AOLがHuffington Postを3億ドルで買収 時代のはざまで揺れるメディアビジネス【湯川】

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 米オンラインメディア大手AOLが有力ニュースサイトHuffington Postを3億1500万ドルで買収することで合意したと発表した。従来型マスメディア企業の不振が続く中で、躍進する米の新興オンラインメディア。果たしてAOLやHuffington Postといった新興オンラインメディアが、これからのメディアビジネスのあるべき形なのだろうか。

 Huffington Postをいう名前は聞いたことがあっても実際にどのようなサイトなのか知らない読者も多いと思うので簡単におさらいしよう。Huffington PostはArianna Huffington氏らが2005年に始めたニュースサイト。Arianna氏はジャーナリストKonstantinos Stassinopoulous氏の娘としてギリシャに生まれ、英Cambridge大学に留学。卒業後は米国に渡り、石油王で後の米上院議員Micael Huffington氏と結婚。夫の選挙運動を精力的に支援することで政界にパイプを持つようになり、コラムニスト、政治評論家しても活躍するようになった。その後、Micael Huffington氏とは離婚している。(ソース:英語版Wikipedia)

 Huffington Postは、Arianna Huffington氏のコラムを核にした政治ニュースのブログメディアとしてスタートしたが、政治以外にもメディアビジネス、エンタテイメント、ライフスタイルなど、いろいろなニュースを取り扱うようになった。また新しい情報発信ツールを積極的に採用、Twitterをニュースソースとして表示するなど新しいメディアの形の模索を続けている。この辺りについてはTechWaveでも過去に何度か取り上げている。



ツイッターでメディアを作る= Huffington Postの場合 : TechWave

 ツイッターにリスト機能が搭載されたので、同じテーマのつぶやきを集めることでメディアができるなと思っていたら、米政治ブログメディアのthe Huffington Postが作っていた。早っ!
 ヘルスケアの専門家のつぶやきを左コラムに、真ん中には動画があって、その下に民主党、共和党議員のつぶやきをそれぞれ並べている。
 例えば動画の部分に、ヘルスケアに関する大統領の演説があり、それに対する両党議員と専門家のリアルタイムつぶやきがみれればどうだろう。絶対面白いと思うよ。「にこにこ生放送・ヘルスケア専門家、議員版」みたいな感じ。
 こうした見せ方にすると、両党がどんな考え方か、どの議員がどんな考え方か、はっきり分かってくる。
 これこそが、ニュースサイトのあるべき形だと思う。

 ただこうしたニュースサイトの形に対して批判があるのも事実。Huffington Postはこれまでに「引用が長すぎる。剽窃ぎりぎり」「ブロガーにまともな原稿料を支払っていない」などと非難されている。(関連記事:米の陸軍基地の銃乱射事件をHuffington Postがtwitterで報じている : TechWaveジャーナリズム、冬の時代?米Huffington Postは成長続けてますけど : TechWave

 一方のAOLは、コンテンツを核にした新しいメディアサイトの形を模索している。

 具体的には、独自のアルゴリズムで発生したばかりにニュースや人気が高まりつつある話題を探し出し、どのニュースや話題が最も広告収益をあげることができるかを自動的に判断する。それを現在約500人いる編集者に提示する。Aolは現在も編集者を採用し続けているので、最終的にはもっと大きな組織になる見通しだ。Aolの編集者はそれを、フリーランスのライター、ジャーナリスト、編集者向けのウェブサイトに表示する。フリーのライターたちは自分の得意分野のニュースや話題を選び、記事を書く。Aolに雇用されている編集者は出来上がった記事の事実確認をしたあと、ネット上に表示する。フリーのライターたちは、執筆した記事の難易度や達成したアクセスに従って原稿料が支払われる仕組みになっている。(コンテンツメディアの新しい形を模索する新生Aol : TechWave

 その他の関連記事:新生Aolいよいよ始動。新しいマスメディアの形を作れるか : TechWaveAolのコンテンツ作成型メディアのさらなる詳細=silicon Alley Insider : TechWave

 さてAOLはHuffington Postを買収することでどのようなメリットがあるのだろうか。AOLのCEOのTim Armstrong氏は、今回の買収に関して、AOLの全従業員に対しメールを送付している。そのメールを全文、米TechCrunchが報じている。(Armstrong’s Internal Memo To AOLers About The HuffPo Deal

Together, AOL and The Huffington Post will have 117MM unduplicated domestic monthly UVs, and ~270MM monthly UVs worldwide (according to comScore Dec 2010).AOLとHuffington Postを合わせると米国内の月間ビジターは1億1700万人、世界中の月間ビジター2億7000万人にも上る

 eMarketerによると、米国のオンライン広告市場は順調に拡大している。市場の拡大に合わせて、コンテンツをより多く作成すれば、より大きな収入になる。そういうことなのかもしれない。

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蛇足:オレはこう思う
AOLの戦略が少し変わってきたのではないだろうか。

 以前は、上にあるように検索件数が増え始めたキーワードをプログラムを使って自動的に集め、そのキーワードに関する記事を超特急で作成するというのがAOLのやり方だった。検索されてナンボ、検索連動型広告がクリックされてナンボ、という感じの記事の作り方だった。「コンテンツ製造工場」と揶揄されることもあった。ただそのやり方は「検索の時代」には、理にかなった方法だと思う。

 ところがそういう形で記事を濫造すれば、短期的な広告収入につながっても、長期的にはAOLのブランド価値は下がるだろう。ネット上は中身の薄い記事であふれ、良質の記事を見つけ出すのが困難になり、いずれは広告主も去っていくに違いない。長期的には「コンテンツ製造工場」的なビジネスモデルってどうなんだろう、とわたし自身思い始めていた。

 AOLによる米TechCrunchの買収や今回のHuffington Postの買収を見ると、AOLはもはや「コンテンツ製造工場」を求めているのではなく、ブランドを求めているように見える。Tim Armstrong氏は従業員にあてたメールの中で「購買の80%はインフルエンサーの影響を受けている」という考えを示している。TechCrunchもHuffington Postも米国では非常に大きな影響力を持つサイトである。単純な検索連動型広告よりも影響力の大きなサイトに多額の広告が集まり始めたのだろうか。

 「ソーシャルの時代」はインフルエンサーが重視される時代である。AOLは、「検索の時代」から「ソーシャルの時代」への移行に合わせてビジネスモデルを調整し始めたようにみえる。

 ただまだ「ソーシャルの時代」ならではのビジネスモデルは完全には確立していない。今後AOLがどのようにビジネスモデルを変えていくのか引き続き注目していきたい。

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