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[読了時間:2分] この記事は後編です。前編はこちら。
「メディア王」ルパード・マードック率いる米News Corporationと米Appleが共同でリリースしたiPad専用日刊紙「The Daily」。1週間あたり99セント、年間なら39.99ドルという破格の“新聞”に注目が集まっている。
前編では、ビジュアルやアプリの雰囲気を観てもらったが後編は新聞の実力の一部ともいえる表現方法について紹介する。果たしてNews Corp.傘下のWall Street Journalの購読部数約200万を超える新聞になり得るのだろうか。
The Dailyは読む行為が苦痛にならない新聞といっていいだろう。米国の新聞はそもそも図版がよく作り込まれていてあきない作り込みがされていると思うのだが、The Dailyは、図版のアニメーションはもちろん、適所に関連動画が配置されたり、写真ギャラリーがあったり、ソーシャルメディアの連携ありと紙のそれとは別次元の媒体となっている。テレビのように受動的になることもなく、読者とのほど良い関係がそこにある。
新しい“新聞”体験
記事を読む部分は雑誌と同じような複数カラムのレイアウト。文章を読んでいると“デイリー雑誌”という表現がしっくりくる。ただ「The Dailyってこんなもの?」という批判が浮上するのも理解できる。ここだけを見ると別に新しくない。
The Dailyの本領発揮は記事の周辺になって始めて見えてくる。例えば、右下の写真をタッチしてみると、サッと拡大される。簡単なことだが、このスムーズさはPCでカチャカチャやる時と比較にならないほど快適だ。開いている記事をすぐに読み上げてくれる機能なども、使い初めると便利この上ない。
前編で紹介したが、記事に関するツイートを投稿したり読むこともこのインターフェース上でできる。いちいちアプリを切り替えることはない。また、記事中に動画やアニメが埋め込まれていることもある。
ウェブニュースではありがちだったが、タッチを前提とした新聞感覚の操作環境の中で、記事と動画の連携は予想以上にうまくいっていると感じる。また、以下も前編で説明したが、記事連動ギャラリーがあるページの画面。右下にギャラリーモードへの誘導サインが表示されている。
ここで、iPadを横に持ち変えると、ギャラリーモードに切り替わる。
以下のようなパノラマ写真も時々登場する。タッチすれば360度を自由に閲覧できる。
こういったものは技術レベルでは以前からあったものだが、The Dailyが拓いた境地は、こういった技術をふんだんに取り込み、日刊で新聞コンテンツを作成し続けることにあると思う。
めくるだけでなく多様な記事リーチ
The Dailyは、現時点で1日に10〜20本くらいの記事が公開される。多いわけではないが、1ページずつめくっていくとかなりの時間を要する。そこで、The Dailyには、複数のページリーチが用意されている。まず、トップページ的役割を果たす回転ビューは、iTunesなどで使用されている「Cover Flow」のようにトピックを選択できる。
記事ページ上のスライドバーをタッチすると、記事ページのサムネイルが表示され、ここからもページ単位でブラウズ可能だ。
気になったら、とりあえずクリップして、あとで閲覧するということもすんなりできる。このコンテンツのリーチしやすさはThe Dailyのポイントの一つとなる気がする。今はまだ記事数も少ないが、これが増加した際、この部分の真価が問われてくるのだろう。
ソーシャルメディア連携の参加型コンテンツ
米メディア不況の中、オンラインニュースメディアとして成長を続けてきた「Huffington Post」はAOLに3億ドルで買収されている(参照)。そもそも政治系ブログメディアとしてスタートした同サイトだが、既成メディアではタブー視されていたソーシャルメディア連携を記事に取り入れたりと、注目度が高いわりには自由な発想で前進し続けてきた。以下は、The DailyにおけるHuffington氏の記事。
Huffington Postに習ってか、Tweet連携は至るところで見受けられる。以下は、同氏の記事の本文。
NFLなどでもチームツィートを活用した見せ方が印象的だ。
月並みではあるが、ポール(投票)も随所で実施されている。Twitter/facebookアカウントと連携することで、いわゆる“紙の牙城”的な囲い込みを感じさせない。
もう一つのソーシャル要素といえばゲームだ。別に紙の新聞にありがちなSudokuとかクロスワードじゃなくてもいいと思うのだが、実際に遊べるものが用意されている。これは、ちゃんとAppleのGameCenterと連携されていて、友達とスコア競争をすることができるようになっている。
メディア王とスティーブ・ジョブズ
一通り、目玉となる機能を紹介したつもりだが、これでThe Dailyのことを理解できたかというと、まだまだだと思う。まだ記事編成は完成していないと思うし、そもそも分量が少ない。クリエイティビティももっと発揮してくれるんじゃないかと思う。では、News Corp. CEOルパード・マードック氏は、この媒体をどのように成長させようと考えているのだろう。それを示唆するメッセージが、リリーススピーチ時にあったので紹介する。
「メディア王」ルパード・マードック氏
我々の挑戦は
伝統的な報道の最良の部分と
現代における最高技術とを
組みあわせることDigital時代に記事がどう伝えられ
、
どう読まれるかのモデルになる
これに呼応すかのように、Apple CEOスティーブ・ジョブズ氏も「ニュース体験を再定義するもの」というコメントを寄せている。
実際にじっくり閲覧してみて“今までにない新聞体験”となるのは間違いないと筆者は感じた。ただ、The Dailyには初代iPadは重過ぎる。力持ちの部類に入る筆者だが、正直キツイ。今後、この新メディアに価値を見出したユーザー数が増えるかどうか、それこそが媒体の価値になるわけだが、斬新さとか、技術力とか、ソーシャル連携だとか、単一のポイントに評価が依存するとは考えにくい。マードック氏が言うように低コストでじわじわ成長し、このまま運営し続けらるかがポイントになってくるのだろう。当面は地道な革命になるかもしれないが、今後も注目したい。
■ 関連URL
・The Daily
http://www.thedaily.com/
・なるか新聞革命? iPad初の定期購読紙「The Daily」レビュー(1/2) 【増田(@maskin)真樹】
http://techwave.jp/archives/51586090.html
・ルパード・マードックが仕掛けるiPad新聞「The Daily」を本日2月4日にデモします! 【増田(@maskin)真樹】
http://techwave.jp/archives/51586454.html
2月4日に池袋で開催されたPAGE2011の「TVとネットの近未来カンファレンス」でThe Dailyの簡易デモを行なった際、朝日新聞の服部桂氏が来場しており、ゲストとして意見を頂戴した。彼も「その程度か」みたいな表現をされていたが、確かにマードック氏のこの2年くらいの大口っぷりは、現時点のThe Dailyには見あわないと感じている。では、実際、筆者を含めた読者がこのまま購読し続けるかどうか?正直言って今後すぐに同じ発想の新聞が出てくるだろうし、その時は乗り換えも検討するに違いない。しかし、年間3200円で、がさばることもないし、集金のおばちゃんもやってこない新聞をわざわざ乗り換えるという発想そのものが間違っているようにも思う。つまり、来る「電子媒体を5〜6個購読、それでも月間3000円」というようなメディア購読新時代の幕開けなんじゃないかと思う。
十代からメディアクリエイターとして活動。週刊アスキーなど多数のIT関連媒体で雑誌ライターとして90年代を疾走後、シリコンバレーで証券情報サービスの起業に参画。帰国後、ネットエイジで複数のスタートアップに関与。関心空間、富裕層SNSのnileport、@cosme、ニフティやソニーなどのブログ&SNS国内展開に広く関与。坂本龍一氏などが参加するプロジェクトのブログ立ち上げなどを主導する。 / 現在TechWaveの活動を中心に完全復帰中、多数のプロジェクトに関与する。大手携帯キャリア公式ニュースポータルサイト編集デスク。