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世界170カ国から6万人を集めるイベント「Web Summit」が2017年11月6日から9日にかけてリスボン(ポルトガル)で開催されています。スタートアップや企業のイノベーションをリードするエクゼクティブが集結するこのイベント(参考「「WebSummit」とは何か?世界最強のスタートアップイベントの秘密」)。TechWaveでしか読めない特別レポートを、本日よりお届けします!
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グーグルはいらない。英国50%のシェアを誇る格安航空のマーケティング戦略とは?
Web Summitには25のカンファレンスがある。最初のセッションはPanda Conf.というマーケティングトラックからお届け。ヨーロッパ在住者で知らない人はいないであろう、格安航空来援エアー。4年前に任命され、デジタル改革の立役者といわれる同社のCMOのインタビューセッション。顧客データ取得から初めてどのようにして4年間でヨーロッパでナンバーワンの訪問者数を獲得するまでになったかについてのロードマップを語った。
ラーラ: ケニー、あなたは2014年からライアンエアーにいるわけだけれど、ライアンエアーのプログラムはどんどんよくなっているよね。どういったことを行ってきたか教えてくれる?
ケニー: そうだね。本当にここ4年で大きく変わっている。我々はまだ理想に達したと思っていないけれど。僕が4年前にライアンエアーに入社したには、実は自社アプリもなかったんだよ。顧客データもほどんどとってなかったし、運用もされていなかった。まず僕は入ってすぐにアプリ開発とウェブサイトの改良に着手した。その結果、82%だった予約率はこの4年間で95%までアップしたんだ。
ラーラ: それはすごいわね。ちなみにライアンエアーは常に変化しているというけど、どうやって効果測定しているの?
ケニー: 僕らの効果測定の一つに、Rate My Tripという評価ツールがある。これは毎月約25万人に向けて行う顧客へのアンケート。ランダムに抽出した顧客に評価依頼をする。ダイレクトな顧客からの声をもとに改善の効果、今後の課題を設定する参考にしているんだ。
ラーラ: ミステリーショップのようなことも行っているの?
ケニー:そうだね。ミステリーフライトという取り組みを行っている。大体週に3回くらいはやっていて、それも効果測定の基準として取り入れている。
ラーラ: それをもとに最近取り組んでいることはある?
ケニー: メンバーシッププログラムは最近始めたサービスのひとつだね。顧客が自分で過去の予約履歴や行先などが見れるようになっているんだ。シンプルだけどこういったことも今まではなかった機能でこれも顧客の声から生まれたもの。あとは、Ryanair Roomという宿泊予約サービスも始めた。ホテルの中には2,500万ユーロ物件に泊まれるなどちょっとユニークなサービスもある。今後はフライトだけではなく、宿泊サービスも注力していきたいと思っている。ライアンエアーは、毎月アプリやウェブサイトを更新している。0.001でもコンバージョンを上げる、”Always Getting Better(常に向上させる)”ことを目標としている。
ラーラ: 少し話を変えて、今年に起こった大量のフライトキャンセル事件についてちょっと教えてくれる?
ケニー: 9月初めに僕らはフライト数を減らすという声明を出した。(※1)何が起きたかというと、パイロットが休暇を取る時期と重なり物理的に運航できなくなってしまったんだ。結果700万人のフライトをキャンセルすることになってしまった。顧客には申し訳ないと思っているが、我々が今回の件でよかったと思っていることもある。それは、90%の顧客が返金ではなくクレジットを選択したこと。それくらいライアンエアーの顧客満足度が高いということが証明された出来事になったんだ。実際、この件を受けて今まで以上にパイロットのハイヤリングも進めている。パイロットに理想的な場所にしたいと思っている。
ラーラ: CMOとしてこの話についてどう思っているの?もし戻れるとしたらどうする?
ケニー: メディアじゃなくて、顧客を第一に考えることだね。実際今回もやってよかったと思っているのは、メディア対応ではなく顧客対応に時間を費やしたこと。メディアは僕たちが一方的にフライトをキャンセルして顧客対応をしなかったように書いているけれど、実際僕らはそういうメディアに対して弁明することを最優先するのではなく、顧客が満足するように対応するし、それを事後報告した。これが顧客が90%返金ではなく将来的にも使えるクレジットを選んだ理由にもなっていると思う。
ラーラ: メディアとの関係について少し教えて。メディア戦略についてはどうとらえている?
ケニー: まず大事にしていることは、僕たちは顧客に謝ることを惜しまない。今回も顧客には申し訳ないことをした。ただ、僕たちは他の企業が追い付けないほどの速さで変化している。それには、それなりのリスクが伴うことは受け入れなければならないと思っている。そうでなければ、ヨーロッパでベストフライトブッキングサイトにはなれない。
ラーラ: それでいうと、CEOのライアン自身が世の名を驚かせることが好きだよね。
ケニー: そうだね。彼はリスク取るのが好きなんだ。ライアン自身もコンテンツとなっているし、メディアを惹きつけるのが上手。やはり革新的な取り組みにはリスクは不可欠。僕らが誇りに思っているは、ヨーロッパでベストフライト予約サイトであるということ、またライアンエアーを毛嫌いしている人でも”ライアンエアー=格安航空“と知っている。これはとても大きな功績だと思っているんだ。また、ライアンエアーの公式サイトへの90%はダイレクト訪問。これもほかの航空会社ではあまり見られないと思う。
ラーラ: あなたは以前にも「グーグルにはお金は絶対払わない!」と宣言していたけど、今でもそう思っているの?
ケニー: うん、今でもそれは変わらない。90%がダイレクト訪問であること、また仲介サイトを通してライアンエアーを見つけても、予約は100%ライアンエアーの公式サイトで行わないといけないシステムになっているからGoogleはいらないんだ。Googleに関しては、Googleフライトのディレクトリなどは見るけれど、お金を払ってまでプッシュする必要はないんだよ。ウェブサイト誘致をGoogleに頼らない戦略が上手くいっている。これまでもお金を払っていないし、これから払う予定もない。
ラーラ: 今後はどんな方向性で改革していきたいと思っているの?アマゾントラベルについてはどう思っているの?
ケニー: アマゾンは確かに脅威だとは思っている。ただ、僕らが持っているものはアマゾンにはまだない。僕らはフライト予約だけでなく、カーハイヤーや宿泊もやっている。また英国市場の50%ライアンエアーが牛耳っている。これを覆すのはそう簡単ではないと思う。ブランディングという意味ではアウディのようになりたいと思っている。彼らは、手軽さをチープに見せない方法を知っている。ライアンエアーも格安だけど“安っぽい”イメージだけでなく手の届きやすいイメージに少しずつしていきたいと思っている。
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私自身、英国在住していた際はよくライアンエアーを利用していました。ヨーロッパで知らない人はいないのではないでしょうか。英国からフランス、イタリアなどの近隣諸国には平均50ユーロ以下で航空券を購入することができます。グーグルいらない発言にはうなずく参加者多数。ブランドが自分達で顧客と向き合う時代がヨーロッパでは当たり前となりつつあるようです。