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Appleの次の標的はテレビ=米アナリスト予測【湯川】

 米Appleinsiderは、Appleが近い将来にテレビの分野に本格参入するというアナリストの予測を紹介している。それによるとPiper JaffrayのアナリストGene Munster氏は、2年から4年以内にAppleがiTunesを搭載した2000ドル前後のテレビを発売し、ホームエンターテイメントの家電領域に本格参入する可能性があると予測している。事実Appleの幹部はテレビの領域に高い関心を持っていることを明らかにしているし、iPhoneで大成功を収めたAppleが近く発売のiPadでも成功すれば、次にテレビを狙ってくることは十分にあり得る話。テレビ視聴の新しい時代の幕を切って落とすのもAppleになるのだろうか。

 Munster氏は、Appleがテレビ向けのiTunesの定額プランを月50ドルから90ドルで販売するようになると予測。iTunesで音楽だけではなく、映画、テレビ番組、ゲーム、各種アプリも利用できるようになれば、ブルーレイディスクやHDDプレーヤー、衛星放送、CATVなどすべて不要になり、業界に大きな変革を起こす可能性があるという。


 確かにAppleはテレビの領域に関心を持っている。Appleが開発したテレビ向けのセットトップボックスAppleTVはそれほど普及していないが、Appleとしては今後もAppleTVには力を入れていくもよう。Appleのナンバー2のTim Cook氏が米サンフランシスコで開催されたカンファレンスに登壇し、Appleの戦略について次のように語っている。

“Apple TV is still a hobby. The reality is that Apple TV is in a market that is very small today….But we’re going to continue to invest in it because our gut tells us there’s something there….We have no interest in the TV market.”

Apple TVは今のところは趣味みたいなものさ。本当のところAppleTVの市場って今はそんなに大きくない。でも第六感っていうのか、何か非常に大きな可能性を感じるんだ。だからこれからもApple TVに対しては投資を続けて行くつもり。でもテレビを作るつもりはない。

 ここで「テレビを作るつもりはない」と明言しているが、Appleが明言するときは、本当にその通りなのか、それともまったくその逆で、開発段階に入ったのでわざと反対のことを言っているのかどちらか。「モバイルでビデオを見るニーズなどない」とスティーブ・ジョブズ氏が明言したあとでビデオ機能搭載のiPodが発売されたし、「電子書籍には興味がない」と明言したあとでiPadにiBooksが搭載されるという発表があった。なのでiPhoneやiPadで操作できるようなテレビ開発を視野に入れている可能性は十分にある。

 Appleが目指すメディア消費の最終形は、コンテンツをAppleのデータセンターですべて管理し、ユーザーが必要なときにだけ携帯電話やテレビなどといったユーザー側の機械に送るというもの。こうすれば一度購入したものを、好きな時に好きな場所で好きな機械を通じて視聴することができる。著作権侵害の問題もない。

 これを実現するためにAppleは大規模データセンターを米ノースキャロライナ州に建設中だといわれる。(関連記事:Appleのクラウド戦略の拠点を空撮

 好きなコンテンツを好きなときに好きなデバイスで視聴するという究極のメディア消費の形を実現するための技術的なハードルは、すべてクリアされたといわれる。あとはコンテンツの著作権者をどう説得するかだけ。コンテンツ著作権者は自らメディア新世紀へとはなかなか移行しないものだ。(関連記事:iPad発売に向けたコンテンツ提供者との交渉難航=今回はAppleの神通力も通じない?【湯川】)コンテンツ著作権者をメディア新世紀に引き連れることができるのはAppleだけかもしれない。逆に言えば、Appleがこれに成功すれば、AV家電業界やテレビ業界が激変する可能性があるわけだ。

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