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Google検索が中国本土から事実上撤退=権力と対峙するのはネット企業の役割になった【湯川】

 Googleが中国本土での検索サービス「Google.cn」へのアクセスを香港で運営している同社サイト「Google.com.hk」へ転送すると発表した。香港では法律の運用が異なるため自主検閲しない形で検索サービスを提供できるからだ。一部業務は継続するが、検索サービス自体は中国本土からの事実上の撤退という形になる。報道機関ではなくネット企業が権力と対峙しているわけで、大手ネット企業こそがマスメディア的な役割を果たす時代になってきたようだ。

▼大手ネット企業こそマスコミ

 「普通の日本語ではヤフーのことをマスコミとは呼ばない」と言う新聞関係者の主張について以前書いたことがあるが、大手ネット企業に対する「社会の公器」として期待は高まる一方だ。


 以前、米Yahoo!が中国政府の圧力に屈した形で自主検閲に応じた際にも批判の声はあったが、自主検閲に対する米国内での批判はより大きくなっているように感じる。今回米Googleが自主検閲を中止したことに関し米国内でのブログ界隈では評価が高い。

 日本のYahoo!関係者と話をしていても、報道機関が持っているような社会的責任を感じている人が多い。大手ネット企業は自他共に認めるマスコミュニケーション機関になってきているのだと思う。それが今回のGoogleの発表に対して抱いた最初の感想だ。

▼文化の相対性

 もう1つ感じたことは、1つの国が別の国に自分たちの価値観を押し付けてもいいものかどうか、という点。どの国の国民も自分たちの価値観が普遍的なものだと考えがちだが、そんなことはまずない。何が正しくて何が間違っているかという価値観は、地域や時代によって大きく異なることがあるのだ。これは非常に説明が難しいし、ITにあまり関係ないので、これ以上深入りしない。

 ただ今回のGoogleの決定に関し米国内で絶賛されているのとは裏腹に、中国からの報道によると、84%の人が「別にどちらでもいい」と答えたという。これが文化の相対性であり、こう感じる中国の国民を見下す人がいるとすれば、それは傲慢以外の何ものでもない。

 インターネットへのアクセスが全面的に禁止されているわけではない。Googleを通じてでなくてもネットを通じて世界の情報に通じる方法は、工夫すれば幾らでもある。中国ユーザーは自分たちの力で自分たちのペースで進んでいけばいいのではないだろうか。
 
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