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オンラインとオフラインの人間関係が融合し、それをモバイル機器で持ち歩く、というのがメディアの究極の姿であるー。このビジョンを共有する人にとっては、Facebookが独自ケータイ開発に乗り出すことがとても自然な流れに映るのだけど、前回の記事「Facebookがケータイを開発中」に対して疑問を持つ人をTwitter上で多く見かけたので、もう少し説明したい。
まずオンラインとオフラインの人間関係が融合し始めたということに関しては、以前の記事を読んでいただきたい。インターネットの楽しみ方の「陰」と「陽」 : TechWave
Twitterが普及したことによって自分の情報を公開する人が増えてきて、陰で悪口を言うという楽しみ方から、人とつながっていくという楽しみ方を重視する人が増えてきたということだ。
さてその融合し始めた人間関係(ソーシャルグラフ)をモバイルで持ち運ぶという方向に進み始めている。ボタン1つで、FacebookやTwitterの友人をケータイの連絡先に登録でき、そこから友人たちの活動をチェックできるようになりつつある。(関連記事:モバイルこそFacebookの未来=iPhone連携も「時間の問題」【湯川】 : TechWave、Twitterは人間関係そのもの。ソーシャルメディアは社会の基盤になる【湯川】 : TechWave)
これが大きな流れである。
このビジョンはFacebookだけではなく、AppleもGoogleにも見えている。なのでApple、Googleともにソーシャルに力を入れ始めているのだ。(関連記事:アップルがいきなりSNS大手に、iTunes10をソーシャルメディア化 【増田(@maskin)真樹】 : TechWave)
IT業界の大手3社が同じビジョンを共有していれば、当然のことながら衝突することになる。(関連記事:iTunesのSNSでAppleとFacebookの間に不協和音?【ループス岡村直人】 : TechWave)3社間の対立は今後ますます鮮明になるだろう。AppleのiOS、GoogleのAndroidがスマートフォンの2大OSになりつつある中で、FacebookだけがモバイルOSを持っていない状況はFacebookにとって何かと不利。モバイルで何か新しいことをしようとしても、Apple、Googleに協力を仰がなければならない状態になっている。一方でApple、Googleは今後も、Facebookの希望通りにFacebookアプリの機能改良を認めるだろうか。
そんなわけはない。
ソーシャルゲームはFacebookのPCサイト上で大きな収入源になっている。当然Facebookは、モバイルでもソーシャルゲームを展開していきたいと考えていることだろう。ところがAppleも新しいモバイルOSにGameCenterというソーシャルゲームのプラットフォームを標準搭載したばかり。AppleがFacebookのモバイルゲーム進出を全面支援するだろうか。
それでもFacebookに力がないのであれば、Apple、Googleに頭を下げて軍門に下るしかない。しかしFacebookは5億人のユーザーを抱えているネット上の一大勢力である。たった1割のユーザーがFacebookケータイを購入すれば、販売台数は一気に5000万台にも膨れ上がる。一夜にしてiPhone、Androidケータイの対抗馬になりえるのだ。
Facebookがモバイルに真剣になっていることを示す状況証拠は幾らでもある。Facebookは、Googleでsenior product managerとしてAndroid OSの開発に大きく貢献したことで有名なErick Tseng氏を、5月に引き抜いている。アプリを開発するためだけに、競合社のモバイル事業の中心人物を引き抜くだろうか。またTseng氏は7月に、米BusinessInsiderに対して「われわれが本当のソーシャルなモバイルのエクスペリエンスが実現するのは、まだまだずいぶん先の話だ」「多分12カ月から16カ月先の話だ」と語ったという。来年のクリスマス商戦に向けた新商品の可能性を匂わせるような発言だ。
FacebookのiPhoneアプリを開発したことで有名なJoe Hewitt氏はこのところTwitter上でAndroidをこきおろしていたが、「Facebookがケータイ開発」とTechCrunchが報じてまもなく、同氏のブログが突然すべて削除されている。不思議なタイミングだ。(FLASHBACK: Here’s Facebook Mobile Whiz Joe Hewitt Trash-Talking Android)
ケータイを開発するといっても、Facebookが自ら工場を建設、運営する必要はない。Appleも製造はすべて下請けに回しているし、GoogleはAndroidという無料OSを配布することでモバイルの領域での影響力を持とうとしている。FacebookもApple、Googleのように機能を企画するだけで、実際の製造は他社に任せるのだろう。BusinessInsiderは、FacebookのケータイにはAndroidがベースとして使われるのは間違いない、とする関係者の証言を報じている。ハードだけではなく、OSまで他社に任せて、その上のレイヤーの機能を設計するのか。それともAndroidそのものを改良するのだろうか。
Facebookのソーシャルグラフを単なる連絡先アプリのためのデータととらえてはならない。ソーシャルグラフは、ほかのすべてのアプリがその上で動くプラットフォームになっていくのである。Facebookにとって、iOS、Androidと対抗するプラットフォームを作る以外に道はないのだ。