り合いだ―だから、まずはこういった人脈に当たってみた。その後、資金調達目的で僕たちのプラットフォームを使う、一番のユーザーになるだろうと最初に考えていた、非営利団体を特定しようとした。ひたすら電話をかけたんだ。営業担当の人を雇って。彼が電話をかけて、ほぼそれだけだね。

最高のユーザーになるだろうと思っていたユーザーは、実際には最高のユーザーにはならなかったというのは興味深かったね。これは間違いなく教訓になった。非営利団体に電話をかけて、実はインフルエンサー何人か、それにテックブログを使っていたんだけど、最初に本当に成功したユーザーのグループは、Facebookページにたくさんの「いいね」がある人たちだった。「いいね」がたくさんあるFacebookページを持っている誰かが僕たちのことを見つけて、キャンペーンを開催したんだ。

これは、僕たちがありとあらゆる営業の努力を試した後だ。僕たちにとって本当に色々とうまく行き始めたのは、Facebookページを持っている人たちが僕たちに気付き始めた頃。この人たちは、ただTシャツを作って、ページに投稿して、このページからすぐに利益を上げることができた。以前は、Teespringほど効果的に、Facebookページであなたのオーディエンスを収益化する方法はまったくなかった。だから、こういう人たち何人かが使い始めたら、山火事みたいに広まっていったんだ。僕たちが本当に成長したのはその頃だ。

ー Tシャツの供給側に関してはどう考えついたのですか?

一緒に仕事をしていた印刷屋が、シャツを個別に発送するっていう、この新しい活動に取り組めるようにするため、僕たちはバックエンドで特別な技術をたくさん開発したんだ。最初は独自の設備はなかったけど、今ではある。ケンタッキーに設備を持っていて、僕たちのビジネスのほとんどはここで運営している。

でも、初期の頃には、どんな印刷屋でも簡単に僕たちのシステムに接続して、デザインのファイルをダウンロードし、印刷したり、発送ラベルも印刷できるようにするソフトウェアを、僕たちは開発したんだ。これで、印刷屋はエンドバイヤーへ個別に各シャツを発送することができる。これが、僕たちの仕事の大部分だった。フロントエンドで何でもしたけど、技術的な観点からすると、僕たちがバックエンドで開発したものの多くが、実際にこの仕組みを可能にしたんだ。

ー 既存顧客の維持を改善するためにしていることは何ですか?

これは、初期の頃にはあまり考えていなかったことなんだ。たぶん、僕たちのビジネスに悪影響が出るぐらい。顧客維持については本当に何も考えていなかった。僕たちが考えていたのは、「皆が資金を調達できるすごいツールを作ろう。もし資金を得られたら、何度も戻ってきて、もっと使ってくれるだろう」ということなんだ。

ここ最近になって目が覚めた。特に、二番煎じやクローンのサイトがたくさん出てきたからね。今では皆、どこか別の場所へビジネスを持っていくことができるから、どうやって既存顧客を維持しよう? 僕たちが、ブランドや店舗を構築できるようにすることに焦点を当てはじめて、ユーザーから購入する人たちとの関係を築き始めたのはこの頃だ。これは、ただ一週間後には終わってしまう一度きりのキャンペーンをする代わりに、ユーザーが実際に顧客を開拓し、皆が何度も訪れて買い物したくなるような店舗を作れるようにするためだ。今では、僕たちのデフォルトになっているのは、ただキャンペーンを作って一週間で終わってしまうというのではなく、製品を作って店舗を立ち上げるということなんだ。

もう一つ付け加えると、僕たちは顧客維持に関して、本当に強力な数量ベースの割引プログラムを導入した。ユーザーはユニットを販売すればするほど、翌月の価格設定が安くなるんだ。だから、ある価格設定の層を達成すると、価格がもっと安くなっていく。これが、僕たちのシステムを通じてたくさんのユニットを販売するユーザーに報酬を与えるために、僕たちが用意した現行の報酬システムだ。

ー a16zやKhoslaのようなVC企業は、あなたと会議をするとき、どのような質問をするのですか?

違ったタイプの質問が二種類ある。ひとつは、君のビジネスの現状に関する質問だ。あなたがどう運営しているのか、現時点までの成長はどんなものか、利益はどんな感じなのか、ということを彼らは知りたがっている。あなたがどこへ向かっているのかということに関する質問もたくさんするね。何十億ドルにつながる、君が自分の会社に対して持っているビジョンを、彼らは本当に見たいんだ。これが彼らの求めていることだよ。株式を公開したとしても、数億ドルの会社になるような会社は求めていない。これは彼らにとってはかなり悪い結果だ。

多くの会社に投資をしていて、特にこういった大手のVCの話をすれば、投資をしている会社が巨大になることを望んでいるんだ。何十億ドルもの結果を求めているわけだから、君は自分の会社に「私たちはこうしてその課題に取り組む準備が整っています」という位置付けができなくてはならない。これに関して非現実的になりすぎないようにしないといけないと僕は思う―このバランスは重要な要素だね。パッと出向いていって、「私たちはこの数十億ドル市場に挑戦して、これを独占します」と言うわけにはいかない。どうするつもりなんだと疑問に思われてしまうだろう。

どうするつもりなのかについて話すときには、もっと小さな数字に注目し始めると役に立つと、僕は思う。何か間に橋があるかのように見える必要があるんだ。「今のところ、1000万ドルの収益を上げています」というのと、「これが1億ドルの収益を達成するための明確な道のりです」との間だ。そしてその次に、「私たちがこれを遥かに超えた結果を出せるだろうと思う理由に関する、もっと理論的なアイディアを紹介します」となる。これを分解していくアプローチが、「私たちがどう次のステップに到達するかを紹介します」につながる。これは実行可能で現実的に感じる必要がある。

次に、「私たちがどう大きなビジョンに到達するかを紹介します」となる。これは、VCから資金を調達した場合に得られる機会のように感じなくてはならない。こういった潜在性を君が本当に信じている姿、そして、会社が向かっている方向はここなのだと君が身構えている姿を目にするのは、彼らにとって本当に印象的なんだ。必ずしも、「これだけの資金があったら、その資金をこう使います」というように、超具体的である必要はない。でも、一般的には提示すると役に立つことだね。「現時点では私たちはこれらに取り組んでいませんが、もっとリソースがあったら取り組みます」みたいなことを言うんだ。

ー 仕事以外の楽しみは何ですか?

数独をすること。ロッククライミング。でも、最近はすごく忙しくて、あまりやってないんだ。彼女と一緒にたくさん時間を過ごすこと。彼女はすばらしいよ。ただ一緒にのんびりして、ときどき料理したり。本当にたくさん働いているから、あまり他のことはしていないんだ。昔はよく旅行したし、自転車に乗るのも好きだ。少しは運動したり、何か心をスッキリさせてくれることをするのは大事だと思う。今年は、毎日瞑想をしてる。新年の抱負の一つみたいなものなんだ。詩を書くのも大好きだ。趣味はたくさんあるんだよ。音楽も作る。何でもやるようなものだけど、だいたい仕事をしてるね。

ー オススメの本を3冊紹介してください。

最近読んだ自己啓発系の本2冊は、僕にとってかなり大事だった。去年、エックハルト・トールの『The Power of Now』と、近藤麻理恵の『The Life-Changing Magic of Tidying Up(原題: 人生がときめく片づけの魔法)』を読んだ。僕の家は今ではかなりきれいになって、家の片づけをしたら、自分の人生からアンビエントな不安を取り除く助けになったよ。それ以外に、フィクションではたぶんカート・ヴォネガットの『Slaughterhouse-Five』をオススメするかな。すばらしい本だから。

ー エンジェル投資をするとき、あなたが重要視することは何ですか?

僕は、熱心なエンジェル投資家ではない。投資資金はそれほどないから。でも、投資をするとなったら、親密さは一つの要因だ。どれぐらいよく創業者のことを知っているか?人間としての彼らを、どれぐらい信じられるか?それから、チャンスを逃すことの不安という要因もある。たとえば自分は投資をしないことにして、後々その人が大成功したら、自分は本当にバカらしく感じるぐらい、その人のことを知っているか?他に気をつけているのは、数字やトラクションだ。製品をすばやく反復開発して、ある程度成長させる能力を持っていると証明している人たちに注目しているよ。製品をすばやく反復開発するのは本当に大事なことだと思う。でも、ユーザーに関して成長を促せられる方法でそれができたら、もっとすばらしいね。僕はこういう観点で、こういったことに注目している。

ー 投資家を探していたとき、資金以外で彼らに期待していたことは何ですか?

僕たちが投資家の人たちに求めていた一番重要なことは、すばらしい人材を採用する助けになってくれるということだ。良い紹介をしてもらえて、これが本当にうまくいった部分もある。こういった人脈のネットワークを活用し始めたり、もっとレベルの高い人材を雇うことができるようになるのに必要なのは、いくつかすばらしい人脈を見つけたり、すばらしい役員を何人か雇うことだ。提供してくれる資金の他に、僕たちが探していた一番大事なことは、こういった人脈だったんだ。会社にアドバイスをしてくれる人もいて、優れた視点やアドバイスをくれることもあるけど、多くの場合、投資家の人たちは、創業者の君と同じぐらい君のビジネスに没頭しているわけではない。だから、最終的には、一番よく分かっているのは君なんだけど、投資家の人たちが持っている優れた人材とのつながりは、創業者の僕たちには決して得られないような種類のものだと思う。

ー あなたがYCから学んだことで好きなことは何ですか?

僕がYCから学んだことで好きなことは、成功する会社を築くには、違った方法がいくつもあるということだ。本当に様々なYC創業者たちとたくさん出会って、多くの会社を目にして、すばらしいメンターの人たちと知り合い、交流をすることで一つ学んだのは、僕が考える成功の方程式の要素というのはいつも正しいわけではないということなんだ。それに、成功を見つける方法や、何か意味のあるものを作る方法は、他にもたくさんあるということ。一番の収穫は、それから、今も続いているYCとのつながりから得たものでもあるんだけど、すばらしいコミュニティがあるということ。それに、問題の取り組み方や、解決しようとしている問題の種類は本当に色々あるんだ。すごく刺激的だね。

【関連URL】
・Teespring
https://teespring.com

蛇足:僕はこう思ったッス
maskin-bit-2016 シリコンバレーで起業したことがある側の身として、こうしたアメリカンドリーム的な雰囲気が伝わるテキストはとても貴重だと思う。多様な人が夢を追っている場所。成功者はエンジェル投資家(個人投資家)に回る。人的ネットワークが、スタートアップの不十分な体制を補ってくれる。日本のスタートアップブームは、アメリカ・シリコンバレーのエコシステムを真似て王道を見出そうとする意識がとても強く感じるが、Evanの言葉にもあるように「成功の方程式の要素というのはいつも正しいわけではない」というのがシリコンバレーの価値観のように思う。完璧を求めず、多様性を認め、模索しながら前に進むということが、想像もしなかったような成長をもたらすのではないか?と感じた。

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Editor In Chief at TechWave.jp
1990年代初頭からソフトからハードまで50以上のスタートアップ立ち上げを国内外で経験。平行して雑誌ライターとして疾走。シリコンバレーでガレージベンチャーに参画後は、国内でネットエイジを筆頭にスタートアップに多数関与。ブログやSNSの国内啓蒙、ソニーの社内イノベーション事業など関与。通信キャリアのニュースポータルの立ち上げ期の編集デスクとして数億PV事業に育てた後、TechWaveにジョイン。世界最大のグローバルIT系メディアであるスペインの「Softonic」の元日本編集長
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