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「ついに本日でオフィスなくします」。
東京・渋谷区神南にオフィスを構えていた開発会社 ソニックガーデン 代表取締役社長 倉貫義人 氏は言う。 業務縮小による撤退でもなく、買収などによるオフィスの消滅という話でもない、あくまで前向きな、企業としての発展の先にある門出としてオフィスを無くすというのだ。
そもそもソニックガーデンはリモートワークを主体とする企業で(自律型のリモートチームがチームワークの質を高めるためにやってきた3つの取り組み @kuranuki)、これまでも東京・渋谷区神南のオフィスは就業スペースというよりは打ち合わせのための場であった。
オフィスが無き後は、各位が思い思いのスタイルで仕事に就く。会社の登記は東京に残し、東京都目黒区自由が丘や町田市、そして岡山県に「ワークプレイス」を用意するという。使途は自由。そんなソニックガーデンは、2016年7月から6期目に入る。
まだ、拠点という発想で疲弊してるの?
拠点という発想、都心か地方か、そういう発想そのものが古いものになりつつある。世界的に、優秀な働き手は、場所に依存しない傾向にあるのだ。先駆けとしては米BaseCamp社(旧37Signals)([書評] 「小さなチーム、大きな仕事」 — 37シグナルズ成功の法則 (原題:ReWork)【増田(maskin)真樹】)があり、最近では新ウェブブラウザ「Vivaldi」(ブラウザ「Vivaldi」を愛すべき理由、軽快でパワフルな匠の道具 【@maskin】)などもそうだ。日本国内でも、個として実力がある人は、どこかに集まるというより、生産性を高めるためにはどこにでもいくし、あらゆるワークスタイルを創造するというスタイルを当然のように採っている。
ソニックガーデンは成果を出し続けることを本望とし、働き方の概念自体を進化させてきた会社だと言える。事業はIT系の受託開発だが「納品」という発想をそもそも撤廃し、スタッフは契約企業のIT部門の一員として一緒に事業を育ててゆく。打ち合わせはほとんどリモート。それでも多くのクライアントから信頼され会社そのものも大きくなってきた。
「 常勤で一緒に働いているメンバーは24名で、ほとんどプログラマです。半数以上の社員が地方に住みリモートワークを行っています。「納品のない受託開発」が事業基盤で、その上でリモートワークのための自社製品「Remotty」などの提供なども行っています。
今回、本社オフィスをなくした狙いは、在宅勤務の社員が増えたので、彼らをマイノリティにしないように、社内を公平にしたいということから、全員リモート前提の働き方を目指しました。全員にリモートの意識を植え付けるために、社長の私自身がリモートワークを始めたり、新卒社員は逆にリモート禁止にして教育するなどの工夫を重ねてきました。その結果、今回のオフィス退去を機に、次はオフィスを借りない、というところまできたな、という「ついに」です。振り切れたな、と」(ソニックガーデン 代表取締役社長 倉貫義人氏)。
ソニックガーデンの理想は「社員が自律的に動き納得感を持って仕事ができるフラットな組織の状態を維持したまま、企業として成長を続けていく」ということ。そのためにはセルフマネジメントのできる人を継続的に採用し「外発的動機やコマンドコントロールに頼らないマネジメントの形を模索・実践し、そのカルチャーを他社に広めることもしていきたい」と倉貫氏は考えている。
【関連URL】
・ソニックガーデン
http://www.sonicgarden.jp
・自律型のリモートチームがチームワークの質を高めるためにやってきた3つの取り組み @kuranuki
http://techwave.jp/archives/independent-remote-team-improve-their-quality.html
・テクノロジーで逆境を打ち破れ 育児で世界を変える テック系イクメン増田マスキン真樹【湯川】
http://techwave.jp/archives/51774643.html
一つのオフィスで働くのはある意味楽なことだ。決められた時間にそこにいればまず一線を超えたことになり、自律的に動くかどうか、成果を出すかどうかは二の次におかれる傾向にあるからだ。役職を持つ高スペック層は、スタッフのセルフマネジメント能力如何にかかわらず、その行動につきそう必要がでてきてしまい、組織にとってもクライアントにとってもマイナス面ばかり見えてきてしまう。
「自律的に動けないから時間をしばり一箇所にあつまる」「リモートだとなまけてしまうからオフィスに集める」、いずれも真実だが、そういった課題を克服してついにオフィスを無くすところまで到達したソニックガーデンは賞賛に値すると思う。今、日本そして日本人という枠組みにおける世界的な価値が低下している。大切なのは価値観のマッチする資質同士が積極的に連携しそれをプロデュースしていくことにある。東京にいないからだめ、地方にいるからだめ、そうではなくて、どこにいても真価を発揮できるマインドセットが必要になってきている。