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今ほとんどの中学高校生は、大人が喧伝する社会に対するさまざまな期待と不安にたちすくみ、仲間と連れそいながら先の見えない階段を上っているのだろう。ただ、鶴田浩之 氏はちょっと違っていた、「0から1へと、1から10へは違う」。そう感じていた彼は、創る側に立ち、小学生高学年から簡単なビジネスを開始して、16歳で親の扶養を外れ個人事業主として起業した(「16歳で起業して4年間やってきて思うこと【鶴田浩之】)。
大学時代は学生向けサービスやアプリを立ち上げ」、その流れで日本のスタートアップシーンの草分けである西川潔 氏らにに認められ株式会社Labitを2011年4月に創業している(「20歳起業家の新たなスタート…まず手がけるのは時間割のソーシャル化【増田(@maskin)真樹】」)。そこで開発した「すごい時間割」は、日本最高峰のプレゼンテーションイベントIVS LaunchPadで優勝(「「すごい時間割」でLaunchPad優勝 20歳起業家 Labit社インタビュー #IVS」)、個人の活動においても被災経験から立ち上げた「prayforjapan.jp」が注目を浴びるなど、良い意味で大人たちの予想を超える若干20歳の青年だった。
しかしながら、こんな話をすると25歳になった鶴田 氏はこう返す。「まだ、ふり返えるタイミングじゃない。起業から5年経過したけど、僕の気持ちは当時と変わってないんです」と。
2016年5月25日、鶴田氏の会社「Labit」は、2つのリリースを発表した。一つは、渋谷・道玄坂に2016年6月25日にオープンする新刊書店&カフェ「BOOK LAB TOKYO(ブックラボトーキョー)」。そして、中古本の個人間売買サービス「ブクマ.com」だ。
そこはかつて「ビットバレー」と呼ばれていた
「BOOK LAB TOKYO(ブックラボトーキョー)」は、新刊1万冊を販売する書店兼カフェだ。いわゆるライフスタイル系の店舗ではなく、クリエイターや技術者などが興味を締めすような書籍をセレクトし「つくる人を応援する」というコンセプトで店内を統一する。
BOOK LAB TOKYO (ブックラボ トーキョー)
【テナント所在地】 〒150-0043 東京都渋谷区道玄坂 2-10-7 新大宗ビル1号館 2F
※ 渋谷駅各線 徒歩 4分 井の頭線 徒歩 1分 / 渋谷フォーラムエイト横
【営業形態】 1万冊の新刊書店、40席のカフェ、60−80人規模のイベントスペース
【オープン予定日】 2016年6月25日(土)10:00
【営業時間】 AM 8:00 – PM 24:00( ※ 2016.6.30 までは 10:00-22:00 )
【公式サイト】 http://booklabtokyo.com
「BOOK LAB TOKYO(ブックラボトーキョー)」の誕生には、前出の西川潔 氏の存在があった。西川氏は1990年代末にここ渋谷道玄坂界隈を拠点に「ビットバレー」という言葉を生み出し、IT業界のみならず多くの業界業種に刺激をあたえ、実際にここから多数の起業家や成長企業が生まれていったのだ。
「西川さんと、出資や投資といった形以外の起業家やクリエイター支援はないか? そんな話をしている時、本屋兼カフェの構想が生まれていきました」(鶴田氏)
「この店は、まずは4年。経営的に問題無い形できちんと経営していきます。しかし、あくまで営利的な目的ではないんです。だからこそ、クラウドファンディングで支援者を集め、その社会的責任に応えるという大きなミッションを抱えています。しかしながら、コンセプトを押し通すというよりは、次第に ‘道玄坂ではあたり前の店’になるほうがいいとも考えています」。
しかしながら、もう一つの事業である古本のフリマアプリ「ブクマ.com」も本という共通項がある。お店が営利目的ではないとすると、どういった関係があるのだろうか?
古本のCtoCアプリという壮大なビジョン
「ブックラボトーキョー」と同日リリースとなった「ブクマ.com」について鶴田氏は、「実は偶然、このタイミングで、かつ本というモチーフが一致したものの関係は全くないんです。まさにセレンディピティでした」。
「ブクマ.com」は、書籍のバーコードをスキャンするだけで、簡単に出品することができる本専用のフリマアプリ。かつて、Amazon.comが書籍やCDの通販から始めたように、個人間で取引のしやすいアイテムとして本を選択した。
「インターネット世代の事業創造には「オフ」→「オン」というセオリーがあると思うんです。その中でも僕は、予想もできないような領域にサービスのビジョンを宿すのが好きなんです。かっこつけてますかね、ナルシストというか。
例えば「本を読まない時代に本?ちょっと違うよね」と言われてしまうと思うのですが、実際よく調べてみれば中古本市場は大手チェーンが流通量のおよそ60%を寡占してしまっている。そうなると残りのシェア20%を獲得するというのは夢というわけではなくなってくる。日本で古本で成長できていけば、その次のアイテムの展開も考えられるし、例えば古本市場の取引に印税分配のような仕組みを投入すれば、市場全体の意味合いが変わってきます。ブクマ.comの場合、手数料は10%ですが、そのうち1-2%を著者に還元することができる。そこまでできていけば、いずれは世界規模のCtoCネットワークも描けるかもしれない。
いずれにせよ、5年前の自分の周りの環境は大きく変わっています。お金も人も、変わらないのは自分の気持ちだけ。同世代の仲間は、企業などで経験を積み、再び小さいところでチャレンジしてみたいと集まってきてくれます。次何するかわからないような自分のところに、これだけの人材が集まりチームとして形成されることに興奮すら覚えます」(鶴田氏)。
Labit社は、創業期に西川潔氏らに出資を受けた後、2012年10月にリクルートストラテジックパートナーズから出資を受け、それ以降の増資はなく、事業の譲渡益で存続してきた。2015年12月にはメディア「ゲームエイト」の譲渡にともない、Labit初期からのメンバーも離れることとなった。現在、Labitの社員は鶴田氏のみ。社員は7名ほどで、同世代のカナダ人インターンもエンジニアとして参加している。本にまつわるドラマによって、まさに今ここから新たなストーリーが描かれようとしている。
【関連URL】
・Labit,Inc.
http://labit.com
・渋谷に “つくる人を応援する書店”「BOOK LAB TOKYO」を作ります!
https://camp-fire.jp/projects/view/7262
・Labit、世界最速10秒で出品できる本のフリマアプリ 「ブクマ!」を6月に提供開始
http://labit.com/press/bukuma_first_release.html
5年前に初めて鶴田さんに会ったのもセレンディピティだった。西川さんのところで打ち合わせをしていたところに「おもしろい人がくるんだよ」っと現れたのが鶴田さんだった。僕がネットエイジに在籍していた頃から西川さんの感覚やひらめきというのは、ほぼ確信に近いものとしてうけとめていた。長年それは西川さんの超能力と思っていたのだが、最近、西川さんは人がもつイマジネーションの力を感じとっているのでは?と思うようになった。なぜなら、たとえば鶴田氏はビジョナリーそのものだったからだ。
例えば、日本全体をみた時、個々の能力が高い人や、事業を劇的に拡大した人などは多々いるだろう。しかし、ふと、世界レベルで見直してみると、個々の能力を超えて、新たなものをイメージして生み出していく、本質的なビジョナリーやそれを実現できるチームや組織は日本においてほとんどいない状態だ。鶴田さんは、そういうと「実績ないですから」と謙遜するが、これまでの学生向けサービスといい、グノシーに譲渡したメディア「ゲームエイト」といい、誰もやろうとしていないところにビジョンを埋め込み、丁寧なものづくりで成長させてきた。それは、いわゆるベンチャー起業家ではなく、ビジョナリーだと思う。