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CROOZ主催のテックヒルズ「2012…Flashの終焉!?」という刺激的なカンファレンスイベントの壇上で、アドビ システムズ株式会社 デジタルメディア ビジネス開発部 太田禎一氏が咆えた。
「Flashが死んでいるなら、HTML5は始まってもいない」。
マクロメディア社時代からFlash製品担当として活動してきた同氏は、「10年前から終わっていると言われていた」といった当事者ならではのエピソードを踏まえ、さまざまなメディア等で言われている未来予測は現実に則してないと一蹴する。
「Android向けFlashプラグインの提供中止などを受け、Flashはオワコンだとか、HTML5+JavaScriptで初めた方がいいだとか言われていますが、最近の調査データを見てもFlash Player 10+の日本における普及率はPCのみで見ると 98.9% (出典:Milward Brown 2011.06)、急成長しているスマホおよびタブレットを含めても88.06%(出典:RIASTATS02012.05)があるわけです。
こういったさまざまな統計データは、PC・スマートフォン・フィーチャーフォン(ガラケー)いずれもがFlashにとって重要であることを示しています。一方でHTML5の仕様はまだまだ不安定で、例えばHTML5ビデオタグの普及率は0.6%どまり。Flash Player インストール端末数で見れば、スマホタブレット含む15億端末にインストールされているわけで、まだまだ優位性がある。
しかし、例えば、この一年くらいの埋め込み型コンテンツの使用状況を見ると着実に減っています。ただ、これは、適材適所で使われるようになったということ。Flash一辺倒ではやっていけないのも事実で、アドビが何もしなかったら予測のようになる思います。過去はあったかもしれませんが、今どきレストランのメニューを綺麗に演出するためににFlashなんて使いませんよね?一方でコンテンツ保護をしたビデオ配信はやはりFlashが使われています」(太田氏)。
Flashは「ゲーム」と「ビデオ」にフォーカスする
太田氏は、Flashテクノロジーが果たす役割は確実にシフトしていると説明。アドビ社は「Flashランタイムのロードマップ」というホワイトペーパーを公開。中でも今後フォーカスする2つの分野があることを説明。
Flashがフォーカスする2つの分野
1. 「プレミアムビデオ」
TV・映画・スポーツ・音楽・ライブ放送など
堅牢なコンテンツ保護2. 「AAAゲーム」
最高品質の3Dゲーム、軽快な2Dゲーム
GPUを最大活用
その上で太田氏は究極の目的として「ウェブブラウザのゲームコンソール化」構想について説明。Flash PlayerがインストールされたPC・スマホ・タブレットを含めた15億端末のうち自動アップデートで最新のバージョンに更新しているのが5.5億。これがゲームプラットフォームの規模となる。
さらにはGPU対応の高速描画エンジン「Stage3D」とそれに対応するActionScriptフレームワークがあること、ゲームコンソールレベルの表現を可能にするためにフレーム毎にかかった時間などを総合的に取得できる高機能プロファイラ「Project Monocle」を開発中であることを表明。来るFlash用スクリプト言語「Action Script Next」の登場により高速化がはかられ、開発環境はより充実すると説明する。
モバイルは撤退?
一方で将来アドビがFlashでやらないこととして「スマホアプリ以外のモバイル開発」、「Flash Lite対応(Device Central含む)」、「ActionScript2以前の言語対応」を挙げた。「そうなると、いずれはモバイル撤退でしょ?と言われるのですが、そんなことはありません」と太田氏は指摘。
モバイルについてはブラウザプラグインがなくなるだけで、単独で動作するコンテンツがあるわけです。実際、AIR アプリケーションと OS ネイティブコードの連携を実現するすることが可能になっている。Andoid、iOS、BlackBerry でも、デスクトップ環境 (OS X、Windows) でもFlashコンテンツが利用できる。既に「GREE MONPLA SMASH」ではFlash Proで作成したコンテンツをAIRアプリとして採用済みだ。
HTML5にいくぜー!でも、まだ、、
「ウェブブラウザ向けのものにはHTML5対応が必要になる」ものの、現時点のHTML5には問題が多いと太田氏は言う。
・PCとモバイルで別世界とも言える (WebGLとか)
・HTML5のモバイル実装が不安定 (Canvasとか)
・Flashレベルの使いやすいツールがまだない
・決定的なワークフローがない
「Flash → HTML5変換をやるという話もありますが、アドビのツールは開発が停止しているし、全体的に見て決定版がない状態。というわけで、Flash資産およびワークフローをHTML5に繋げることが重要で、それをすることでFlashテクノロジーへの投資は今後5-10年に渡って有効になる。この1〜2年は、ソリューション群の中から最適なものをピックアップして使う自己責任フェーズにあるという状態。申し訳ないが立ち止まらないで欲しい」。
将来に向け今Flasherが学んでおきたいこと
「初めからHTML5 + JSでいいんじゃない。という意見もあり、それは一つの知見だと言えます。しかし、Flashオワコンの話題の中で、動かせない問題がある。それはFlasher (Flashクリエイターの意)コミュニティの存在です。
多くの才能のあるクリエイターがインタラクションやグラフィックス、モーションでおもしろいことをやってきた。HTML5+JavaScript方面でマークアップからFlashが得意だった領域にきた人達とは一線を画するのです。だから、Flasherは新しいHTML5など以下のような技術をうまく使いっていって欲しい。そうすればFlashの未来は明るいのです」(太田氏)。
Flasherに学んで欲しい3つの技術
1. モバイルでも60fpsを安定して出すためのAS3フレームワーク「Starling」
2. Flash Proで作成したアニメーションをHTML5 (canvas)とJavaScriptで動かす「CreateJS」
3. Flashと似たランタイムでアニメーションが作成できる「Adobe Edge Animate」
【関連URL】
・2012…Flashの終焉!?| テックヒルズ~
http://crooz.co.jp/techhills/
最後になるが、六本木ヒルズで開催されたこのイベント「テックヒルズ(Tech Hills)」は、CROOZ株式会社が主催する次世代技術の可能性を追求する技術勉強会で今回で3回目。
今回は[Adobeのモバイル向けFlashの開発停止や、HTML5の台頭が注目されている中、Flashの現状、今後はどうなるの!?やはり終わるの!?」というテーマでアドビ システムズ 太田禎一氏ほか、ディー・エヌ・エー 近澤良氏がSWF JavaScriptランタイムやActionScript3ライクに開発できるJavaScriptフレームワーク「Arctic.js」について講演、CROOZ 土濱健太郎氏らがFlasherとしての今後について講演を行った。
太田氏の講演はまさにこのイベントの問いへの回答そのもの。ただ、他の登壇者を含め明確に「これを使って」という提示はなく、将来に向けた絵が描けない参加者もいたようだ。
ただ、Flashの変遷を見てきた一人として、一時米マクロメディアとFlash次期コンテンツ開発みたいなことをやった側として、Flash界隈のコミュニティの熱気の特殊性はとても強く感じるし、太田さんの掛ける気持ちに応じていければと思っている。
8才でプログラマ、12才で起業。18才でライター。道具としてIT/ネットを追求し、日米のIT/ネットをあれこれ見つつ、生み伝えることを生業として今ここに。1990年代はソフト/ハード開発&マーケティング→週刊アスキーなど多数のIT関連媒体で雑誌ライターとして疾走後、シリコンバレーで証券情報サービスベンチャーの起業に参画。帰国後、ネットエイジ等で複数のスタートアップに関与。関心空間、@cosme、ニフティやソニーなどのブログ&SNS国内展開に広く関与。坂本龍一氏などが参加するプロジェクトのブログ立ち上げなどを主導。 Rick Smolanの24hours in CyberSpaceの数少ない日本人被写体として現MITメディアラボ所長 伊藤穣一氏らと出演。TechWaveの活動タグは創出・スタートアップ・音楽・表現・ミディアム・子ども・日本・世界・共感。