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情報メディアとしての紙には大きく2つの用途があると思う。一つは「残したいものを記録する媒体」、もう一つは「メモ/はしり書き」だ。メモは用が済んだらゴミ箱行き。しかし、情報はその中でくしゃくしゃに丸まって残り続ける。消去したいメモは、サスペンス映画のごとく暖炉や灰皿で焼却するしかなかった。今までは。
キングジムは10月15日から、米Improv Electronicsの電子ガジェット「ブギーボード(Boogie Board)」の輸入販売を開始する。これは液晶ディスプレイを使ったメモ用デバイスで、付属のペンなど突起物を使って情報を記録できるというもの。最大の特徴は画面上部に付けられたボタンにタッチすると書いた内容が消去されるという点。Undo/復帰はできない。単独で動作する製品で、PCとケーブルでつないで情報を保存することもできないという割切った製品だ。希望小売価格は税込で4,980円。
重さは115.8g。大きさはB5用紙くらいで、とても薄い(3.2mm)のでブリーフケースにすっと入れてもがさばらない。というよりは黒く目立たないので、沢山の書類に埋もれ「あれ、どこだ?」なんてことになりがちな困りつつもありがたい手軽なデバイスである。
切ない“消去ボタン”
今回、キングジムさんから製品を貸出して頂いたのだが、パッケージを開封して顔がほころんだ(上:その時のブギーボードの状態)。普段、ビジネス上のやりとりはメールかプリントされた文書。手書きのメッセージがあるとなんだか嬉しくて、この画面を消去するのにはしばらく時間がかかってしまった。だって復元できないだもの(というわけで、デジカメで撮影^^;)。
黒地にペンを走らせると緑色の文字が浮かぶ。それはあたかも黒板のようだ。書いた文字は○ボタンを押すと消去される。消去&書き換え寿命は約5万回、1日10回書き換えても13年以上使えるという。
真っ新になったブギーボードに思いのまま絵や文字を描いていると、家族たちがわさわ寄ってきてさわっていく。液晶デバイスとはいえ、スマートフォンやMIDのようなデジタルデバイスではないため、子供から大人まで気軽に使える。以下、筆者家族の初回作品。
ブギーボードは、残したい作品を描くのには適さないとつくづく思う。愛すべき絵やメッセージを消去するのにはためらいが混じるのだ。
一方で、最適だと思うのは、上のようなToDoやメモ、アイディア、伝言などだ。これらは、どちらかというと、用済みの後は消去しておきたいもの。似ているものとしてはホワイトボードや黒板があるが、わざわざホワイトボードを用意するのは面倒だし、持ち運び用途では消えたり、バッグなどが汚れてしまう。
それに紙へのメモは大量のゴミを生む。ブギーボードの開発メーカーは「紙の無駄遣い」に対抗すべく「Push Green」というメッセージを強く主張している。それはいいことだと思うし、情報の漏洩防止にも使用できる画期的製品なんじゃないかと思う。
■ 関連URL
・ブギーボード | KINGJIM
http://www.kingjim.co.jp/sp/boogieboard/
LCD搭載なのにデジタル&スマートデバイスではない、描画はそれほど繊細ではなくホワイトボードと同じような印象だ。余分なところをカットした実にシンプルな製品なのだけど、新しさを感じた。
「新しさ」の理由を考えたのだけど、それは機能が絞られている点、情報が消去される点、それと「紙はいらない」というメッセージにあるんじゃないかと思う。
ふと思い出したのは37signalsのiPad用ソフト「Draft」。梃子のように作用し、ライフスタイルまでをも変容させる可能性があると感じた。
アスキーのApple系雑誌でライターデビュー。1990年より執筆およびネットメディアクリエイターとして活動を開始。週刊アスキーを初め、日経BP、インプレス、毎日コミュニケーション、ソフトバンク、日経新聞など多数のIT関連媒体で活躍。
独立系R&D企業のマーケティング部責任者として教育・研究開発向け製品の輸入企画や開発、マーケティングに関与。専門家向けプロショップ運営。雑誌ライターとして90年代を疾走後、シリコンバレーで証券情報サービス立ち上げに参画。帰国後、ネットエイジでコンテンツディレクターとして複数のスタートアップに関与。関心空間、富裕層SNSのnileport、ニフティやソニーなどのブログ&SNS国内展開に広く関与。
現在、TechWaveのスタッフライター1号機として活動する他、書籍などを中心に執筆活動を展開。大手携帯キャリア公式ニュースポータルサイト編集デスク。スタートアッププロジェクトのアドバイザー等として活動する。ソーシャルメディアやブリック&ブロックのプロ。書き手として、また実業家として長年IT業界に関わる希有な存在。詳しいプロフィールはこちら
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