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米大手コミュニティサイトFacebookのアクティブユーザーが5億人を突破した(英語の発表文)。破竹の快進撃を続ける同社だが、日本ではまだ馴染みが薄い。いったいどんな会社なんだろう。
一言で言えば、Google全盛の今のインターネットを、次の時代へと導く会社である。
6月8日に出版されたThe Facebook Effect: The Inside Story of the Company That Is Connecting the World
Googleは「世界中の情報を整理する」ことをミッションに掲げている。ネット上の情報を整理するために、クローラーと呼ばれるプログラムがネット上を自動巡回し、情報の索引化を継続して行っている。街中の情報を整理するためにストリートビューカーと呼ばれるパノラマカメラを搭載したトラックが街中を走りまわってあらゆる角度からの写真を集めて回っている。ちから技で、情報を収集しているわけだ。
ある日本のソーシャルメディア関係者は、これを「北風」戦略と呼ぶ。イソップ物語の「北風と太陽」の北風のように、情報を無理やり集めようとしているというわけだ。そんなことをしなくても、ソーシャルメディアという友人に囲まれた暖かい環境を作れば、ユーザーは自ら情報を発信する。この「太陽」戦略の下、ユーザーが発信する情報量は「北風」戦略で得る情報量をいずれ上回る、とこの関係者は主張する。
Google vs Facebook
GoogleとFacebookはどちらが影響力を持つようになるのか。調査会社Competeによると2010年1月の時点で平均的な米国ユーザーはネット滞在時間のうち、11.6%の時間をFacebookで、4.1%をGoogleで過ごしている。Facebook滞在時間中にFacebook内で発信される情報は膨大で、地球の全ブログが発信する10倍の文章量の書き込みがFacebook内で行われているという試算もある。この膨大な量の文章が、Googleの手の届かないところにある。Googleの自動巡回プログラムが索引化できない情報、つまり検索できない情報であるわけだ。
しかもその情報は、リアルタイム性が高く、ユーザーの嗜好が明確に表示されたパーソナルな情報が多い。ユーザーが今、この時点で何に興味があるのか、という生の情報である。このリアルタイム性に飛んだパーソナルな情報を、検索プロセスに応用すれば、ユーザー一人一人のそのときの情報ニーズに合った検索結果を表示できるようになる。
Googleは自分たちで、Facebook並みの情報を集めようとしているが、いずれFacebookに頼んでFacebookのデータを検索プロセスに取り入れざるを得なくなるだろう。GoogleがFacebookのデータを取り入れなければ、Googleと競合するMicrosoftの検索エンジンのBingがFacebookのデータを取り入れるだけのことだ。力関係でFacebookがGoogleを上回るようになるのは、ほぼ間違いないだろう。
メディア、広告への影響
Googleは検索連動型広告を収入源に世界一のオンラインメディア企業になった。世界一の広告会社になった。
検索連動型広告は、検索キーワードに関連した広告を検索結果のページに表示する広告である。ステレオ購入を検討している人が「ステレオ」というキーワードで検索すれば、検索結果のページに家電メーカーのステレオの広告が表示される。購入意思を持っている人の背中を押す広告なので、効果が高い。
ただ広告には、購入意思を持つ前に、商品名を広め、その商品に興味を持ってもらうという役割もある。検索連動型広告は、そういった役割には向かない。テレビCMなどのマスメディア広告のほうがそういった役割には向いているといわれる。
Facebookは、その商品名を広め、興味を持ってもらうという広告で、マスメディア以上に効果を出せると考えている。最後の一押しの検索連動型広告の市場はGoogleが独占しているが、それ以外の役割の広告の市場はすべて手中に収めることができると考えている。Facebookの最高執行責任者(COO)のSheril Sandberg氏によると、総額6000億ドルといわれる世界の広告市場の20%は既に購買意欲を持っている人に向けられており、残りの80%の奪取戦がこれから激化するという。当然、Facebookはそこを狙っているわけだ。その奪取戦において、Facebookの強みは細かなターゲティング機能である。
デジタルカメラのメーカーが広告を打つ場合、Googleでは「デジタルカメラ」と検索したユーザー向けに広告を打つことになるが、Facebookでは「妻帯者の男性で最近子供が生まれたばかりで、まだ一枚もFacebookの写真アルバムに写真を投稿していないユーザー」限定で広告を打つことができるのである。
Facebook:統計
・登録者数ではなく、実際に積極的に利用しているユーザー数:5億人
・50%のアクティブユーザー、つまり2億5000万人が毎日Facebookを利用
・ユーザーは平均130人とFacebook上で友人関係を結んでいる
・1月に、ユーザーののべ滞在時間は7000億分
・コンテンツは70ヶ国語に翻訳されている
・米国のユーザーは全体の30%。残り70%は米国以外
・30万ユーザーが翻訳に協力した
(出典:Facebook,Press Room)
・2010年2月の時点でアクティブユーザー4憶人(半年でさらに1億人増えたことになる)
・世界のネット人口17億人の20%以上がFacebookユーザー
・ひと月に5%のペースでユーザーが増加している(単純計算すれば2013年には全人類がユーザーに。ありえない話だが)
・米国人の35.3%がアクティブユーザー
・カナダ人の42%がアクティブユーザー
・従業員約1400人、本社カリフォルニア州パロアルト
・創業者Mark Zuckerberg氏。ハーバード大中退。現在26歳。
(出典:The Facebook Effect: The Inside Story of the Company That Is Connecting the World
関係者語録
The Facebook Effect: The Inside Story of the Company That Is Connecting the World
「投資家にとって21世紀の最初の50年の最重要テーマは、グローバル化がどのような形で進むかということ。もしグローバル化が進まなければ人類に未来はない。地域や民族間の紛争が激化する中でグローバル化が進まずに(軍事兵器などの)テクノロジーだけが進歩すれば、人類は滅亡する。なのでグローバル化に向けた最適の投資は何かということになるのだが、Facebookが恐らくその最も純粋な形だと思う」(投資家・Peter Thiel氏)
「Facebookは公益事業のようなもの。人々が自分の世界をより効率よく理解できるようにしたいと思っている」「会社を経営したいわけじゃないんだ」(CEO・Mark Zuckerberg氏)
「ネット上の信頼は、個人を特定できるかどうかにかかっている」(弁護士、元Facebookプライバシー問題担当
、Chris Kelly氏)
「僕らは世界を変える。世界をよりオープンな場所に変えることができると思う」(Mark Zuckerberg氏)
「だれよりもおもしろいことをやっている。すごいことをしていると思う。(会社売却で大金を得ることなど)考えていない」(Mark Zuckerberg氏)
「僕のアパートを見ただろう。お金なんて必要ないんだ。それに(Facebookのように)いいアイデアが再び思い浮かぶとは思えないんだ」(Mark Zuckerberg氏。売却を持ちかけた投資家に質素なアパートを見せたあとで)
「彼は悩んでました。彼は『非常に大きなお金であることは分かっている。周りの多くの人間がこのお金を得ることで人生が変わることも理解できる。でもそれよりも大きな変化を世界に引き起こせる可能性があると思うんだ。このお金を受け取ることが正しいことではないと思うんだ』と話してました」(Randi Zuckerbergさん。Mark Zuckerberg氏の実姉。買収提案を受け悩んでいた際に姉に相談していた)
「時間がかかると思う。よりオープンに情報を共有すれば世の中がよくなるという考え方は、多くの人にとって目新しいものなんだ」「人々が自分の実名を使い、行動の結果に責任を取るようになればより安全で信頼できるインターネットを作れると思う」(Mark Zuckerberg氏)
「ビジネスや社会の変化のペースが早まる中で、より広い人とのつながりを持たなければいずれ失業してしまうだろう。つながりや人間関係のベースになるのは信頼だ。自分の一部しか公開していないのであれば、信頼を得るのは難しいだろう」(デロイト・コンサルティングのJohn Hagel氏。Facebookの実名主義について)
「自分の生活のより多くの部分をネット上で公開し、実際に人々とつながっていく。これはLife3.0だ(新しい生き方という意味)。壁を作ってだれからも攻められないようにしている人には、FacebookやTwitterなどのソーシャルメディアのすばらしさは絶対に理解できないだろう」(Jeff Pulver氏。起業家)
世界的なオンラインインフラに
上の関係者語録を読んでも分かるように、Facebookは、自分たちのサービスが実際に人間関係をよりオープンに広く楽しくさせるツールだと考えている。そしてそのツールが世界中に広まり、人種、民族間の相互理解が深まることで、世界がよりよい場所になると考えている。そのためにはFacebookが世界中に広まらなければならない。世界のオンラインのインフラにならなければならない。
もう既にFacebookは世界の主要地域でナンバーワンのサイトになっている。まだナンバーワンになれていない主要地域が4つ。日本はそのうちの1つだ。なので今後日本での展開に力を入れてくるものとみられている。(関連記事:mixiはFacebookの「気がかりな競合」=The Facebook Effect【湯川】、モバイルこそFacebookの未来=iPhone連携も「時間の問題」【湯川】、最強エンジニアを東京に集結しモバイルから攻める=Facebookの日本戦略【湯川】)
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