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いきなり私事で恐縮だが、日本を軸としたITスタートアップの傍らで活動しておよそ30年。ITスタートアップの現場に身を置き、ゼロから新しい価値が生まれる瞬間を共にするという場数だけは、日本の誰にも負けないぜなどと思うことはあっても、やはりアントレプレナーが経験する極限の状態だけはそう簡単には知り得ないし、「共有・共感できた」などと安易に言うことはできないと身にしみて感じている。
なぜなら、彼らが突き抜けようとするにある明確で絞り込まれたメッセージが形成されるずっと前から、あまりにも膨大な苦悩を乗り越え、時には絶望の淵に叩き落されながらもたった一筋の希望の光が見えることを信じて、たった一人で暗闇の中を前進し続けてきているからだ。
どんなに本人から話を聞いても、調査をしても、その経験だけは共有できないことを知っている。それこそが人生であり、限界ぎりぎりを突き抜けるアントレプレナーの生き様は、霞よりも遥かで、閃光よりも速いのだからなおさらだ。
そういう意味で、ガラポン株式会社社長 保田歩 氏が出版した 「文系の僕はテレビ視聴の革命めざし家電メーカーを起業した」(日経BP)はとても貴重だ。
冒頭の一句が「僕は毎朝、徹底的に絶望しきった状態で目覚める」である。ガラポンのPRのために明るい話ばかりで綺麗に構成されたありがちな起業ストーリーかと思いきや、トホホで愚直な保田氏の人間味が全面に押し出された内容となっている。まさに独白。
悩みながら、絶望を感じながら本音で戦い、前に進むことやめようとしない一人の情熱的な起業家のリアルな心象風景。おそらく多くの人が胸を熱くしながら “何か” を掴むことができるのではないかと思う。そんな本だ。
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