デジタル化に遅れている業界・企業はいまこそ遅れを取り戻すべき【ad:tech tokyo 2017 ABM vol.22】

ad:tech tokyo 2017 Advisory Board Member インタビュー特集, Marketing, News

日本を代表するイベント「ad:tech tokyo」が今年も2017年10月17-18日にかけて開催されます。このイベントの総勢40名の業界リーダーで構成されるアドバイザリーボードのインタビューを連載形式で掲載しています(特集一覧はこちら)。

今回はトリックスターエンターテインメントの新井勝久氏が登場。「Zeppブルーシアター六本木」で数々のエンターテインメントショーを手がける同社に、チケット興行におけるネット活用の現状と課題について語ってもらいました。

トリックスターエンターテインメント株式会社 代表取締役社長 新井 勝久氏

—興行における、テクノロジーの現状について教えてください。

今回、ボードメンバーに就任したことを、同じ業界の人に話してわかったのが、そもそもアドテックのことを、エンタメ、プロモーターの界隈の人たちがほとんど知らないということです。私自身は広告会社出身なので、アドテックを当たり前のように感じていましたが、広告会社、一部の広告主、メディアの人たち以外では、まだまだ知らない人がいるのだと驚いています。

我々のビジネスでは、チケットをいかに売っていくのかということが重要です。特に、エンターテインメントは作品によってターゲットが全く異なるので、マーケティングが重要なはずなのですが、そこが非常に遅れています。キャストの魅力、ファンクラブ、SNS活用など、これまでの知見でなんとなく積み重ねてきたものがあるのですが、それが体系化されていないのが現状です。だから、いまだに「新聞のラテ欄下に広告を出しておけばいいだろう」など、見当違いのことを言っている人がいたりする。業界全体で、デジタル化が遅れていることが大きな課題ですね。

—もっと、他の業界の人達と交流して、情報を得るようにするといいかもしれませんね。

そうですね。エンターテインメント業界にかぎらず、「アドテックに行って勉強したほうがいい」業界はまだまだたくさんあるように感じます。そもそも、彼らがなぜアドテックのような場に足を運ばないのかと考えると、「なんだか難しそうでついていけないのでは?」と感じてしまっているのではないかと思います。
その壁をどうすれば乗り越えていけるのか。まず、彼らはデジタルの基礎的な事項についての知識がないので、最新のテクノロジーに関するワードを見ると、それだけで難しいと感じてしまっているところがあります。自らの知識に自信がなく、理解が追いつかないという不安を解消できるようなセッションがあると、もっとデジタルを活用すべき業界のマーケターが足を運び、全体の知識レベルが向上すると思います。

—エンターテインメント業界の場合、特にどのような知識・情報が求められると思いますか?

まずは基本的なデータの活用です。経験則のみに頼らず、過去のデータの分析をもとに販売戦略を構築する必要があります。また、通常、消費者に向けてチケットを販売する場合、プレイガイドに、チケットを割り振るわけですが、どこのプレイガイドに、どれくらい出すのかという数を決めたら、その後は各社にまかせっきりで、全体でどのくらい売れたのかの全体管理うまくできていないのが現状です。例えば、A社では売れ行きがいいので、まだ余裕があるB社の在庫をA社に瞬時に移して売る、といったことができません。こうした機会損失を防ぐために、システムを含めてもっとデータを活用していけると思います。
しかし、この業界の多くの人は、そのような取り組みに積極的ではないのが現状です。これは、主催(興行側)だけではなく、チケットを販売する側も大きくかかわることなので、両者が一緒に体質の古さを解消していきたいですね。

ーここ数年で、マーケティングにおいては「体験価値」の重要性が高まっています。体験そのものが商品なのが興行なので、業界の方々は「体験価値の創造」や「伝え方」に長けているように思います。

本来はそうあるべきなのですが、上手く行っているとは言い難いですね。確かに、音楽・ステージのライブ市場はここ数年ずっと右肩上がりで成長しています。特に、アニメやマンガ原作の舞台化である、「2.5次元」と呼ばれる市場が大きく伸びています。ただ、その市場も以前のように舞台化すれば人が来るような状況から、勝ち負けがはっきりし始めました。誰をターゲットに、どのように情報を届ければチケットを買ってくれるのかなどいろいろ議論されるのですが、そこにはテクノロジーの観点が抜けていることがほとんどです。大半のチケットがネット経由で購入されていることを踏まえると、例えば通販企業のノウハウなど、もっと活用できるところはあると思っています。

ーチケットを誰が買っているのかの情報は、興行側よりもチケット販売を行うプレイガイドが保有しているわけですから、ますます連携は欠かせないですね。

そうですね。本来、たくさんのデータを持っている側がデータ分析を行って、興行側に「このようなプロモーションをすると、もっとチケットが売れそう」と働きかけるような状況ができていればいいのですが、そこまで行っていません。そういう意味でも、テクノロジーを活用してマーケティングをしている会社はまだまだ一部の業界・企業なのだと感じています。例えば、購買者のデータをたくさん持っているプレイガイドの方と、通販企業のデータ分析の方とのセッションなどが実現すると、業界の注目もあつまり、非常に発見が多いセッションになると思います。

ーほかにはどのようなテーマに特に関心がありますか。

先ほど述べたデータ活用、そしてAIに関心がありますね。この業界はデータ活用がまだまだできていないのですが、購買者データ、プロモーション施策との関連性などをAIで分析すると、どのくらいでチケットの在庫が無くなりそうなのかなど、実現できるのではないかなど、今後の可能性について知りたいです。それと、今回のアドテックには、「Basic」のトラックがありますから、そこは、デジタルマーケティングが遅れている我々の業界をはじめ、多くの業界・企業の方に知ってもらい、足を運んでほしいですね。

—ありがとうございました。

新井 勝久
トリックスターエンターテインメント株式会社
代表取締役社長

1989年広告会社へ入社、媒体・人事・営業を経験した後、NY生まれの「ブルーマングループ」東京公演を実現。
ブルーマングループプロダクションとの交渉・招聘・運営責任者を担い、
4年間のロングランを成功。2010年MBOにより独立。ブルーマン公演終了後は社名をトリックスターエンターテイメントへ改称。
現在はZeppライブ他7社と提携し、Zeppブルーシアター六本木の劇場管理・運営、国内外の舞台系コンテンツ制作にかかわる。

【ad:tech tokyo 2017 概要】
日時:2017年10月17日-18日
場所:東京国際フォーラム
参加人数:15,000+
詳しくはこちらから

【関連URL】
・ad:tech tokyo 2017 Advisory Board Member (ABM) Interviews
http://techwave.jp/category/features/adtech-tokyo-2017-advisory-board-member-interviews

中澤 圭介

中澤 圭介

iMedia Chairman / Content Manager at Comexposium Japan
1998年西南学院大学卒業後、広告界の専門誌を発行する出版社に入社。セールスプロモーションの専門誌の編集長として長く携わり、取材・編集を通じて企業のデジタルプロモーションの変遷を追ってきた。最近はオムニチャネル、CRM、ECといった分野を中心に情報収集・発信。2016年1月 コムエクスポジアム・ジャパン株式会社入社、iMedia Chairman就任。
中澤 圭介

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