どの分野においてもデジタル化の波がもう十分すぎるほどに到来している昨今、なかでも変化の激しい広告宣伝の世界において現在各企業の広告宣伝担当者はどのようなことを考えているのでしょうか。すでにイノベーションを起こした成功事例を持っている企業だけでなく、まさに取り組み真っ最中の企業の方にも自社の現状やこれからへの展望をお伺いする特集です。
第4回は「おみそなら」のフレーズでおなじみのハナマルキ株式会社の常務執行役員マーケティング部長兼広報宣伝部長の平田伸行氏にご登場いただきます。創業は大正時代、主力商品である味噌を多くの人が知っているハナマルキブランドが打ち出した新ジャンルの商品「液体塩こうじ」。そのプロモーション施策を中心にうかがってきました。
—「液体塩こうじ」は「スナップディッシュ」や「つくおき」など新しいメディアでの展開や外食店とのコラボレーションなどの多彩なキャンペーンが非常に目立ちますね。
「何か施策を実施するとき、必ず「その施策自体がプレスリリースとして発信できるだけの強さがあるか?」ということを意識しています。スナップディッシュのような新しいメディアであれば「ハナマルキが液体塩こうじレシピを新メディアで展開」とリリースを出せますよね。普通にメディアに広告を載せるだけではニュース性はありませんから、できるだけ新しい企画を実施する。こうしてプレスリリースを起点にすることによって、業界メディアやモノ系経済メディアなどにも露出がされて相乗効果が生まれる。「宣伝」と「広報」を融合し、どうやったら効率的なアウトプットになるか、を常に考えています。」
—さらに「スナップディッシュ」で投稿されたレシピを集約してを営業活動に利用したり、イベントを行った場合は映像に残して、展示会などのPRに利用されるなど、ひとつのキャンペーンをとことん活用していらっしゃいますね。1回宣伝しただけではもったいないとわかっていてもできないブランドが多いなか、皆さんが実行できているのには秘訣があるのでしょうか。
「フローで終わらせず、ストック化していくということを大切にしています。一つの企画を考える時、「その企画は何らかストックすることができるのか」まずはそこから考えます。液体塩こうじの試食イベントを行うことがありますが、そのイベントの模様は映像に残すようにしていますし、先日、「えきしお弁当」を発売しましたが、こちらもキャンペーンでよくある「期間限定販売」ではなく、通常販売にしていただきました。「液体塩こうじ」のような新しい調味料だと、「液体塩こうじって何?」になる、そうするとWEBで検索する、という動線が考えられます。WEB検索や動画閲覧は今や当たり前になっていますから「企画をフローで終わらせず、ストックしていく」と考え方は非常に重要だと思います。そうやって情報が蓄積してくると、社内的なモチベーションアップにもつながってくると思います。」
—「液体塩こうじ」のような新しい調味料だと情報の蓄積という観点も大事かもしれませんね。ただ、社員の方のモチベーションは今までの「おみそならハナマルキ」の蓄積だけでも十分アップしていそうですが…
「まず、ハナマルキブランドについてはさらに昇華させていけると思っています。「おみそな~らハナマルキ」のサウンドに関して言えば、今年、音商標を取得しました。「ハナマルキの歌」というのをつくったり、会社で使うペーパーバッグにこのサウンドロゴの音符を掲載するなど、サウンドロゴ自体の展開だけでもまだまだいろいろなやり方があると思っています。一方で「液体塩こうじ」という商品については、ハナマルキブランドとしての新商品だけでなく、新しい調味料ジャンルなので、これについては積極的な宣伝の必要があり、とにかく今はアウトプットの量にこだわっています。量が増えれば、社員のモチベーションにも寄与するでしょう。また、私は新卒の採用広報も一緒にやっていますが、リクルーティングでの効果も出てきていると感じています。」
—このようにどんどんアウトプットを増やすことは簡単ではないように思いますが。
「『液体塩こうじをメディア露出させ、浸透させる』というテーマは社内の共通認識で、まだまだ期待されているでしょうし、私もまだまだできると思っています。今、広報宣伝はほとんど私一人でやっていますが、そうなると外部パートナーは誰と付き合うのか?どういう協力体制を引くのか?という見極めが欠かせないです。待っているだけでは新しいものは手に入らないので、自分から探しにいく姿勢を崩さないつもりです。」
—新しいものに対して非常に積極的でいらっしゃるところが平田さん、そしてハナマルキブランドのお強みだと感じますが、宣伝広報に関わる人たちにこれから必要になる能力とはなんだと思いますか?
「仕事内容はどんどん難しくなっていますよね。やることが増えていて、技術的な知識もさらに必要になってきていますから、広報宣伝の専門家を育てるのだ!という意識が必要だと思います。私が今、広報宣伝担当者に必要だと思うのは「クリエイティブ」と「判断のスピード」。「クリエイティブ」に関しては、自分自身できちんとコピーが書ける、デザインのディレクションができること。例えば、ソーシャルメディアへの投稿が自分でできる力量が必要です。AIなど理系的なワードを耳にすることが多くなってきていて、どんどん理系人材も業界に参加してくれると期待していますが表現、そしてPRの基本も大事ですね。プレスリリースを自分で書けるくらいの力も欲しいところです。そして企画のやるやらないをすぐに決められる「判断スピード」が必要ではないでしょうか。これは企業によって考え方があるとは思いますが、何事もあっという間に陳腐化してしまう時代です。ある程度の情報でパッと決めてしまうことを私は大事にしています。」
—確かにパッと決められなければ新メディアとタイアップしてプレスリリース発信という動きはできませんね!
「新しいサービスといかに組むのか?と考えるのが私自身の楽しみでもありますので、これからも新しい意外性を提供できる施策を打ち出したいです。」
—ありがとうございました!